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「あ…あの…。」


「うふふ、ミカゲさんはなんでシンヤくんに話し掛けてるのかしら?」「あ゙?テメェ、なんでシンヤに話し掛けてやがる?」


「ひぃっ!!」


…このような仲良くなるどころか、まともな会話すらできないという素晴らしい(皮肉)メンバーに囲まれた珍道中。三竦みとでもいいのかな?あんなに嫌われてるんだ。たぶんホノカも見てないところで何か色々とやってるのだろうし…。


…そんな荒むこと前提とでも表現しなければならないであろうそこには、紅一点…いや、好一点とでも言いたいような存在がいた。


金髪ポニーテールのシンヤたちより少し歳上の女騎士様メイア・マテールである。


彼女は若いながら新設された騎士団の副騎士団長という立場にあり、気さくで優しく、時折見せるあどけなさの残る笑顔が結構可愛くて、この道中何度癒されたことか…。


…まあ、そんな彼女にもやはりなんともきな臭い要素があるのだが…。


それは彼女の懐にあった。


「メイアさん、それは?」


「ん?ああ、これか?これはだな…フフン♪」


メイアはそれを取り出すと、まるで自慢するかのようにそれを掲げてきた。


「私の婚約者がくれたのだ♪」


「婚約者?メイアさん、婚約してるんですか?」


シンヤ自身、少しショックを受けていた。


なにせこのパーティーの好一点の外面だけでなく内面も美人さん。精神的な支えである。そんな人物に結婚予定の人物がいるというのは、ほんのちょっぴりだけど残念である。


…なんて、考えてる場合じゃないか、とりあえず…【鑑定】!


すかさず【鑑定】したシンヤだったが、その鑑定結果に対し、驚きの表情を示す。


その鑑定結果は次のようである。



名称 魔を導く短剣


この短剣は呪われており、とある条件により、その呪いが発動するように設定されている。


その条件は以下のごとく。


1 セントレア王国王都の座標


2 勇者パーティーがその側にあること




…ちなみに、その呪いと言うのは、名称の通り魔物を召喚するというもの。


うん、テロかな?



……って、王都で魔物を呼ぶ行為?


それって完全にテロリストじゃねぇか!!


この世界の奴はなんて野郎どもなんだ!!


…って、落ち着け落ち着け。


俺達が向かっているのは、辺境。


うん、きっと大丈夫。だってこんなに田舎だしね。


でも一応…。


「セントレア王国の王都です。シンヤくんたちにはそこで活動して貰います。」


「……王都?」


セントレア王国の皆さん…ホント!すいませんでしたっ!!…田舎とか辺境とか言っちゃって。


きっと立派なところなんですよね?わかります。これからはセントレア王国万歳って、思うので許してくださいね?


そんなふうに思考がどこかに行ってしまったシンヤ。


えっ…だってテロだよ。マジもんの。


それも実行犯として、ドナドナよ。ドナドナ。


そりゃあ、誰だって慌てるでしょ。


そして、シンヤは一呼吸し、メイアへと尋ねた。


「その禍…マジで素敵な短剣って、もしかして頂き物ですか?」


「ん?……ああ…私の婚約者が旅立つ時くれたのだ。昔からあまり仲が良くなかったのだが…まさかこんなサプライズをしてくれるとは…。」


「……。」



その後、シンヤはメイアに短剣を見せてほしいと頼み、それを受け取るなり、立ち上がって、思わずそれを全力で森の中へと投擲した。


「あっ、手が滑ったーーーーっ!!!」


ちなみにこれがこの世界で初めて使った【真なる勇者】の全力。ここから見えなくなるほど遠くへと投げられた、その威力に若干引いていると…。


「なっ…。」


…そうメイアはワナワナと震えていたのだ。


そして、彼女はシンヤの胸ぐらを掴むなり、涙目という罪悪感を煽るスパイスを加えて、彼を振るった。


「ふぇ〜ん!なんてことをするんだ、シンヤ〜!ひどい!ひどいよ〜!あれ初めての贈り物だったんだぞ〜!なくしたなんて知られたら、せっかく仲良くなれそうだったのがダメになっちゃうじゃないか〜!ふぇ〜ん!!」


「落ち着いて、メイアさん…というか、落ち着け!今説明するから!」


「…説明?」


「ああ、とりあえずその手を離せ。」


「ぐすん。なんかシンヤ怒ってるのか?」


「…まあ、ちょっと…。」


それからシンヤは実はレアスキルであら【鑑定】スキルを持っていることをメイアに白状し、先ほど鑑定した内容を彼女に伝えた。


「…な…なんということだ…。それでは私は…。」


「……なんというか、悪いけど、そういうことになる。」


「……。」


「…というか、信じるんだな、メイアさん。」


「……本当のところ、信じたくないという気持ちはあるし。君のことを疑っていないと言えば嘘になる。」


「なら…。」


「…でも、君は怒ってくれたんだろ?私のために。」


「…まあ、そりゃあ…。」


「よくよく思い出してみると、あの時の私は浮かれていて気がつかなかったが、()()()の顔はなんかニヤニヤしてた。その表情と君の真剣な顔を比較すると、どうも…ね…。」


「…メイアさん。」


「……うん。」


咄嗟にシンヤはメイアの手を握る。


「俺はメイアさんの味方だから!…だから!そんなに気を落とさないでくれ!!」


「シンヤ…くん…。」


「それにメイアさんは副騎士団長になるくらい強いんだろ?加えて美人だ。俺だって内心、こんな優しい美人さんと仲良くできて喜んでいたんだ。だからきっと…。」


そう言葉を続けようとしたところで、ふと他の視線を後ろから感じ、振り向くシンヤ。


すると…。


「ずいぶんと楽しそうね、シンヤくん?」


「ホント楽しそうだね、シンヤ?」


「あわわわ。あわわ。」


…えっと…見られてたんです…ね…。



…その時、ミスディレクションオーバーフローしている彼女たちを無視してでも、シンヤは見ておくべきだった。メイアの表情を。


たぶんその時、それを目にしていれば、一発で恋に落ちていただろうから。


それほどにメイアの潤んだ瞳と赤らんだ頬。弱った姿をブレンドしたそれらの破壊力は格別だった。


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