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妖精憑き 外伝  作者: 春香秋灯
凶悪な魔法使い
3/10

人生の墓場的な

 皇帝となると、結婚しないといけない。義務ではない。

「まあ、子作りはしたほうがいいですが、ほら、皇族が生まれるとは限りませんからね。確率を上げたいなら、やはり、血がそれなりの相手にしないと。一番の有力候補は、メリル様ですね」

 筆頭魔法使いハガルが選ぶのは、私が予想した通り、従妹のメリルだ。

 血筋的に、ちょうどいいのだ。メリルは私よりもちょっと皇族の血が薄い。きっと、私とメリルの間に生まれる子は、それなりに濃い皇族となるはずだ。

 しかし、問題がある。

「メリルは、ハイラントを愛してる」

 メリルは物心ついた頃から、私の従兄弟のハイラントが大好きだ。今では、愛していて、結婚したくて、アタックまでしている。

「そうなんですか。では、ハイラント様とメリル様の婚姻を命じてください。皇帝の名で」

「ハイラントは、メリルのこと、好きじゃないんだよな」

 しかし、従兄弟であり悪友であるハイラントに、そんなことは出来ない。ここで、皇帝の名で命じたら、ハイラントが怒りに来る。

「まあ、濃い者同士で結婚したって、確率が高いだけで、絶対ではありませんからね」

「他人事だな、ハガルは」

「私の夢は、筆頭魔法使いになったことで、永遠に叶えられませんから」

 まだ、平凡な夢を抱いてたんだ。

 見習いを名乗っていた頃、ハガルは平凡に結婚して、平凡な家庭を持つことを夢見ていた。どこに行っても、同じことを語っていたのだ。

 てっきり、信用させるための嘘だと思っていたのだが、ハガルは本気で願っていたことが、今更ながらわかった。

「ハイラント様はいいですね。メリル様、美人で、一途じゃないですか。何が不満なんですか」

「ハイラントは、一人に縛られたくないんだ。しかし、メリルは、ハイラントの浮気を許さない」

「私も、縛られたい。いいなー」

 珍しく、平民臭いハガルが表に出てくる。王宮の、皇帝である私と二人の時には、いつも上品なハガルだというのに。本当に、羨ましいんだな、ハイラントのことが。

「と、個人的な話はここまでにしましょう。ここからは、皇族としての役割です。やはり、表向きにも、アイオーン様が独り身なのは、示しがつきません。メリル様はハイラント様を追いかけて、浮気してもらってもいいので、表向きの皇妃にしましょう」

「おいおい、メリルがそれを受け入れるはずがないだろう!!」

「宰相と話し合ってみてください。私の意見はそれだけです。皇族は、政略結婚をする必要がない代わりに、血筋が重要です。その血筋によって、今の恩恵が受けられます。皆さん、私よりも年上で、子どもみたいなこと言わないでください」

「そうか、ハガルって、私よりも年下なんだな」

 言われて今更ながら気づく。ハガルは話し方もそうだが、その雰囲気から、年上と感じてしまうが、実際は、私よりも年下だ。

「アイオーン様は男性ですから、適齢期のようなものはありませんが、メリル様は、もう、適齢期過ぎていますよね。そういうこと、もうそろそろ、自覚していただきたい」

「それ、女性に言っちゃいけない事だよ」

「子を産まないといけないんです。言います」

 メリルから、とんでもない命令を下されないといいけど。

 筆頭魔法使いにとっては、皇族が大事だ。皇族の血筋をうまく繋げないと、背中にある契約紋で筆頭魔法使いを従えられなくなる。だから、皇族も頑張って、それなりの血筋を残す義務がある。

 いつまでも、メリルは子どもみたいなことを言わせてはいけないのだ。

 私は仕方なく、宰相と話し合ったが、ハガルと同じことを言われた。まさか、口裏あわせか? なんて聞いてみたら、そうではなかった。ちょっと考えれば、ハガルと同じ意見となる、と逆に叱られてしまった。宰相は、帝国のために動く優秀な男だ。筆頭魔法使いだからといって、ハガルに脅されて従うわけがないのだ。

 そうして、仕方なく、私はメリルと話し合うこととなった。


 執務室にメリルを呼ぶ。私とメリルが二人きりだと、メリルが怒るだろうから、ハガルについてもらった。ただし、ハガルには口出しさせないように、命じた。

 メリルは、警戒しながらやってきた。ハガルが部屋にいるので、メリルはイヤそうな顔をする。それなのに、ハガルは穏やかに笑顔を返し、会釈した。

「忙しいところ、悪いな、呼び出して」

「いいけど、何か御用ですか?」

 一応、私が皇帝となったので、メリルは口調をきちんとする。私を上にして、馴れ馴れしい態度をとらないようにしてくれた。

「実は、私の婚姻の話なんだ。宰相からは、ぜひ、メリルを皇妃に、と言われた」

「宰相からですか? そこの筆頭魔法使いからではないのですか?」

「………ハガルも同じ意見だ」

「宰相も言っているのですか?」

「ああ」

 疑うように私を見るメリル。こういう時は下手に嘘をつかないほうがいい。私は真実だけを上手に伝える。余計なことは言わない。

「ハイラントも、結婚するのですか?」

「そういう話は出てない。まずは、私だ。皇妃がいないのは、体面が悪い」

「私でないといけないのですか? 血筋的であれば、他にもいるではないですか」

「メリル、自覚しているか? メリルはもう、年齢的にも、婚期が遅すぎる」

「私は、ハイラントと結婚がしたいんです」

「ハイラントは、一人の女に縛られるのを嫌う。お前は、側室を許せるのか?」

「………」

 嘘でも、許せるなんて、メリルは言えない。悔しそうに口を閉ざす。

「皇族である以上、独身でいるのは許されない。今の恩恵は、皇族であるお陰で受けている。皇族でなくなった末路を知らないわけではないだろう」

 先帝ラインハルトが筆頭魔法使いに不信を抱く元皇族を平民に落とした。これまで、皇族としての恩恵を受けていた元皇族たちに、平民としての生活など出来るはずがない。あっという間に騙されたりして、目も当てられない最後となったのだ。その追跡調査も、ラインハルトが行い、残った皇族たちに報告したのだ。

 皇族としての役割を放棄するということは、その末路になってもいいのか? と遠まわしに脅す。

「そこの、筆頭魔法使いが強硬しているんじゃないの!?」

「ハガルはそんなことしない。メリルには、表向きの皇妃としての役割をさせて、裏でハイランドと浮気すればいい、なんて言ってるぐらいだ」

「は? 頭、おかしいんじゃないの!?」

 メリルは怒りを爆発させた。彼女は平凡で、努力の人だ。ハガルの斜め上な提案を受け入れられない。

「表向きの皇妃なら、私ではなくてもいいじゃない!!」

「君は、成績もいいし、皇族としての仕事もこなしている。血筋だって申し分ない。君ほど皇妃に向いている皇族はいないんだ」

「そこの、筆頭魔法使い、黙っていないで、言いなさいよ」

「………」

「話せといっているのよ!」

「………」

 無言を貫くハガル。それはそうだ。私が話すな、と命じたのだ。私の命令が優先される。

 ハガルを見れば、ただ、穏やかに笑っているだけだ。もともと、口を挟むつもりはなかったのだろう。大人しく、命令に従っているというより、話したくないだけだ。

「ハガル、話していい」

 思惑にはまってしまったような感じなので、私は命令を解除した。

「私は黙っていたかったのに、酷いですね、アイオーン様」

「メリルが話してほしいそうだ。ほら、好きに話せ」

「特にお話することはありません。ハイラント様とご結婚したいのなら、すればいいではないですか。何故、しないのですか」

「ハイラントは、私とはしたくないって」

「どうしてですか?」

「………女一人に縛られたくないって」

「だったら、メリル様が許してあげればいいではないですか。あなたの祖父であるラインハルト様の奥方は、側室もハーレムも許しましたよ」

「皇帝の妻と、一皇族の妻は違うわ」

「ラインハルト様は、奥方の不貞も許しました」

「………え? 嘘」

 私も知らない話だ。

「ラインハルト様の奥方は、元は別の恋人がいました。しかし、皇族である以上、婚姻は思い通りには出来ません。仕方がなく、ラインハルト様と結婚しましたが、奥方の子の中には、ラインハルト様の血をひかない子が混ざっています。その結果、皇族でない子や孫が誕生しました」

「それじゃあ、まさか」

 平民となった元皇族は、先帝ラインハルトの子ではない、孫ではない元皇族なのだ。

「ハイラント様は、血筋的には立派な皇族です。別に、アイオーン様の子でなくても、ハイラント様の子であれば、問題なく、皇族となるでしょう。

 ハイラント様は、一人の女には縛られたくないのでしょう。そういう方は、人の物になると、執着するものですよ」

 あの、人畜無害な顔がなくなり、どこか、蠱惑的な表情を見せるハガル。メリルは、平凡でないハガルの姿を垣間見て、囁くように誘導される言葉を頭に響かされた。


 しばらくして、メリルは私との婚姻を了承した。


「お前も物好きだな、アイオーン」

 メリルとの婚姻が正式発表となってすぐ、ハイラントが私の元を訪れた。約束もなく来ても、私は特に気にしない。皇帝としての仕事なんて、大したことがないし、暇なんだ。

「仕方がない。血筋的にも能力的にも、年齢的にも、メリルが丁度いい。さてさて、初夜はどうなるかな?」

「詰まらんこというな。初めては面倒臭い、と言ってたじゃないか」

「だが、メリルは綺麗だ」

 客観的に見れば、メリルは魅力的な女だ。顔立ちも、体つきも、男にとっては上物だ。

「ハガルはどう思う?」

 せっかくなので、傍にいるハガルに話を振る。

「俺? 俺は、可愛い奥さんがいいなー」

 ハイラントがいるので、あの、平民口調でハガルは答える。

「そう言って、逃げられてばっかりじゃん」

「仕方がない。理想と現実は違う。俺の理想って、平凡なのに、叶わないって悲しい。あんなに、一杯、お金落としたってのに、皆、もう他の男の物なんだよ」

「可哀想だな、ハガル」

「ハイラント様はいいなー。あんな綺麗で体もいい感じのメリル様に惚れられて。まあ、俺には上物すぎるけど、メリル様、いい女じゃないですか。ダメなんですか?」

「俺は、一人の女に縛られたくない」

「ということは、ハイラント様は、他に女が複数いるんですか? いいなー、そんなにいるなんて、羨ましい。俺なんか、一人選んでも捨てられる。顔かな、やっぱり」

 アランは私の前では絶対にしない、ソファにどっかりと座る。その向かいに、ハイラントも座る。

「で、どうなの? ハーレムは作れそう?」

「お前な、一皇族が、そんなこと出来るわけないだろう」

「アイオーン様にお願いすればいいじゃん。アイオーン様はハーレム興味なくても、ハイラント様のお願いはきいてくれるよ。ねえ」

「そうだな」

 仕方がないので、私はハガルの話に乗る。ついでに、ハガルの隣りに座った。

 ハイラントの向かいには、私とハガルがいる。ハイラントは、戸惑っている。ハガルは時々、蠱惑的な一面を垣間見せる。見えたのだろう。

「亡くなった賢者テラスが言ってたよ。ラインハルト様のハーレムは物凄い美女揃いだったって。仕事の話でちょくちょく、ハーレムに呼ばれたんだって。俺も呼ばれてみたいなー。ハーレムなんて、そうそう、お目にかかることが出来ないからなー」

「そうなんだ。へー」

「アイオーン様、友達のお願い、叶えてあげましょうよ」

「戦争もなくなったし、予算がとりやすいな」

 現実問題、出来ないことはないのだ。大魔法使いアラリーラのお陰で、敵国領地は、禁則地とはなってしまったが、もう、戦争を仕掛けられることはない。何せ、敵は、その領地に足を踏み入れることが出来なくなったのだ。強大な妖精の力で拒絶され、敵の武力も全て封じられ、海からの侵入することすら出来なくなったという。

 ハガルは、定期的に元敵国領地を見てまわっては、確認している。元敵国領地は、戦争が終わって、随分と経っているが、人っこ一人いない廃墟となっているという。

 戦争にはそれなりに金がかかる。万が一、ということで、先帝の時代では、戦争のための予算は組まれていたが、次年度への繰越が続き、膨大な金額となっていた。その予算を別のものに使えばいいのだが、何故か、ハガルはそれを許さなかったのだ。

 先帝はもう亡くなっていない。ハガルも、戦争の予算を解体することをもうそろそろ許してくれるだろう。

「私名義となるが、ハイラントが好きに使えばいいだろう、ハーレム。私はメリルを妻に迎え、皇族としての役割をこなすさ」

「………ちょっと、アイオーンと話したい。ハガル、席を外せ」

 珍しく、ハイラントがハガルに命じる。ハガルは、首を傾げるも、命じられたので、部屋を出ていく。

「急にどうした。ハガルに話したって、外には漏れない」

「アイオーン、すまん!」

「どうした。何かやらかしたのか? 仕方がないな、言ってみろ。私がどうにかしてやる」

 ハイラントは失敗すれば、私にこっそり泣きついてきた。ハイラントは、私の能力を知っていたが、黙っている代わりに、時々、頼ってきた。

 とんでもない犯罪でなければ、助けてやった。ハイラントとは、悪友であり、友達である。バカなことをやる時は、ハイラントがいつも一緒だ。

 ハイラントは、何か大変なことをしてしまったのか、汗を流して黙り込む。顔も真っ青だ。私はハイラントが言い出すのを待つしかない。

 しばらく、私はそこら辺を眺めていた。ハイラントがなかなか言い出さないので、私が立ち上がると、ハイラントが私の腕を掴んできた。

「すまん! つい勢いで、メリルとしてしまった!!」

「えー、いつ?」

「お前とメリルの婚姻が発表されてすぐだ」

「手を出すなら、そういうことが正式発表される前にしてくれ。それで、お前はメリルと結婚するのか?」

「どうすればいい?」

「いいか、私たちは子どもじゃない。筆頭魔法使いハガルよりもうんと年上だ。年下のハガルでさえ、物事をきちんと踏んで行動している。ハイラント、考えろ」

「わからない!」

 皇帝の妻となる女に手を出したのだ。いくら皇族といえども、ただでは済まない。

 皇帝ラインハルトの時はどうだったのか、私はハガルに聞いた。ハガルが生まれるよりも前の話だったが、ハガルは直接、ラインハルトから話されていた。

 ラインハルト婚姻時、皇妃は恋人とは手を繋ぐ程度だったという。初夜は見事こなして、その後、皇妃は隠れて恋人と浮気をしていたという。ラインハルトは、それでも黙って見逃していた。表向きの皇妃が必要だっただけだからだ。ハーレムもあったので、ラインハルトも好き放題していた。

 結果、皇妃から生まれた子は全て、ラインハルトの子ではなかった。何故って、ラインハルトは初夜だけ皇妃に手をつけ、それ以降、一切、関係を持っていない。

 この事を聞いて、私は今更ながら、ラインハルトが子にも孫にもこれっぽっちも愛情を示さなかった理由を知ってしまった。そりゃ、血を分けた子でも孫でもないのだ。愛情なんか向けるはずがない。

 先帝と同じようなことが、私にも起きている。ただ、メリルは初物ではない。そこをどうするか?

「せめて、初夜の後であれば、私も誤魔化してやれたんだがな。ハイラント、メリルとは結婚するつもりがないのなら、そのまま黙れ。血痕程度、どうにでもなる。裏工作はハガルに相談だな」

「話すのか!?」

「ハガルは口が固い。何より、メリルの浮気を勧めたのは、ハガルだ。お前ら、ハガルに踊らされたんだよ」

 ハガルは最初から、ハイラントとメリルが深い関係になることを読んでいた。メリルが私の妻になれば、ハイラントは焦るだろう。これまで、メリルが縋るように追いかけてきたのだから、いつまでもそうだと、安心して遊んでいたのだ。

 メリルもそうだ。わざと先帝と先皇妃の関係を暴露し、浮気のハードルを下げさせたのだ。ついでに、私には一切、触れさせず、ハイラントの子を産むつもりなんだろう。いいけど。

「お前はいいのかよ。女好きだろう!」

「金使って女と遊ぶのが好きなんだよ。今でも、ハガルとこっそりやってる。ハイラントが代わりに務めてくれるなら、俺も皇帝の役割をきちんとこなしたことになる。難しく考えるな。こういうの、好きだろう」

 私もハガルのことは悪く言えないな。ハイラントの良心を壊すようなことを囁く。

「お前もハガルも、おかしいぞ!!」

「皇帝と筆頭魔法使いになる奴は、まともではない。覚えとけ」

「そうなのか」

「そうなんだよ。ほら、もう、メリルのことは好きにしろ。私は立派な皇妃が横にいれば、それでいい。女が欲しいなら、権力に物を言わせるか、金で買うかすればいい。もう、出ていけ。話は終わった」

 私はさっさとハイラントを追い出した。ハイラントはまだ、何か言いたそうだが、私はあえて、顔を背けた。

 しばらくして、ハガルが戻ってきた。話を妖精使って聞いてたな。

「どうなりましたか?」

 あえて、私に聞いてくる。知らないのか知っているのか、よくわからない顔をしている。

「メリルとハイラントがやったんだと。お前の目論見通りとなったな」

「えー、そんなに早く? ラインハルト様の時みたいに、婚姻後になると予想してたのにー。こういう事は、読めないな」

 ところが、ハガルは内緒話を聞いていなかった。それどころか、驚いている。

「なんだ、盗み聞きしなかったのか」

「いくら俺でも、そういう無粋なことはしない。友達同士の大事な話だろう。そういうのは、いくら筆頭魔法使いといえども、分別はつける。たく、面倒臭いことしてくれたな」

「その、初夜の偽装、出来る?」

「アイオーン様は、初物の経験はありますか?」

 急に真面目な顔をして聞いてくるハガル。口調をそういう丁寧にして聞くのはやめてほしい。

「ハイラントたちには、ああ言ったが、私の経験は、玄人女だけだ」

「そうですか。では、私の経験で、偽装するしかないですね」

「え、経験あるの!?」

「借金ありの女性を身請けしたんですから、あります。しかも、身請けした女性全て、未経験でした」

「………ハガル、逃げられてばっかりなのに、やることはやってるんだ」

「年頃の男子ですから、やりますよ。霞食って生きてるわけではありません。目の前に美味しい果実があれば、食べるに決まっているでしょう。初夜の偽装は私の経験でやります。さて、どれにしようか」

 モテない男なはずなのに、その口から出る内容は、とてもそうではない。私が知っているだけで、見受けして逃げられたという女は三人だ。これだと、私が知らない女はまだまだいそうだ。


 そうして、ハガルの手によって、私とメリルの初夜は偽装された。

 私は、結局、メリルと床を共にすることはなかった。

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