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ペガサスの少女 その3

 白いペガサスに変身した少女たちは、その大きな翼を羽ばたかせ、上空に舞い上がると、茫然と立つ緑色の巨人たちの群れに向かって突っ込み、攻撃を開始します。

その蹄で怪物の顔を蹴りつけ、大きなダメージを与えると、再び天高く舞い上がり、勢いをつけてから落下して、巨人にもう一度、激しく蹴りを食らわせます。

一撃離脱を繰り返す、ペガサスたちの波状攻撃に、緑色の巨人たちは、大混乱に陥りました。

なんとかペガサスを捕らえて、ねじ伏せようとする者もいましたが、ペガサスと化した彼女たちの、スピードとパワーは尋常ではなく、巨人たちは徐々に傷ついていきます。

やがて、戦意を喪失した彼らは潰走を始め、浜辺をバラバラに走って、逃げ出して行きました。

浜辺を逃げ出す巨人の群れと、それを追って飛ぶペガサスの少女たちを、遠目で見ていたメデューサとシュナンは、やがて彼らの姿が視界から消えると、呆気に取られた表情で、互いの顔を見合わせました。

シュナンの持つ、師匠の杖が言いました。


「まさか、ペガサス族が生き残っていたとはな。あの緑色の巨人どもは、恐らく、ティターン族の流れをくむ者達だろう。とにかく、厄介事に巻き込まれては叶わん。先を急ごう」


師匠の杖の言葉にうなずいたシュナンは、メデューサと共に、再び波音響く海沿いの道を、前に進みます。

しかし、歴史のタペストリーを織り成す為に、いったん動き始めた、神の糸車は、目に見えない運命の縦糸と横糸を自在に張り巡らして、シュナンとメデューサの行く手を、搦め捕ろうとしていました。

海辺の道を歩く二人は、しばらくすると前方の空から、空飛ぶ何かが、自分たちの方へ近づいて来るのに気付きます。

それは先程、浜辺で見たのと同じ、ペガサスでした。

全部で三体、それぞれ革製のビキニや肩当て、それにブーツなど、着るもの一式を首に巻きつけて、空を飛んでいます。

三体のペガサスは、シュナンたちの行手を遮る様に、上空から地面に降り立ちました。

そして、地上に降り立った三体のペガサスの身体は、輝く光に包まれて、一瞬で、裸身の三人の乙女に変身していました。

まだ若い、三人の娘です。

彼女たちは、ペガサスだった時に首に巻き付け運んでいた、今は地上に散らばっている自分たちの服を、急いでかき集めて、身につけます。

そして身なりを整えると、改めてシュナンとメデューサの方に進み出て、彼らの前にひざまずきました。

訳がわからず、当惑しながら、そのひざまずく三人の少女を見下ろす、目隠しをしたシュナンと、蛇の髪で顔を隠すメデューサ。

すると、ひざまずく三人の中で真ん中にいる、赤毛のポニーテール少女が顔を上げ、シュナンとメデューサに挨拶をします。

どうやら彼女が、この中のリーダーの様です。

その娘は、他の子と同じく、黒色の革製の煽情的なビキニを身に付け、両肩には肩パッドを装着して、脚にはロングブーツをはいていました。

細長い首と両腕には、宝石の付いた装身具を巻いており、炎の様な真っ赤な長い髪を結って、ポニーテールにしています

彼女はひざまずきながら、シュナンとメデューサを見上げ、にっこり笑って言いました。


「わたしは、ペガサス族の長で、レダと言います。後ろで座っているのは、わたしの補佐役のスペちゃんと、ウララちゃんです」


レダの言葉を受けて、彼女の両隣りで、一歩下がってひざまずいている、二人の少女も、恥ずかしそうにシュナンたちに頭を下げます。

少女たちのリーダーであるレダは、快活な笑みを浮かべて、話を続けます。


「先程は、助けていただき有難うございます。隣のお方は、メデューサ族の末裔ですね。お会いできて、光栄です」


その言葉を聞いた、シュナンとメデューサは、何の事かと首を傾げます。

シュナンが、言いました。


「何の事?君と会うのは、初めてだけど」


すると、ひざまずいていたレダは、赤いポニテを揺らしながらスクッと立ち上がって、左足からブーツを脱ぐと、そのスラリとした脚を、シュナンの方へ突き出しました。


「はっ、何?この痴女?」


思わず毒舌を吐く、メデューサ。

蛇の髪の毛に隠された、彼女の顔の口元が、不満げに歪みます。

しかしシュナンは、彼女の脚を見て、何かに気づいたようです。


「君はあの時の、怪我をしたペガサスー」


その伸ばされた素足には、少し腫れたような部分があり、それはちょっと前にシュナンが治療した、ペガサスの脚の怪我の場所と、同じだったのです。

つまりは先程の、傷つき地面に横たわっていた天馬は、目の前の赤髪の少女が、変身した姿だったのでした。

ペガサスに変身していたレダは、空中から地面に降り立つ際に、誤って足を挫いてしまい、動けなくなっていた所を、偶然通りかかったシュナン少年に助けられたのです。

彼女は自分を助けてくれたシュナンに、どうしても、もう一度会って、お礼が言いたくて、仲間たちと一緒に、再び彼の前に姿を現したのでした。

赤髪の少女レダは、シュナンが自分の正体に気付いた事が、余程、うれしかったのか、脱ぎ捨てたブーツを履き直し、彼の側に近づくと、その腕に両手を絡め言いました。


「本当に、ありがとう。ところで貴方のお名前は?」


「ーっ!」


見知らぬ少女が、その健康的な素肌を、シュナンの腕に押し付けるのを見て、メデューサの蛇の髪が怒りで震えます。

彼女は思わず、密着している二人に近づいて、赤髪の少女レダに喰いつきました。


「ちょっと、いきなり何よっ!シュナンから離れなさい!」


レダの腕を引っ張り、シュナンから引き離そうとするメデューサ。

しかし、赤髪の天馬娘も、負けてはいません。

口を尖らせて、自分を引っ張るメデューサに、言い返します。


「何よっ?もしかしてこの人、メデューサ様の恋人なの?」


レダの言葉に、一瞬、ひるむメデューサ。


「ちっ、違う・・・けど」


レダは、シュナンに腕を絡めたまま、更にメデューサに聞きます。


「じゃあ、どういう関係なの?」


メデューサは、どう答えればいいか分からず、押し黙ってしまいます。


「・・・」


そんなメデューサを見て、レダにしがみつかれ、困惑気味のシュナンが言いました。


「僕たちは、旅の仲間だよ」


その言葉を聞いたメデューサは、蛇の髪に隠された顔をシュナンの方に向けると、コクリとうなずきました。

シュナンの腕を取るレダは、彼の目隠しした横顔と、メデューサの生きた蛇の髪で覆われた顔を、交互に見つめ、何やら、首をかしげます。

その時、シュナンの持つ師匠の杖が、いきなり声を発しました。


「そうー。もちろん、ワシも含めてな」


「杖が、喋った!!」


びっくりして、レダが叫びました。


さて、衝撃の再会?を果たした、シュナン一行とペガサスの少女レダでしたが、シュナン達は彼女の強い勧めで、少女たちの住むペガサス族の村に、暫し、逗留する事になりました。

正直、メデューサやシュナンは、あまり気が進まなかったのですが、野宿が続いていた為、屋根のある寝場所と、暖かい食事が供される事については、かなりの魅力を感じていました。

ペガサスに戻ったレダを初め、空飛ぶ天馬少女たちの先導で、シュナンとメデューサは、海辺近くの深い森の中の小道を、肩を並べて歩きます。

やがて彼らの前に、森の中に隠された、ペガサス族の村が、その姿を現します。

それは、四方を高い木の柵で囲んだ、大きな砦でした。

中には、大小の木造の建物が立ち並んでおり、かなりの人数の住人がいると思われました。

シュナンたちは、ペガサスに変身したレダたちの誘導で、村を囲む柵の入り口まで、たどり着きました。

そして、大きく開かれた柵の入り口付近には、レダたちの仲間と思われる大勢の女の子が、興味津々な様子で、待ち構えていました。


[続く]

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