01.異世界転生したかもしれない
初投稿、処女作になります。
エピソード当たりの文字数は少ないため、物足りなさを感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、ご容赦ください。サクッと読んで頂ければ幸いです。
目が覚めた…ただ、何か強い違和感がある。
俺の名は…セドリック、そうだよな俺はセドリック。なんか別の名前だった気もするのだが。
そして、いつものようにスマホを手に取ろうとして…ってスマホって何だっけ?
起き上がると、いつもの自室とは違う少し豪華な部屋…って、いやこの部屋こそ俺の部屋だぞ。
『トントントン』というノックの音に応えると、ドレス姿の可愛らしい少女が入ってきた。
「お兄ちゃんおはよう、顔色悪いけど、どうかしたの?」
お兄ちゃん?俺にいたのは弟一人…いや、この少女は妹のアリアだぞ、弟なんていないだろう?今日の俺は何なんだ?本当に何かおかしい。
「いや、どうもしないよアリア…ところで今日は何日だ?」
「そんなの忘れるわけないじゃん!今日はお兄ちゃんの五歳の誕生日!」
そうか…身体の違和感は、身体が小さくなったせいか…って、それでは俺がかつて身体が大きかったかのような…
「いや、すまん、今起きるよ」
しかし、ベッドから立ち上がろうとしたが、俺の部屋は布団じゃなかったか?っていうか布団ってなんだったか?そして、身体のバランスがうまく取れずベッドに座り込んでしまう。
「やっぱ、なんか今日のお兄ちゃんおかしいよ?あ、誕生日プレゼント!」
アリアが渡してきたのはバースデーカード、俺らしき絵が描かれている。ただ文面はなんだか変な表記だ。
「ありがとう、アリア!」
「あ、ちょっとごめんね」
妹が、部屋の片隅にある、まるで猫のトイレのような場所で座り込んで…砂にじんわり色が付いていく。
なんだコレ…トイレ?こんな劣悪なトイレ、史実でもなかったはず…いや、今まで俺も使っていたんだよな?
「え…アリア…」
アリアの姿を見ていて、自分の中にあった違和感は頂点に至り、今までモヤがかかったような違和感の正体だった過去の記憶が次々と鮮明になってくる。
異世界転生…ラノベみたいな状況に陥ったと考えれば、目の前の状況と記憶は、異世界転生の描写とほとんど同一としか言いようがない。
ここは異世界であり、自分は現代日本から転生したのだ、状況証拠は十分である。
信じがたいが、もはや否定する余地がない。そのショックのあまり意識を手放した。
意識を取り戻すと夜だった。
「もう、セドリック心配したのよ。せっかくの誕生日に倒れるだなんて…あ、私からの誕生日プレゼント」
そう声を掛けてきたのは、母フロイラインだ。そう、母。凄く若いな。
誕生日プレゼントとして手渡されたのは、奇怪な表記だけど『マナー教本』と書かれているようだ。
一度気を失った事で、前世と今世と思われる記憶がある程度整理された。
ここはグンマー王国、そしてうちはスワン子爵家。
俺はセドリック・スワン、子爵家次男なので、いずれ自分で生計を立てなければならない身だ。
おそらく婿入りの話など、期待できないからなあ。
大丈夫、もう記憶は混乱していない。
今日は貴族の義務、学力認定の日だった。学力認定員のリリィ先生を結果的にすっぽかしてしまった。
「リリィ先生は大丈夫?」
「大丈夫かなんて、セドリックの話でしょ…先生はもうお休みになられたわ」
「わかったよ、僕もまだ万全じゃないし、明日改めて」
「そうなさい」
…そういえば、言葉は普通に日本語が通じるぞ。ここ、異世界だよな?