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02.リリィ先生の学力認定

 翌日、セドリックは学力認定を受けるために自室から客間に移動した。

 しかし、昨日はゆっくり観察できなかったが、家具なんかは重厚な作りだなぁ、さすが貴族。


 リリィ先生は学園を飛び級で卒業し、学力認定員という王家直属の仕事をしている。

 その歳僅か十三歳、学園卒業だけでもエリートと見做される中、リリィ先生は天才の名を欲しいままにしている才媛だ。


「さて、この学力認定ですが、基本的に解ける問題とは考えられていません。なぜなら五歳での学力認定では、ほとんどの子息令嬢にとっては、問題文を読むことすらままならないのですから。気を張らずに取り組んでくださいね」


 そう言いながら机の上に置かれた問題文の奇怪さ、そして「なぜ日本語が通じるのか」の一端を垣間見た。

 最初の問題はこんな具合だ。


「イkaのKサんモNだiwoトきナSi」


 一応は読める「以下の計算問題を解きなさい」と、一応は読めるんだけどこんな問題文がずらりと並んでいると、違和感のあまり吐き気さえ催してくる。


 解けなくても問題ないというが、アラビア数字で書かれてる計算問題は簡単な算数なので瞬殺した。

 しかしその他、文章が求められる問題をどうするか…自分の知る日本語で書いても正解は得られないだろうし、文字を書ける事自体を不審に思われるかもしれない。


「先生、今の自分にできるのはこれだけです」

「ふむ…計算問題は満点、素晴らしいです。しかし、その他は簡単な問題も解けていない。これはかなり極端な結果ですね…」

「極端…ですか?」

「ええ、あまりにも。多くの優秀とされる生徒は、むしろ文章の問題で点数を稼ぐんですよ?そして、いくら優秀であっても計算問題で満点は、少なくとも私は見たことがありません」


 うわぁ…あの簡単な算数でこの評価か、そういえば掛け算割り算も混じってたな…これはやらかしたか?もう少し間違えるか答えない方がよかったか?


「まあ、その辺は追々学んでいけばいいことです。セドリック・スワン子爵令息、認定試験合格をここに宣言します。おめでとうございます」

「合格なんですか?計算問題しかできてないのに」

「先にも伝えたとおり、ほとんどの子息令嬢は問題文を読むことすらできないのです。合格ラインは五点ですよ、一問で二点の計算問題が十問正答となれば、当然合格です」

「ありがとうございます。ところで、この認定試験とは何を認定するのですか?」

「王家直属の認定員から、家庭教師として教えを受ける力があるかどうかの認定ですよ?そんなことも知らなかったのですか…」


 リリィ先生は呆れながら答えるが、そもそも合格を期待されてもいなかった俺は、家族からさえ何の説明も受けていないのだ。


「では、今後、僕には認定員の先生が家庭教師に付いてくれるというわけですか」

「ええ、具体的には、私リリィ・マルセーネが、これから泊まり込みで家庭教師をします」


 こうして、少し怖そうなリリィ先生が家庭教師になることが、図らずも決定したのであった。

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