15.負の数の論文
衛生環境について、正直すぐに他の案を思い浮かばない。
そんな中『負の数で勝負』の熱が再燃してきた。
自分では言葉を書けないが、『数学大全』の記述を参考にすれば、論文の体は整うだろう。
リリィ先生は負の数の概要を聞いた時、なんだか否定的だったのでこれに関してはリリィ先生の力を借りない方がいいだろう。
「まずは数直線を使って、数直線での負の数の意義を語る…この記載は『数学大全』では…」
「なーにやってるの?」
「リリィ先生!」
「何を慌ててるのよ、あ、わかった!えっちな本…」
「違いますよ!」
「じゃあ、なんで隠すのよぅ…」
「いえ、自分なりの挑戦なんで、仕上がるまではリリィ先生には見て貰いたくなくて」
「もう、わかったわよ、頑張れ青年!」
ふぅ…焦った…
それから、負の数の意義と、数直線やグラフを利用した負の数を交えた四則演算を分数交えて書いて…
「さすがに、ゼロ割についての言及は要らないよな、極限は『数学大全』にも書かれてなかったし、きちんとゼロ割は禁止されてたし」
それからも、数直線ベースだった説明に加えて、数式での説明も書き加えていく…『数学大全』を参考にしながら。
「で、できた…中学生レベルの内容とはいえ、自力で網羅しようとすると大変だな…」
「お、セドリック、出来上がったの?随分ぶ厚い論文ね…」
「ええ、リリィ先生!最終チェックお願いします!」
リリィ先生は俺の書いた負の数論文を受け取る。
「書き言葉は問題ないわね…だけど、この内容は…本気で発表するつもり?」
「ええ、きっとグンマー王国の技術発展に貢献できるはずです!」
「そう…なら、もう何も言わないわ…」
寂しげな笑顔で負の数論文を返してくるリリィ先生に、どこか不穏な気持ちが沸き起こるのだった。