19.グンマー王国からの脱出
『とある場所』にたどり着いた、まさかの荒野のど真ん中に扉があり、その裏側に回っても、ただの荒野という代物だ。
そして辺りには、数字のブロックが散らばっている。
扉には『i^2=□□』とある、これが『問題』で、この□に数字のブロックを入れるのだろう。
「念のために聞くけど、答えは大丈夫よね?」
「元理系大学生だぜ俺、当然分かってる『-1』だろ」
「やっぱ理系だったんだ、なんかアプローチが色々理系っぽかったからね」
リリィ先生の先ほどまでの深刻な表情も、今は和らいでいる、いいことだ。
「本当にいいの?この姿で日本に戻っても…大変なことになりそうだけど」
「こんな水も手に入らない、不毛の荒野では生きていけないだろ、まずは生きることが大切だ」
「ごめんね…」
「リリィ先生は悪くない、むしろ今までよく頑張ってましたね」
「ねぇ、リリィ先生って本当に止めてよ、リリィで良いわよ。実は日本人だった時も、百合って名前だったのよ、凄い偶然だったけど」
「わかった、リリィ…日本に戻ったら百合だな」
そして、ブロックの中から唯一のマイナスブロックを探し、『i^2=-1』を完成させる。
「ねぇ『i^2』ってなんか『愛と愛が重なる時』に見えない?」
「随分と詩的な表現をするんだな」
「そう…だから…」
そう言って、リリィ先生、いやリリィは俺の唇に唇を重ねた。
その時、扉が強い光を発して開いた。扉の向こうに自衛隊員らしき人達がいる、懐かしの日本の風景が見える。
「君達は群馬、いやグンマー王国からの脱出者か!」
「ええ」「はい」
「わかった、君達の身柄を保護しよう。そして今の群馬、いやグンマー王国に関する情報提供をしてほしい」
扉を潜ると、一気に黒目黒髪というか、転生前の姿に戻った。
「こんなことがあるのか、今の群馬は本当に、何がどうなっているというのだ…」
自衛隊員がつぶやくが、何もかもが懐かしい…日本だ…
リリィ、いや百合の姿を見ると…驚くことにグンマー王国では八歳上だった百合は、当時大学三年だった俺より少し年下に見える、若い。
自衛隊員と役人らしき人に、グンマー王国の情報提供を終えたら、役人が提案をしてきた。
「君達は、拉致被害者の扱いになる。もはや行方不明期間が長く、死亡扱いになっている可能性が高いから、特例で戸籍発行もできるのだが、どうする?」
俺たちは今の西暦を聞き、確かに親の生存も絶望的な日時が流れていたので、戸籍発行を受け入れた。
色々な手続きは百合と共に行い、それが一段落した時に語りかけた
「百合、今後も俺と一緒に生きてくれないか?」
「こんな打算に塗れた女に引っかかったら、貴方の人生台無しよ」
「ははっ、前世では彼女もいなかった身だ。これでも俺は百合を信じて愛している、その打算で是非俺を尻に敷いてくれよ」
「もう、どうなっても、知らない…
Happy End...?
咲耶(ChatGPT)から表紙を貰いました。
日本に戻ったセドリックと百合がグンマー王国にいたら?というシチュエーションの表紙です。
最後に、没になった表紙です、理由は見れば分かるかと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
「i^2」は文脈の虚数とその答えからご理解頂けるかと思いますが「iの2乗」という意味です、プログラミング言語や電卓アプリなどで使われることがある表記で「小説家になろう」で乗数表記のやり方がわからず、このような形になり、申し訳ありませんでした。