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ペガサスの少女 その11

 翌日、ペガサス族の村で、ペガサス族とボンゴ族の仲直りの為の、宴会が開かれました。

クラーケンが滅びたので、ボンゴ族は西の海に帰還する事になり、ペガサス族と争う必要がなくなったのです。

ペガサス族の村の集会所では、朝からボンゴ族の男たちが持ち寄った食材を、ペガサス族の少女たちが料理して、たくさんのご馳走を作りました。

ボンゴ族の族長ボボンゴは、秘蔵の果実酒を大量に持って来て、みんなを喜ばせました。

そして、いよいよ夕方から、ペガサス族の少女たちによって清められ、綺麗に飾りつけられた集会所で、両部族合同の大宴会が、始まったのでした。

ペガサス族とボンゴ族は、交互に車座になって座り、中央に並ぶ美味しそうな料理の数々を、大きな輪になって囲んでいました。

最初はぎごちなかった両者ですが、乾杯の合図と共に始まった宴会は、時間が進むごとに、段々と盛り上がっていきました。

ペガサス族の明るい性格の少女たちは、積極的にボンゴ族の男たちに話しかけ、基本的に無口なボンゴ族も、まんざらではないようです。

こうして宴会は、和気藹々とした雰囲気で無事に進み、あちこちから楽しそうな笑い声が聞こえ、会話も弾んでいるみたいでした。

先日まで憎み合い争っていたのが、信じられない雰囲気です。

そして、宴もたけなわになった頃、座っていたペガサス族の少女たちの中の数人が立ち上がって、集会所の後方に設けられているスペースに走り寄り、みんなで集まって、ポーズを取りました。


「だっちゅーの!!」


彼女たちは、他のペガサス族の少女とは違って、ヒラヒラとした、どこか、アイドルっぽい格好をしていました。

そう、彼女たちは、ペガサス族が誇るスーパーアイドルユニット、「UMA」だったのです。

今回「UMA」は、ペガサス族とボンゴ族の友好のために、宴会場の空きスペースで、ミニコンサートを開くつもりなのです。

5人の「UMA」のメンバーの真ん中に立つ、リーダーの女の子、通称「ウララちゃん」が、元気に片手を突き上げ、宣言します。


「今日は、ペガサス族とボンゴ族の、末長い友好のために歌います!!みなさん、聴いて下さいっ!!うまぴょん伝説!!」


その言葉を聞くと、宴会場は一斉に、大きな歓声に包まれました。

ペガサス族の少女たちだけではなく、ボンゴ族の男たちも、熱狂して拳を突き上げ、彼女たちに情熱的なエールを送ります。


「UMA!!!」


「UMA!!!」


「UMA!!!」


そして、両部族の応援の声に包まれながら、「UMA」のパフォーマンスが始まります。

彼女たちはウララちゃんを中心に、元気よく跳ね回って踊り、自慢の歌を披露しました。


「うまぴょん♪うまぴょん♪うまぴょんぴょん♪」


彼女たちの明るく澄んだ声が、宴会場に響き渡ります。

それはまさに、平和と友愛の訪れを象徴しているかのように、みんなには感じられました。

さて、このように、両部族が合同で開いた宴会は、たいへん盛り上がっていたのですが、今回の立役者である我らがヒロイン、メデューサ姫は、会場のリア充な雰囲気になんだかついていけず、上座に座ったまま、ひたすら飲み食いしていました。

彼女が、大広間の上座から、宴会場を見回すと、みんな楽しそうにしており、ちょっと前まで敵だったのが、嘘の様でした。

「UMA」のコンサートは続いており、その歌声に合わせて立ち上がり、踊っている者も、たくさんいました。

ペガサス族の少女たちと、ボンゴ族の男たちが肩を組み、「UMA」の曲を聴きながら、ウェーブしている様を見て、メデューサは目を丸くしていました。

争いあっていた相手と、そんなにすぐ、仲良くなれるのでしょうか?

実はこの時代、生存の為の部族間の闘争は、日常茶飯事のことであり、遺恨をいつまでも残すのは得策ではないとの、共通認識があったのでした。

その為、両部族の人々は、個人的な怨みや憎しみは胸の内に収め、未来の為に、共存の道を進もうとしていたのです。

しかし、部外者であり、まだ人生経験も少ないメデューサにとっては、中々、その事は、分かりにくかったのです。

そんなメデューサに、隣に座るボンゴ族の長ボボンゴが、優しい声で話しかけました。


「どうした、メデューサ。元気ない。これ食え」


そう言ってボボンゴは、目の前に置かれた大皿から、串に刺さった肉料理を、メデューサに渡しました。


「ありがと」


串に刺さった料理を受け取って、お礼を言う、メデューサ。

その時、彼女は、ふと、ある事に気づきます。

すぐ隣に座っていたはずのシュナンが、いつの間にか、いなくなっていたのです。

メデューサは、シュナンが座っていた場所を指し示しながら、ボボンゴに尋ねます。


「シュナン、何処へいったの?」


ボボンゴは、首を傾げて言いました。


「さぁ?そういえば、レダもいない。2人で、どっか行ったか?」


メデューサが確認すると、確かに、上座に座っていたはずのレダがいた場所も、空席になっていました。

二人一緒に、いなくなるなんてー。

メデューサの、蛇で覆われた顔が、少し引きつります。

そんなメデューサの心配をよそに、横にいるボボンゴが言いました。


「2人で、しけ込んだか?まぁ、戦いの前後には、よくある」


ボボンゴの、その言葉を聞いたメデューサは、魔眼を隠している蛇の前髪を、揺らめかせると、手に持った肉料理の串に、無言でかじりつきました。


[続く]


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