13.がくせいとしての数学?教授:後編
通分の授業は凄まじい反響を呼んだらしい。他の数学教授達も、こぞって同じ教え方を始めたようだ。
そして、体調を崩した数学教師の体調が復活していないとのことで、再び代理教師として教壇に立つ。
「まだ数学の教授の体調が良くないようなので、今日も代理を務めます、セドリックです!」
学生達は騒めきの声を上げるが、今回はかなり好意的な雰囲気を感じられる。
改めて小テストを行ったところ、通分についてはほぼ問題ない水準になってきた、そして分数の掛け算は案外できてるんだな。
問題は分数の割り算か、これは日本でも苦手な人が結構いるんだよな…大人でも…
「皆さんは分数の足し算、引き算、掛け算は概ね問題が無さそうなので、今日は分数の割り算について教えます!」
「学聖様…分数の割り算は、少なくともアカデミーレベルでも最高峰の難易度ですが…」
学生の一人が恐る恐る声を掛けてくるが「心配ない!」と声を掛けて、授業を始める。
「まず、12÷6=2、12÷4=3、12÷3=4、12÷2=6、12÷1=12となる、これは皆も理解しているだろう」
数式を書いてから、横軸に割る数、縦軸に答えの数字を書いたグラフを描く。
「このグラフから類推できることは、12÷1/2 すなわち 12÷0.5 は少なくとも12を超えることは明らかだな?」
グラフの曲線を12から上に向かって伸ばす。
「割り算とは、実は分数そのものだ、すなわち、12÷1/2 は 12/(1/2) となる、これを分子分母に2を掛ければ分母は1に、分子は24になる、これが答えだ」
教室の騒めきが凄い事になる。
「ま、待ってください…今、1/2で割るって、どういうことなんですか…?」
「ふむ。たとえば『0.5メートルの紐を12メートル分』欲しいとき、何本必要になる?」
「24本…あっ!!」
「それが、12÷1/2 = 24 という意味だ」
教室、静まり返る。
「同様に 12÷1/3 は 12/(1/3) となり、分子分母に3を掛ければ分母は1となり、分子は36になる、これが答えだ。これを一般化するなら、大分数の分母を1になるように計算すれば分母は整数として扱えるようになる、この大分数の分母の値を、分母分子に掛ければ良いことになる。結果的に割り算の割る数が分数の場合には、分子と分母を逆転させて掛け算にすればいいことになる理屈はわかっただろう」
こうして、分数の計算例を細かく次々と黒板に書くが、再び起った騒めきは止まらない。
逆数とかいう概念は説明に使わない、俺自身も自信がない事は使わないに限る。
学生達はスタンディングオベーションだ、拍手喝采だ。
「すげぇ、アカデミー最高峰と呼ばれる分数の割り算がこれほど分かりやすく説明されるとは…」
「学聖を賜ったのは伊達じゃない!」
「これで、俺も胸を張ってアカデミー最高峰と言える!」
「馬鹿野郎!これからは、これが当たり前の授業になるんだから、お前に優位性などねぇよ!」
「それでも…だとしても、この授業は感動的でした…」
分数の割り算について、可能な限り嘘が無いよう「自分が教えるなら」と考えて頑張りましたが、図示が小説内に入ってないのは不親切だったかもしれませんね。