前編
楽しんでもらえると嬉しいです。
「今日は土曜日かぁ」
今日は俺の好きな人のせいなとデートをする日だ。
とりあえず、いつものようにねているふりでもしておこう。
せいなは幼稚園時代から一緒に暮らしている。
その理由は彼女の両親が海外で主張しているということになっているのだ。
海外に出張しょうとしていたのはあっているのだが、航空に行く途中の道で事故にあって亡くなったのだ。
その時の刑事さんたちによると事故に見せかけられているように見えたと言っていた。
近所の施設に引き取られる予定だったが、せいな本人の希望もあり、一緒に暮らすことになったのだ。
朝になると母さんとせいなが楽しそうに料理をしている声が聞こえてくる。
しばらくすると、
「なおくん、起こしてくるね~」
とせいなの声が聞こえてきた。
なおくんは俺のことだ。名前はなおきだ。
昔から呼んできてとても恥ずかしかったのだが、もう慣れてしまった。
コンコンと部屋をノックする音が聞こえた。
「もう!今日くらい起きててもいいのに!!」
と少し怒ったような声で入ってきた。
「起きてよ!今日は一緒に買い物に行くって言ったのに!!」
「ごめんよ。朝弱くってさ。」
と目を擦りながら、いつも通りの嘘をついた。
本当は一時間は前に起きていつものトレーニングを終わらせたところだ。
やっぱり、男としては好きな人は守りたい。
でもその姿を見られたくないという謎のプライドとの瀬中案として朝が弱いということにした。
それだけじゃなくて、柔道もしている。
中学校の頃に好きになったと言って習わせて貰っていて週一回の日曜日に行くようにしている。
とまあこんな感じだ。と誰に言い訳しているのだろうと思いつつ起きる。
「いつも起こしにきてくれてありがとう」
と感謝を伝えつつ、起き上がった。
リビングに行くと両親はやれやれみたいな顔で
「おはよう」
と言ってきたので、
俺もいつものように少しムスッとしたような顔で
「おはよう」
と返すのだった。後にせいなが俺に
「自分で起きれないからでしょ」
と言われながら頭を叩かれるのだった。
朝ご飯を食べていると、父さんから
「今日は何時まで出かける予定なんだ?」
「多分、17時くらいになると思うよ」
「そうか。今日は父さんと母さんは丁度そのくらいの時間から出かけるから夜もすませてくれるか。」
と言ってきた。
「わかったよ」
「はーい!だったら、もう少しのんびりしてから行こうね」
とそれぞれが返事をした。そんな感じで朝ごはんを食べていた。
「ごちそうさま!着替えてくるね!!」
と元気よく自室に戻った。そんな様子を眺めながら、
「父さん、母さん。どこに行く予定なんだよ?」目をそらしながら尋ねた。
ニヤニヤしながら
「デパートみたいなお子様が行くような所には行かないよ」と煽ってきた。
「わかったよ。あそこに行くのね」と嫌そうな顔をしながら答えた。
「そんなにすねるなよ。そういうことだから気にせずに二人で楽しめよ。」
と笑っていた。全く、この両親には勝てる気がしない。
俺がせいなのことを好きなことがバレているからこうやってからかってくるのだ。
少し真剣というか怖い顔をしながら、
「さっきも言った通り父さんたちも用事があるからゆっくりしてくるんだぞ。」
と念を押してきた。意味もなく同じことをいう父さんじゃなかったので、反発することなく
「わかったよ。俺もそろそろ準備するよ」
といって歯磨きをして部屋に戻った。
さっきの父さんの話し方からすると19時くらいに帰るといい感じになりそうだなと思いつつ、どこにするか悩んでいた。
最初の予定では昼までデパートに行き、おひるを食べて夜ごはんの買い物して帰る予定と聞いていた。
そんなときノックの音と共にせいなが入ってきた。
「ねぇ、どこか行くところ増やす?」とドアから顔だけのぞかせながら、聞いてきた。
そうだなぁと生返事をしながら考えていた。
ゆっくりできるならせいなのことをじっくり目に焼き付けたい、でも会話を途切れさせてつまらないやつだと思われたくないと今更数十年の付き合いの女の子相手にどうしようもないことを考えていると神からのお告げが来た。
「よし!!!決めた!!!映画館に行こう!!!」
「いいけど、今何を上映してるか知ってるの?」
「ついてから決めてもいいし、事前に決めてもいいよ」
とせいなとの会話を楽しみながら今日のデートの準備を進めるのだった。
時間になりついにやってきた映画館。
その場のノリで決めようということに未だに決まってはない。
ポスターを眺めながら何がいいかと悩んでいると最近実写映画化されたものをさしながら
「これがいい!」
と提案された。それを見て、確かに良さそうだと思い、了承した。
映画をみてる中、時々横顔を見つめてた。
女の子のキャラが顔を赤くしているシーン、最後の告白シーンなどで目がキラキラしていたり
頬が赤く『いいなぁ』とつぶやいていたりと俺は終始見とれていた。
もちろん、きちんと映画の内容を把握するということも忘れなかった。
映画館の後はカフェで映画の感想を話しながら、のんびり過ごした。
昼を食べた後はデパートでせいなの欲しい服を見ていた。
俺自身はファッションのファの字も知らないので、服その物には興味はないのだが、
やはり好きな人の服を見るのは楽しい。というより反応がカワイイ。
楽しいのだが、同時に独占欲みたいなものが沸き上がってきて早く告白しろよと囁く自分との葛藤が始まるのだ。
踏み出せない理由もある。意気地なしと言われれば、それまでなんだよなぁといつも考えている。
この様子が顔に出ていたみたいで心配そうに
「大丈夫?」とのぞき込んできた。
そんなせいなに心配をかけまいと『そんなことないよ』と思ったのだが、実際に口から出たのは「カワイイせいなを周りの人に見せたくなかっただけだよ」と本音の方をもらしていた。
言った言葉を自覚した瞬間、せいなの方を俺はまともに見ることが出来なかった。
せいなが何かブツブツ言っていて何を言っているのか聞き取ることは出来なかった。
しかし、周りの人たちからすれば、とても微笑まし光景だった。
服を選んでいるときに少しギクシャクしていたが、10分もすればいつも二人に戻っていた。
のびをしながら、
「そろそろ、ファミレスにでも行くか!」
「うん。少し早いけどいいかもね」
ということで向かっていた。
注文を終えて、ドリンクバーで飲み物を選んでいた。
ここでもせいなにのみ行われるレディーファーストで先に飲み物をえらびに行っていた。
せいなを待っている間、今日の色々なことを思い出していた。
こんな時に父さんの真剣な声色で言っていた『さっきも言った通り父さんたちも用事があるからゆっくりしてくるんだぞ。』という言葉に違和感を感じた。
どうして用事と言って誤魔化したのか?と。
母さんと二人で出かけるならそういえばいいじゃないか。気になりだすと止まらなかった。そんな様子が戻ってきたせいなにも伝わったのだろう。
「どうしたの?」と首を傾げた。
今気になっていることをせいなにも話した。すると、せいなも気になりだしたのかソロソロし始めた。
そんなせいなの様子をみた俺は落ち着きを取り戻し、「ごはんを食べてから急いで家に帰れば、大丈夫だ」と安心させるように言った。
家に着いた時には、リビングの明かりがついていた。
念のため、俺が家の様子を見てくると伝えて確認にいった。
ゆっくり玄関を開けた。乱雑に置かれた靴を見た瞬間に今まで感じたことのない恐怖を感じた。
母さんは礼儀についてとても厳しかった。
そんな母さんの靴が脱ぎ捨てられているなんて異常な事態だった。
人の気配は感じなかった。多分、父さんと母さんは死んでいると思った。
二人がもし生きていたらと考えたりもする。
けど、犯人が潜んでいて人質に取られでもしたらせいなを助けることができない。
だから俺がまず考えることは、せいなの安全を確保を確保することだ。
この付近で安全な場所は決まっている。
昔、せいなが預けられる予定だった施設だ。
「せいな、しばらく施設に行こう。父さん達は今から海外にいくみたいなんだ。」
とあからさますぎる嘘をついた。
そんな嘘でも泣きながら「わかった」と言ってくれた。
20時くらいにせいなと一緒に行ったが、施設長のあつこさんは何も言わずに入れてくれた。
後ろのせいなの様子から何かを察してくれたのだろう。
朝になってからあつこさんに事情を軽く説明した。
「分かりました。一緒に家に行きましょう。せいなちゃんはどうしますか?」
「はっきり言って悩んでいます。あの様子だと気づいていそうではあるのでいいとは思うんですけど、どんな状況なのか僕も把握していないので」
と施設長のあつこさんと話していると後ろのドアが開いて
「私もついていく。もうなおくんにばっかり守られるだけじゃなくて、私もなおくんを支えたい」
本当はいやだった。せいながこれ以上身近な人の死を目の当たりにしてほくなかった。
これまでにないくらい真剣な表情をしていたから俺は
「わかったよ。」
家に辿り着いてから入るまで正直少しの勇気が必要だった。
父さんと母さんがどんな風になっているのか、わからないからだ。
少し躊躇していると、せいなが手を握ってくれた。
その手の温もりから、何があっても守らなきゃという思いとどんなことがあってもずっと隣にいてくれそうな安心感を得ることが出来た。
家に入り、リビングに着くと衝撃が走った。
両親が首を釣って死んでいた。
両親の足元には椅子がおいてあり、一見すると自殺に見えるようになっていた。
勿論、見つけた時に警察に通報はした。
警察が来て、現場検証をしていたが、やはり自殺でしか処理できないと言われた。
今後、どうするかせいなの件を担当していた刑事さんに聞かれた。
少し話をすると、通報したのが俺たちだったから無理を言って現場に来たらしい。
それはここに来る前にせいなと相談して決めていた。
「近くの施設で暮らすと決めています。」
「そうか。何か困ったときは、いつでも連絡をくれ。相談にのろう」
「ありがとうございます」とだけ伝えておいた。
感想など、どんどん待っています。