表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/19

07.数学大全と負の数

 兄アレックスに言われたからというのもあるけれど、この世界の数学水準を知るのも悪くないと考え『数学大全』を手に取って開く。

 序盤の内容はほとんど算数、数学大全というからには一通り全てを網羅しているのだろう、この辺は読み飛ばす。

 しかし、読み進めているうちに、違和感が生じる。そう、数学では当然あるべき「負の数」の概念が出てこないのだ。


 読みにくい文章を読み飛ばしながら、数学大全全ての数式を確認する。そして確信する。


「この世界に…負の数の概念が…ない…」


 早速リリィ先生の部屋を訪れる。


「なぁに?今日はアレックスさんが帰ってくる日じゃなかったの?」

「うん、そのアレックスに挑発されて、数学大全に目を通したんだけど…」

「それで、どうしたの?」

「例えば、手持ちに銀貨が五枚あるとする。そこで銀貨八枚を支払ったとしたら、数式としてどうなる?」


 一瞬、リリィ先生の顔に緊張が走ったように感じたけど、それもすぐに霧散する。


「そこでは二つの概念が発生するわね、『手持ち銀貨』が〇枚になり『借金銀貨』が三枚になるのよ」

「その『手持ち銀貨』と『借金銀貨』を統一して扱う手法は?」

「……ないわね。少なくとも、今の所は」

「やはり、そうか」

「それで?それと『数学大全』読破と何の関係があるの?」

「リリィ先生、数学大全は全ての数学を網羅しているとされる名著ですよね」

「そうよ、そんなの子供でも知って…ってセドリックもまだ六歳になったばかりね」

「その、数学大全に記されていない概念を、仮に発表したらどうなりますか?」

「…その顔、既に覚悟を決めているようだけど、止めておきなさい。悪いようにはしないわよ。そもそも学会は保守的な所で…」


 リリィ先生は何かを感じ取ったのだろう、何かを隠しているようにすら感じる。そして自分の行為が危険だとも、やんわり警告してくれている。


「だけど、僕もこれから文官を目指して学園に入らなければならない!だけど、僕は、書き言葉が致命的にできない!」

「落ち着いて…本当に、悪いようには絶対にしないから、ね?まずは焦らず、写本を続けてみましょう」


 リリィ先生の言葉にひとまず頷くが、セドリックの内心では『負の数で勝負』という気持ちが芽生えたのであった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ