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ペガサスの少女 その5

 ペガサス族の集会所で催されている、シュナンとメデューサの歓迎会。

そして、少女たちによる賑やかな宴も、たけなわの頃、シュナンの隣で黙々と食事をしていたメデューサが、ペガサス族について、疑問に思っていた事を、口にします。


「なんで、この連中、女の子ばかりなの?」


師匠の杖が、答えます。


「君の、ご先祖のせいだよ。メデューサ」


「どうして?」


メデューサは、首をかしげながら、訊ね返します。

シュナンも、目隠しで覆われた顔を、うつむかせながら、師匠の声に耳を傾けていました。


「何故なら、ペガサス族は、君達メデューサ族が、人工的に作り出した種族だからだ」


「えっ!」


メデューサは驚きます。

シュナンの膝上に置かれた師匠の杖は、更に話し続けました。


「ペガサス族は、メデューサ族の魔法科学によって、人工的に作り出された眷属だ。寿命は人間とほぼ同じだが、女の子しか生まれず、いったん青年期まで成長すると、その外見は死ぬまで変わらない。体力や生殖能力も同じだ。見かけは若い娘だが、ペガサスに変身する事が出来るし、実はそっちが本体なんだ」


シュナンが興味深げに頷き、言いました。


「なるほど、でも、どうやって子孫を増やして、村を維持してるんでしょう?女の子だけなのに」


師匠の杖が答えます。


「おそらく、周囲の村の男や旅人をたまに誘惑して、何とかしてるんだろう。シュナンに対しても、かなり積極的だったしな・・・」


メデューサが、蛇の前髪の下からきつい目で、シュナンの膝に置かれた師匠の杖を、睨みつけます。

そして、言いました。


「まぁ・・・あたしの一族も、あんまり人の事は言えないけど」


蛇で覆われた顔をうつむかせ、そこから覗く口元を、不機嫌そうに歪めるメデューサ。

シュナンは、そんなメデューサを気遣い、何か言おうとしました。

そんな時、彼らの隣にいるレダが、不意にシュナンに、声をかけてきました。


「どう、シュナン?わたし達、ペガサス族の自慢料理は?」


目隠しをした顔を、レダの方に向け、彼女にお礼を言うシュナン。


「ありがとう、レダ。こんな美味しい料理を食べたのは、初めてだ。王都のレストランの高価な料理より、ずっと美味しいよ」


シュナンの言葉を聞いたレダは、嬉しそうに笑うと、シュナン少年に向かって片目をつむり、ウインクをします。


「喜んでくれて嬉しいわ。まだまだ、楽しんでね。ちなみにデザートは、わ・た・し」


その瞬間、メデューサの生きた蛇で出来た髪が、ざわりと逆立ちます。

彼女はもう少しで、蛇の前髪で隠された、魔眼を露わにして、レダを睨みつける所でした。

自分の胸に手を当てて、強く握りしめると、こみ上げる感情を必死に抑える、メデューサ。

そんな彼女の気持ちを知ってか知らずか、上機嫌な様子のレダは、車座になって座り、料理を食べ、お喋りを楽しんでいる仲間たちの方に、目をやります。

そして、パンパンと手を叩きました。

すると、輪になって座っているペガサス族の中から、数人の少女がスクッと立ち上がり、広間の端にあるスペースへ、小走りで移動しました。

スペースに集まった数人の少女たちは、他のペガサス族が、シンプルな黒い革製のビキニを着けているのとは違い、フリルのいっぱい付いた、華やかな衣装を身にまとっていました。

ミニスカートの間から、彼女たちの健康的な、スラリとした美脚が覗きます。

宴会芸を行う為に、広間に設けられたスペースに集結した数人の少女たちは、真ん中に立つ桃色の髪の少女を中心に、綺麗な隊列を組み、ポーズを決めました。

右端にいる、栗毛の髪を頭の片側で結んだ少女が、高らかに宣言します。


「わたしたち、UMAでーす!!」


そう彼女たちは、ペガサス族の中でも、選りすぐりの芸達者なウマ娘たちを集めた、5人組のアイドルグループ、UMA(ウーマ)だったのです。

UMAの少女たちは、真ん中に立つリーダー格である、桃色の髪の美少女、ハル・ウララちゃんを中心に、両肩を引き締める様にすぼめると、その豊満な胸を見せつけるかの如く突き出し、悩殺ポーズを取ります。


「だっちゅーのっ!!」


広間に車座の輪になって座り、端っこのスペースで展開する、UMAのパフォーマンスを見つめる、ペガサス族の少女たちから、一斉に歓声が上がります。


「ウララちゃーん!!!」


「スペちゃーん!!!」


「ティオちゃーん!!!」


そして少女たちから見て、正面の上座に座っているシュナン少年は、師匠の杖を通して見る、UMAのセクシーなポーズに、思わず顔を赤らめました。

シュナンの膝の上に載せられている師匠の杖も、興味があるのか、弟子に向かって頼みます。


「おいこら、シュナン。恥ずかしがらずに、もっと、杖の先端を前に掲げてくれ。よく見えん」


一方、シュナンの隣に座るメデューサは、蛇の髪越しに、UMAの美少女たちを睨みつけ、顔をしかめます。


「死○ばいいのに」


そんなメデューサの、不満げな様子にはおかまいなしに、さらにUMAの少女たちのパフォーマンスは、ヒートアップして行きます。

広間の端に設けられた、演芸用のスペースに居並ぶUMAのメンバーの中で、列の真ん中に立つ、桃色の髪のリーダー格の女の子、ハル・ウララ。

通称、ウララちゃんが、腕を突き上げて叫びます。


「あたし達の、デビュー曲、「うまぴょん音頭」歌います!!」


リーダーの掛け声と共に、他のUMAの少女たちもポーズを取り、調子を合わせて踊りながら、歌い始めます。


うまぴょん


うまぴょん


うまぴょんぴょん♪


うまうま


ぴょんぴょん♪


ぴょん


ぴょぴょーん♪


彼女たちの明るい歌声に、上座に座るシュナンは、思わず、目隠ししをした顔をほころばせます。

シュナンが掲げる師匠の杖も、感心して、声を発しました。


「見事なものだ。なかなかの芸達者だな」


しかし、彼らの隣で座るメデューサは、その上半分を蛇の髪で覆った、顔を引きつらせて、言いました。


「作者の頭が、心配だわ」


[続く]

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