第一話
おい!起きろ! ゴツンと頭を小突かれ、その衝撃で目を覚ました俺は、定まらない視点で周りを見渡した。「お前なぁ 授業中の居眠りは将来に響いてくると何回言えば分かるんだ!」ため息と呆れが混ざった声でそう言ったのは、担任 宇南大輔だった。俺はこれ以上宇南を騒がせたくなかったので、すいません、気を付けますとだけ言い、宇南のネチネチとした小言を聞き流し、その場をやり過ごした。 俺が最近、居眠りをするようになったのは、1年前から毎日見続けている、ある"悪夢"が原因だった。 夢の内容は、裸の男が遠くを歩いている、というものだった。最初の頃は、見えるか見えないかギリギリの距離だったが、日に日にそいつが近づいて来ていることに気付き、最近になってそいつは、裸の男であることが判明した。その得体の知れない気味悪さと、追いつかれることへの恐怖から、毎日うなされるようになってしまった。
長い授業が終わり、約5分間の短い休み時間が始まったので、また眠ろうとしていた所、最前列の席から、づかづかとこちらに向かってくる足音が聞こえてきた。 足音が自分の座っている席の隣で止んだ。かと思えば、ガタガタと机を揺らされる。貴重な睡眠を邪魔されたイライラを込めたガンを飛ばしながら誰なのかを確認した。俺はすぐに睨むのを止めた。