悪い遊び
皇帝の仕事なんて、大したことではない。書類はすぐ終わってしまう。皇族に割り振りされている仕事もあるが、遅れている所は、文官たちが確認したりしているので、基本、私は暇だ。
「暇なんだが」
私の執務室に様子見に来た筆頭魔法使いハガルにいう。ハガルはハガルで、魔法使いの育成に力をいれていた。忙しい、というわけではないが、うまくいっていない様子だ。
一度、魔法使いたちをこらしめたが、心の中の蟠りというものは、簡単にはとれない。ハガルが教育の質を上げようとしても、魔法使いたちが、のらりくらりと逆らうのだ。
「戦争もなくなりましたし、不正の温床は、随分とラインハルト様が潰してしまいましたし、やることといえば、国政のみですよ。アイオーン様にとっては、それも、簡単でしょうが」
「こういう暇な時、お祖父様はどうしていた?」
「暇な時がありませんでしたね。あの方は、いくつかの問題を平行してこなしていましたから。暇を作っては、私の仕事を邪魔してくれるので、大変でした」
「お前は随分と、お祖父様に可愛がられてたな。羨ましい限りだ」
「………」
黙り込むハガル。私が想像している可愛がり方ではなかったらしい。あの女好きの皇帝が、ハガルを随分と気にかけていたのは、子や孫のような愛情を持っていると思っていた。
実際、筆頭魔法使いとして表に出るようになったハガルをラインハルトは側に置いては、気にかけていた。私たち孫には、その姿は、子や孫に接しているように見えた。
表向きの記録を私は読まされてはいた。皇族としては、ハガルのことを知っておかないといけない。その文章では、皇帝ラインハルトは、ハガルが逆らえないようにするために、幼い頃から刷り込みように可愛がったとある。ハガルの妖精憑きとしての才能は化け物であるため、筆頭魔法使いの儀式を実行出来ない可能性があった。当時、ハガルに次いでの実力があった賢者テラスでさえ、ハガルを抑えることは不可能と言い切った。そのため、精神的に、ハガルを縛る方法をとったのだ。
これまで、子にも孫にも愛情一つ向けなかったラインハルトは、ハガルを可愛がった。最初は、見様見真似だったという。それが、途中から本物となり、ハガルは皇帝の家族のような愛情に逆らえなくなった。結果、筆頭魔法使いの儀式は、ラインハルトの抑止力により、成功した。
これを読んだ時、なんとも言えなかった。子や孫が得られなかったラインハルトの愛情を仕方がなかったとはいえ、筆頭魔法使いの儀式を成功させるために、ハガルは受けたのだ。
ハガルが私を何か言いたげに見返す。私の蟠りが、顔に出たみたいだ。慌てて、笑顔を作る。
「皇帝となると、暇つぶしに市井を見ることも出来ないな」
「いえ、見れますよ」
誤魔化すための言葉だったが、思わぬ返答がハガルの口から出た。
「ラインハルト様も、よく、私を連れて、外に出ていました。さすがに、そのような恰好ではありませんでしたが。そうですね、市井に出てみますか? 私が護衛をしますから、間違いは起こりません」
「いいな、それ」
思わぬ話に、私は喜んだ。皇帝となった以上、自由は諦めていたからだ。
ハガルはすぐ、目立たない平民服を用意した。昔、よく、着て、遊んだものと変わらない。
「昔は、私が成人前だからと、賭け事と酒は、教えてくれませんでしたね。私も無事、成人しましたので、ぜひ、教えてください」
「女遊びの店では、いつも、果実水か、ただの水を飲んでたな。それは楽しくなかったな」
「では、まずは、女遊びの店に行きましょう」
「その前に、その上品な話し方はやめろ。以前のように、話せるだろう」
悪友が執務室に遊びに来た時は、ハガルは昔のハガルだった。話し方も態度も、砕けていて、平民だった。
なのに、私と二人となると、話し方が上品となる。あと、仕草一つ一つに色を感じる。男だというのに、間違いが起きそうだ。
「こういう話し方をすると、ラインハルト様が激怒したんだ。あの方は、もう、礼儀とかそういうのに煩かったんだよ」
途端、昔のように話し出すハガルは、私の知っているハガルになった。
ハガルと一緒に、秘密の通路を通って、外に出た。秘密の通路には迷いの魔法がかかっているため、普通は道順を間違えると元に戻されてしまう。しかし、皇族ならば、迷いの魔法が効かないので、間違えても、元に戻されることがない。しかし、私はまだ、完璧に覚えていない。ハガルは、道順を完璧に覚えているので、迷いの魔法にもひっかからない。お陰でスムーズに出られた。
「そういえば、ハガルはあの行きつけの店には行ってるのか?」
ハガルは決まった店によく出入りしていた。筆頭魔法使いとなってからは、どうしていたのか、気になった。
「行ってない。ママ、生きてるかな?」
「私が皇帝になる前までは行ってたぞ。無事、生きてる」
「そうかー」
何か蟠りがあるのだろうか。ハガルは考えこんだ。
「ママさんは、お前に会いたい、とよく言ってたぞ。筆頭魔法使いになっちゃったから、遠くなった、て嘆いていた」
「そう言ってもらえると、嬉しいな」
笑顔を見せるが、どこか、ぎこちない。口では嬉しい、と言っているが、心の中では違うようだ。
そうして、いつもの店の前に立つ。夜の店なので、日が高い今は、まだ準備中だ。
それなのに、ハガルは入っていく。
「え、いいの?」
「俺はほら、何かと忙しかったから、時間外でも、入れてくれたんだよ。いなかったら、他にいけばいい」
そう言って、ドアを開けてしまうハガル。この店のママさんは、怒らせるとなかなか怖いってのに、すごいな。
「もう、まだ時間じゃないわよ!」
女の恰好に女の化粧をしているが、このママさんは男だ。もう、筋肉ムキムキだ。店で問題が起こると、このママさんが実力行使で解決してくれる。
「久しぶりー」
笑顔でいうハガル。
ママさんはしばらく固まった。物凄く驚いたんだろう。もう、随分と固まっている。
「ママ、久しぶり」
「ハガルちゃーーーーんーーーーー!!」
物凄い勢いで、ハガルをがしっと抱きしめるママさん。
「もう、会えないかと思ってたわ!!」
「アイオーン様の護衛として、外に出られただけだよ。もう、一人でこの店には来られない」
「ううう、そうなのね。ほら、座って座って。ハガルちゃん好みの可愛い子は、まだ、いないけどね」
「あの、私は?」
「あ、いたんだ、アイオーン様」
「いたよ!!」
「そこら辺に座ってていいから」
酷いな、この扱いの差。私はハガルより偉いはずなんだけど。
ママさんはハガルにべったりくっついて、酒を出してきた。
「皆、元気にしてるか?」
「ハガルちゃんのお陰で、借金返して、まともな生活に戻っちゃったわよ。皆、ハガルちゃんに感謝してるんだから」
「でも、他の男と結婚しちゃったんだろう。どうせ、俺のことは、金づるとしか見てなかったんだろうな。ま、楽しかったからいいけど」
「もう、そんなこと言って。ハガルちゃん、本気になると、のらりくらりと避けてたじゃない。皆、ハガルちゃんのこと、好きそうになってたのに」
「えー、そうなの? なんだ、言ってくれればいいのに」
「そういう時に限って、ハガルちゃん、借金持ちの訳ありの子、身請けしちゃうから」
「俺はなんて、勿体ないことしてたんだ!!」
ハガルはタイミング悪く、機会を逃していたようだ。ママさんの話では、ハガルはそれなりにモテてはいたというのに、気の毒に。
「ハガルって、見る目ないよな」
「そういう訳ありの子は、なんとなく、気になっちゃうんだよ。逃げられたけど」
酒をぐびぐび飲んでいるハガル。物凄いスピードで飲んでいるから、心配になる。
「ハガルちゃんも、もう大人になったのね。また、ハガルちゃんに抱いてもらいたいわ」
「え!? ハガル、ママさんと、その、そういうこと、したの?」
ハガルは女の子大好きなはずなのに、まさか、このムキムキのママさんを相手にしたというのか!?
「成人前に酒をついつい飲んじゃって。記憶がない」
「私は記憶があるわよ。もう、すごかったんだから!」
「記憶がない!!」
物凄く拒否するハガル。思い出したくないんだろうな、その記憶。ないっていってるけど、ありそうだぞ、その言い方だと。
「あんなに上手なのに、女の子に逃げられちゃうなんて」
「ママ、俺、上手じゃないよ。だから、逃げられたんだよ」
「上手だったわよ」
「酒のせいだよ、それ!!」
全否定するハガル。そうかー、酒を飲むと、人が変わっちゃうんだな。
また、間違いを犯そうとしているのか、ママさんはハガルに頑張って酒を勧める。私にはこれっぽっちも勧めないな。私、この国で一番偉いのに、おかしい。
「そういえば、最近、アラリーラ様に会ったわ」
「え、マジ?」
あんなに飲んでいるのに、これっぽっちも酔っていないハガルは驚いて、聞き返す。
「本当よ。ここに、挨拶に来たの。いつも、ハガルちゃんがお世話になってます、なんて。ハガルちゃんが元気か、聞いてきたわ」
「ふーん、そうなんだ」
ちょっと表情を怖くするハガル。それを見て、ママさんも何か感じたようだ。
「ハガルちゃんって、時々、悪い顔するわね。何か、悪い事、考えてるでしょう」
「悪い事考えてるけど、出来ないんだなー。もうちょっと、魔法使い、処刑しとけば良かったなー」
「もう、怖いこと言わない」
ハガルは軽く言っているが、聞いている私は恐ろしくなった。こんなに身近に感じる話し方や態度をとっているが、頭の中は筆頭魔法使いだ。その片鱗がどうしても出てきてしまう。
「俺、今日は金がないから、ツケといてよ。後で、金、払わせに行かせるから」
「どうしたの? 借金しない主義だったじゃない」
「筆頭魔法使いになると、金持ち歩くのは禁止されちゃうの。迂闊に恥ずかしい買い物も出来ないよ。俺だって、そういう本が見たい時があるってのに」
「大変ねー、ハガルちゃん」
「本当に。筆頭魔法使いなんて、辞めたかったのにー」
ハガルはうんざりした顔で、酒を煽った。
ママさんの店では散々、飲み食いしたというのに、ハガルはけろりとしていた。
「妖精憑きは、本気になれば、酔わない」
ママさんの前でそういうと、ママさんは崩れ落ちた。あんなに頑張って飲ませたのは、酔って間違いを犯させようとするためだ。だけど、本気となったハガルは、ザルとなった。
ママさんの支払いは、後日、城の者が持っていく、ということで、お別れとなった。物凄く、ママさんが引き止めたが、私の都合で、出ることとなった。
次に向かったのは、賭博場である。成人前のハガルは連れて行ったことがなかった。ハイラントは、そこのところ、いいんじゃないか、と言っていたが、私はそれを許さなかった。
イヤな予感がしたからだ。
今ならわかる。ハガルは実力を隠して、市井に混じっていた。そこに、私はイヤなものをなんとなく感じていた。人懐っこい顔で、すっと懐に入ってきたが、私の直感が、ハガルの異質さを感じ取っていたのだろう。
だから、賭博場に連れて行くのは避けたかった。しかし、ハガルは目をキラキラさせて、行きたがった。
入ってみれば、初めて見るものだから、ハガルが喜んだ。
「へえー、こんな感じなんだ。カードのルールは知ってるけど、出来るかな?」
「おいおい、私を置いていくな」
護衛を兼任しているくせに、皇帝を放置するハガル。とんでもない筆頭魔法使いだな。
ハガルは早速、カードの席につく。賭博場は色々とあるが、よりによってカードとは。
私はハガルの横に座った。すでに金をチップに両替してきたハガルは、初賭博に嬉しそうだ。て、金持ってるよ!? ママさんの店ではない、と言ってたのに!!
そうして、しばらくやって、ハガルのチップはなくなった。
「消えた」
「負けたんだよ。弱すぎだよ!!」
もう、やり方が良くない。ハガルはもう、相手の手札とか読まずに、揃ったら、その場で出してしまうのだ。降りるとかしない。
いいカモだから、皆、ハガルに寄ってくる。
「おう、金はもうないのか?」
「あるある。次は、あの玉転がしにしよう」
「やめろ! お前には才能がない!!」
止めてもやめないハガル。もう、カモる気満々のギャンブラー達。ハガルが筆頭魔法使いだと知らないから、やりたい放題だ。
そうして、また負けるハガル。
「消えた」
「負けたんだよ!! もう、やめようよ!!!」
「次は、あっちにいこう」
「よし、やってみよう」
酷いもので、賭博場の隅から隅まで行って、チップを全てなくしてくる。
「あのクソ親父がこういうことやってたが、なるほど、面白いな」
「負けてるのに」
「負けたことがないから、負けるのが楽しい」
「………」
生まれた時から才能の塊の化け物と言われたハガルにとって、この敗者は、最高の娯楽となった。
そうして、カモられていると、悪い奴らが近づいてくる。
「どうだ、もっとすごいトコでやらないか」
「やめといたほうがいい」
こういう輩に絡まれたら、ろくなことがない。私が止めるが、ハガルはあの怪しい笑顔を見せた。
「それはいいな。ぜひ、案内してくれ」
口調はともかく、どこか色香のある顔を見せるハガルに、絡んできた輩たちは、間違いを起こしそうなほど、顔を赤くする。
ハガルはかまわず、店を出ていく。慌てて追いかける奴ら。私も慌てて追いかける。
「こっちだ、こっち」
ハガルがどこに行けばいいか迷っていると、あの絡んできた輩が腕を引っ張って、裏路地へと連れていく。どうやら、違法賭博場に連れて行くつもりだ。さすがに、そこはマズい。
「ハガル、よせ!」
「大丈夫ですよ」
怪しい笑顔でハガルは引っ張られるままに連れて行かれる。私のいうことなど、きかないな。お前は皇帝の犬じゃないのか!?
命令の力が足りないのだろう。私はただ、やめたほうがいい、と忠告しているだけだ。本気で命じれば、ハガルは止まる。私は、本気で止める気はなかった。忠告すれば、ハガルは止まってくれるものと思っていたからだ。
思っていたのと違った。ハガルは違法賭博場に入っていく。
皇帝としては、そこに入るのはまずい。しかし、ハガルを置いていくわけにはいかない。ハガルは、こういう事には馴れていない。仕方がないので、私は思い切って入った。
中は、これまでの場所とは違う、怪しい場所となった。酒だけでなく、薬まで売られている。その場所では、法外なレートの賭博が行われていた。
ハガルは言われるままに席について、やっぱり負ける。ただ、負け方がまずい。完全にイカサマをされているのだ。
ハガルはここにきて、きちんと考えて相手をしている。相手の手札を読み、勝てる手札なのに、相手はイカサマをしているのだ。絶対に勝てない。
そうして、何度か負けていると、異変が起こった。
「痛い痛い痛い痛い痛い!!」
あちこちで、苦痛の声があがる。それは、ハガルに対してイカサマをした者たちだ。
「ダメだろう。妖精憑きにイカサマしちゃ」
詰まらない、みたいな顔でハガルはカードを投げた。カードは一瞬にして、模様が消えた。妖精憑きの力を使ったのだ。イカサマなので、ハガルの妖精が相手に復讐した。
それを見た違法賭博場の者たちは殺気立った。
「生かして帰すな!!」
それぞれ、武器を持って戦う者もいれば、逃げる者もいる。
ハガルは座って、出された酒を飲んでいるが、何もしない。逃げていく者は、逃げられなくて戻ってくる。攻撃しようとする者は、次々と倒れていく。
そうして、阿鼻叫喚の世界が出来上がった。
「アイオーン様、無事ですか?」
「あ、ああ」
こんな光景の中、ハガルはいつも通りに笑っている。明らかに、薬が混ぜられているだろう酒を飲んで、平然としているのだ。その姿は、異様だった。
「一度は、こういうトコにも行ってみたかったが、イカサマはするし、酒には薬を混ぜるし、レートは違法だし、最悪だな。後は、民兵に任せよう。ほら、アイオーン様、次は、酒にしよう。ここの酒は薬の味がして、最悪だ」
ハガルは笑顔で私の腕を引っ張っていく。私は周りの異様な光景を見ないようにして、違法賭博場を出た。
そうして、酒場に行くと、今度はぼったくりバーに連れて行かれて、同じようなことをハガルが起こした。
ここまでくれば、ハガルがわざとそうしているのがわかった。きっと、見習いとしての身分のころから、ちょくちょく、こういうことをしていたのだろう。それにしても誰も彼も、ハガルのことを警戒しないで連れて行ってしまう。犯罪に手を染めているというのに、ハガルのことを危険だとは、誰も感じていないのだ。
そして、犯罪の店を民兵に任せて、たどり着いたのは、最初に行った女遊びの店である。
「ママ、聞いてよ。賭博場に行ったらさ、イカサマするんだよ。しかも、薬盛られたりして、酷いよな」
「ハガルちゃんが遊んでいる頃は、そんな店、みんな潰れてなくなったのに、また、復活してたのね」
「怖いですね、ハガル様」
「怖いー」
可愛らしい女の子たちが、ハガルにすり寄っていく。ハガルはママさんにお酌させて、可愛い女の子たちの肩を抱く。
「本当に、酷いな。ちょっと目を離すと、犯罪の温床があちこちと。ママもみんなも気を付けないといけないよ。本当に、筆頭魔法使いなんて、やめたい! そうしたら、ここに簡単に来られるようになるのに」
「でも、やめられないんでしょう?」
「いい人材がなかなか見つからなくて。はあ、あいつら、使えないんだから、もうそろそろ、鞭打ちしちゃうか」
「きゃー、怖い!」
「ハガル様、怖い!!」
「おっと、本性出てきちゃったよ。ごめんごめん」
女の子たちが怖がっているので、慌ててハガルはいつもの平凡な顔になる。この人畜無害っぽい顔をしていて、裏ではとんでもないことしてたんだな。
「ママ、妖精憑きには酒も薬も効かないから」
「えー、そうなの!? 残念」
ママさん、まさか、薬盛ってる? ハガルはそれでも笑顔で許している。違法な店では、笑顔で罰をあたえてたってのに。この店では、それをしない。
しばらくすると、ハガルは女の子たちもママさんもテーブルから離れさせた。ハガルがこうする時は、誰もしつこくテーブルについたりしない。
私と二人となったテーブルで、ハガルは笑顔を消す。
「何か聞きたいことがありますか?」
「あ、ああ。この店は、何もしないんだな。どうしてだ?」
聞きたくて仕方がなかった。薬まで盛られているというのに、ハガルは何もしない。
「俺のクソ親父が、妹を売ったんだ。その売られた先の先が、この店だった。事情を説明したら、ママは、金も受け取らず、妹を返してくれた。金では払いきれない、恩がある」
「そうか」
「ちなみに、その時売られた妹は、今は大魔法使いアラリーラ様の妻となっている」
「物凄く綺麗なのか?」
「母に似た、可愛い子だ。大魔法使いの妻なんて、世界で一番、安全な所だ。だから、安心して、筆頭魔法使いをしていられる」
薬が盛られた酒を一気飲みするハガル。穏やかな笑顔を見せた。
こうして、時々、私を理由に市井に降りては、ハガルは違法な店を潰して遊んだ。