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08.トイレ子爵令息と呼ばれる屈辱

 時が経ち、十歳の誕生日を迎えた、貴族は十歳になると学園に入るという選択肢が生まれる。

 しかし、残念ながらグンマー王国の表記を…未だに身につけられていない。

 大量の写本をしても、法則性がまるでわからない。

 リリィ先生の言う「丸暗記から始めた方がいい、実際使って間違えたら直せばいい」というやり方が正解だったのだろうか…だけど時は巻き戻せない。

 誕生パーティーが開かれるとき、リリィ先生は「楽しみにしてなさい」と悪戯げに笑っていたが、何だろうな?


「皆さん、セドリックの誕生パーティーによく来てくださいました!皆さんもお気づきでしょうが、我がスワン子爵家では憎き悪臭に極めて有効な手段を手に入れました!これは、全てセドリックの手腕によるものです!」


 父であるスワン子爵が挨拶を述べる、それに続いてリリィ先生が述べる。


「今回の悪臭対策、トイレと呼んでいますが、この論文の功績はアカデミーに認められ、セドリック様は特例としてアカデミー入学資格を得ることとなりました!これに伴い、王家からの授与式が行われます!皆様振るってご参加ください!」


 論文なんて書いた覚えが無いぞ…リリィ先生を見ると、口元が笑っている…リリィ先生の仕業か!


 貴族達から一斉の拍手が上がる。いや、トイレは単純な構成だし、肥だめの功績は俺じゃなく使用人の功績なんだけどな…

 あ、長男アレックスだけはムスッとした顔で形ばかりの拍手をしているな、相変わらずだな。

 あんな態度で、本当に子爵家の跡継ぎとして大丈夫か?

 それに対し、妹アリアは満面の笑みで、顔を紅潮させて拍手してくれている。相変わらず可愛いなぁ…


 学園に入るのも難しいと思っていたのに、まさか一足飛びにアカデミー入学が決まったか…そもそも大丈夫なのかな。


「セドリックお兄様、アカデミー入学おめでとうございます!」

 妹アリアは真っ先に駆け寄り、純粋に喜んでくれているが、文字も書けないで最高学府入学のプレッシャーが酷い、吐きそう。

 トイレと呼ばれる俺が吐くとか、洒落にもならん大惨事だな…と自虐しながら、なんとか吐き気を抑える。


 そして、貴族達が一斉に俺のそばに寄ってくる。

「セドリック様、いえトイレ子爵令息とお呼びした方がよろしいですね!」

「トイレ子爵令息、トイレの設計図などは公開される予定はありますか?」

「トイレ子爵令息、わが娘と是非顔合わせを…」


 そこの貴族ども、誰がトイレ子爵令息だ!

 しかし、ただの子爵令息としては何も反論できず、ただ曖昧な笑みを浮かべながら、無難に対応するしかない。

 いや、マジで貴族達の目はキラキラしていて、侮蔑の色は一切無く敬意のみが感じられるんだよな。


「ふん、上手くやったものだ、精々スワン家の家名に泥を塗らないようにな!」

 長男アレックスは普段幼い言動が目立つが、今回ばかりは全くの同意である…アリアがアレックスを睨んでいるけど、今回ばかりは俺もアレックスに同感である。


「ふふっ、大丈夫ですよ。まだ公にはできませんが、私がセドリックの補佐に入ることになっています」

「ああ、リリィ先生!一生ついていきます!」

 …ってあれ?そもそもリリィ先生の発表でこんなことになったんだよな?マッチポンプじゃねーか!

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