12.がくせいとしての数学?教授:前編
「えー、数学の教授が体調を崩したので、その代理を務めます、セドリックです!よろしく!」
教壇に立ち、まずは学生達の心を掴もうと元気よく話す。
「あれが、噂のトイレ学聖」
「うちの屋敷もトイレ導入したんだよ、効果が凄いの…」
えーい、トイレトイレうるさい…
「代理ですが引き継ぎができなかったので、まず皆さんの学力を把握するため簡単なテストを行います!」
アカデミーと数学大全のレベル感からすると、自然数の掛け算割り算、分数の四則演算辺りでよかろうと問題を黒板に書く。
学生達の様子から、そろそろいいかなと思う時点で答案を回収するが…
「これは酷い、早くなんとかしないと」
自然数の掛け算割り算は概ね解けてるんだけど、分数の足し算がもう駄目だ、通分ができてる学生が三十人中一人か…
「えー、答案を見る限り、分数の計算が皆さん苦手なようですね。今日は分数の足し算について教えます!」
学生達はざわめくが、その理由はわからない。
まずは黒板に円を二つ書き、片方をおよそ三等分、もう片方を四等分する。
等分した円のうち、右上の一つの等分された領域をそれぞれ塗りつぶし「1/3 + 1/4 =」と記す。
「この 1/3 + 1/4 を図示するとこうなります。皆さんの答案の中にはこれに対し 2/7 と答えてる方が大多数でしたが、違和感がありませんか?」
ここで「2/7」と書き、円を描いて歪ながら七等分し、右上二つの領域を塗りつぶす。
そして、大きくその円にバツをつける。
「図示したら、明らかにおかしいことがわかったと思います」
誤答したのがほとんどの学生だけに、騒然とした声が大きくなる。
「分数の足し算、そして引き算では通分という分母を合わせる行為が必要です。通分を図示するとこうです!」
三分割した円、四分割した円の両方に線を書き加え、両方を十二分割する。
そして「1/3 + 1/4 =」に「4/12 + 3/12 =」と追記する。
「通分とは、こうして大きさの単位が異なるものを統一することです!図の中の塗りつぶされた領域からも分かるとおり、同じ量を示しています!」
黒板に「1/3 + 1/4 = 4/12 + 3/12 = 7/12」の式が出来上がる。
「ゆえに、答えは7/12となります、通分の必要性はわかりましたか?引き算も足し算と同様に通分すればいいですね!」
学生達は衝撃を受けたのか、今までの騒然とした声すら消え失せた。
「…ここまで、分かりやすい分数の計算の説明をされたのは初めてだ…」
「なんか、もう分数の計算が怖くない…」
「今までの通分についての教えは何だったんだ…?」
そんな一部の学生のつぶやきが教室に響く中、俺は無事数学教師の代理をこなせたと大満足で研究室に戻るのであった。