第一話 中
そこには、「おう、俊輔 また居眠りか?」と笑ってない笑顔を見せながら、俺を叩き起こす川村Uが立っていた。
この川村Uという男は、1年生の時から一緒のクラスメイトという訳ではなく、1年前、この神村市に引っ越して来たのだ。その理由は、Uの父親が、某大手ショッピングモールの社長で、神村市に今までに無いショッピングモールを作ろうという企画を進めるためだという。俺の親父もこのショッピングモール建設に携わっていて(平社員だが)その親父からは、社長の一人息子に迷惑をかけないよう、うまく友達になれと言われていた。昇進のためかと少し呆れるが、月のお小遣いUPを約束してしまったため、やらざるを得ない。
「なんだぁUかぁ びっくりしたぁ」俺はぶつけてはいけないイライラを噛み殺し、対応する。とびきりの作り笑顔で。 Uが俺の机をトン トトン と叩いた。つれションの合図だ。声に出して言えば良いものを、何故かモールス信号で伝える変な癖がUにはあった。周りをキョロキョロ見ているUにOKの合図を送り、席を立ち、足早にUと便所に向かった。便所はいつも体育館近くのを使っていた。そこは、ある事件が起きて以来、誰も近寄らなくなった事故便所であり(当然だれも掃除していないので凄く汚い)、今も使っているのは、俺(汚いので一度もしたことがない)とUだけだった。俺はいつものように、チャックを下ろし、しているふりをした。