⑨ サテュロスのティケ
2階層は緑豊かな山麓の景色が広がっていた、川のせせらぎ、小鳥のさえずり、小道がうねり、山へと誘う。
鬼達は山への一本道を1列になって進んでいた。しばらく進み山道になる頃に事は起きる。
「シュッ!」ハイレンの足元に弓が放たれ、先頭のハイレンが急に止まると、最後尾のダンテまで全員がぶつかった。
「招かれざる客よ!即刻帰られよ、これより先はそなたらの居場所はない!」
また弓を構えながら彼は言う。
下半身は艶やかなな茶色い毛並みの馬、上半身は筋肉質な男の体、顔は豊かな髭を持つ美男子であった。
ムスペル「誇り高き山の民よ、船乗りの酒はいかがかな?
私達は遥か東からマントスを封印にやってきた。
よければ話を聞かせてもらえんか?」
「我が名はティケ!サテュロス族の長である!上等な酒があるなら話さんでもない、
さあ我に着いてこい!」
ティケは振り返り山道を登っていく、鬼達
は着いていく。
ムスペル「サテュロス族は気難しいが酒と女にめっぽう弱い、特に島外の物には目がないんじゃ」小さい声でコハクに耳打ちした。
サテュロスの村は円状の作りで周りを高い壁で囲い、見張り台もあった。
ティケ「最近はマントスも我らの弓が面倒なのか、村には来なくなった。しかし他の階層に比べると水も食料も豊富なので油断はできぬ」
歩みを止めることなく言葉をつなぐ
「しかし見張りもいる事なので、今日の所は羽を休めて飲みかわそうぞ!」
見張り番の鐘の音が鳴り響くのはその日の夜遅くの事だった。