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ルームメイトが卒業の日に丸をつけたカレンダーを紙飛行機にして飛ばしていたので、私は彼女を口説き落とすことにした

作者: 柳瀬あさと

 ベランダから飛ばされた紙飛行機は、上手い事風に乗って寮の敷地外へと飛んで行った。


「あのカレンダー今月の!」

「見たくなかったのよ」


 憂鬱そうに言うルームメイト兼親友のセリーヌが気になって、私もベランダに出て隣に立った。


「何かあった?」

「私、卒業式の後のプロムで婚約破棄されるらしいの」

「は?」

「聖女様との真実の愛を邪魔しているからですって。聖女様本人が嬉しそうに教えてくれたわ」

「あんの性悪クソ売女! 王太子殿下にも粉かけて高位貴族の奴らに足開いてるくせに!」


 聖女リーリア。平民の孤児だが、予言をしては悉く当たるという事で教会が聖女認定し学園の特待生になったという、見かけ上等中身ヘドロの女である。


「はしたなくてよ、特待生。いずれ女男爵となるのでしょう?」

「失礼しました、子爵令嬢様。でもお互い様でしてよ」


 揶揄う様な口調で言って顔を見合わせて笑う。けれど親友はすぐ真顔になった。


「高位貴族に持て囃されたのはいい思い出、結婚は平民から見たら大出世の子爵家子息。()()()よね」


 皆それが高位貴族の子息達が聖女を囲い込む為の隠れ蓑だと知っている。婚約者は喜んでいるらしいが、恐らく手も握らせてもらえないだろうし、聖女は聖女で高級娼婦と同じ道だ。


「ねぇ、婚約者に未練はある?」

「もう情もないわ。ただ家族の為にも破棄ではなく解消にしたいのよね」

「じゃあ、私と末永く楽しく生きない?」

「え?」






 結論を言うと、プロムの前に親友の婚約は無事解消された。


「女男爵にエスコートされるとは……」

「色違いのドレスっていいよね」


 魔道具研究開発の第一人者である私は、早く首輪をつけろと叙爵を急かされていた。それを利用したのだ。


『叙爵します。しかし私は貴族社会は門外漢なのでオルタヌ子爵預かりを希望します。あちらは商会も保有しており魔道具の試作運用にいいかと。それと御令嬢の魔道具の造詣の深さは素晴らしい! 是非助手となってほしいです』


 親友のオルタヌ子爵家は王太子派閥だった事もあり、私の希望は歓迎され、親友は見出された才女として評判があがった。そんな相手に破棄など突きつけられなかったのだ


「色々な方との交渉をお願いしたくてよ、助手のセリーヌ嬢。そこで素敵な出会いがあったなら、私は涙を呑んで送り出すわ」

「あらありがとう。でも私、貴女と末永く楽しく生きるのもいいと思っていてよ」


 揶揄う様な口調で言って顔を見合わせて笑う。多分これからも、ずっと。


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