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第8話

 僕と杉江は帰宅してすぐに母親に切り出した。


「母さん、実は父親のことが聞きたいんだけど」


「父さんのこと。なによイキなり」


「それは僕から説明します」


 杉江はかいつまんで事情を説明した。母親は旧支配者だの眷属だののことは不審そうに聞いていただけだが息子の命が危険に晒されていると聞くと話をしてくれた。


 実は父親のことは母もあまり知らない、とのことだった。出会った直ぐに結婚したらしい。


 最初の出会いは歩道のベンチに雨にもかかわらず傘もささずに一人父が座っていた時だそうだ。目の前の車道を通る車が水を跳ねて大量の水が掛かっても特に反応もせずに座り続けている父に思わず母が声を掛けた。


「雨でビショビショですよ、大丈夫ですか?」

それに対して父は一瞬何を言われたのか判らない様子だったが


「ああ、雨が降っていたのか気が付かなかった」

と答えた。


「気が付かなかった?ずぶ濡れですよ」

そう言うと


「うん、いいのです。濡れている方が落ち着くので」


と意味の分からないことをまた答えた。それで何だか気になって自分のアパートに連れて行って風呂に入れたのが運の付きだったわ、と母は少し嬉しそうに言った。父はアメリカ東海岸から来た、とだけ言っていたらしい。それ以外は自分の話はしなかったようだ。結局母親の話からは父の人物像は判らなかった。





 俺と杉江はすぐに京都駅に向かった。伊勢丹の中の喫茶店で待ち合わせていた叔父にはすぐに会えた。


「お忙しいのに申し訳ありません。実は父親のことが聞きたいのですが」


「お前の父親のことか。母親からは何も聞かなかったのか、それで聞いてどうする?」


「それは私から説明します」

杉江はかいつまんで事情を説明した。叔父さんは旧支配者だの眷属だののことは不審そうに聞いていただけだが甥の命が危険に晒されていると聞くと話をしてくれた。


 実は叔父は父親とは少しだけ話したことがあったらしい。


 父はアメリカ合衆国の東海岸から来たと言っていた。東海岸の寂れた港町の出身だということだった。街の名前は聞かなかったそうだ。どうして日本に来たのかは、ただ逃げて来た、とだけは話したらしい。何から逃げて来たのか、どうして逃げなければならなかったのかは聞いても言わなかったそうだ。この話は姉にも伝えなかったらしい。


「ありがとうございました。少し取っ掛かりが見つかった気がします」


 杉江には何か心当たりがあるようだったが俺には何も言わなかった。





 私と杉江はすぐに大阪駅に向かった。エキナカの喫茶店で待ち合わせていた叔父にはすぐに会えた。


「お忙しいのに申し訳ありません。実は父親のことが聞きたいのですが」


「お前の父親のことか。母親からは何も聞かなかったのか、それで聞いてどうする?」


「それは私から説明します」

杉江はかいつまんで事情を説明した。叔父さんは旧支配者だの眷属だののことは不審そうに聞いていただけだが甥の命が危険に晒されていると聞くと話をしてくれた。


 実は叔父は父親とは少しだけ話したことがあったらしい。


 父はアメリカ合衆国の東海岸から来たと言っていた。東海岸の寂れた港町の出身だということだった。街の名前はイン、なんとかと聞いたが忘れてしまったそうだ。どうして日本に来たのかは、ただ命からがら逃げて来た、とだけは話したらしい。何から逃げて来たのか、どうして逃げなければならなかったのかは聞いても言わなかったそうだ。この話は姉にも伝えなかったらしい。


「ありがとうございました。少し取っ掛かりが見つかった気がします」


 杉江には何か心当たりがあるようだった。


「何かわかったのか?」


「そうだね、イン、なんとかというのか間違いなくインスマスだと思う。」


「あのインスマス(づら)というやつか」


「そう、そのインスマス。君の父親はインスマスから来たんだと思う」


「じゃあ私は奴らと同族なのか」


 私が見たインスマス(づら)の男は魚男と名付けたくらい人間よりも魚類っぽかった。そんな人間とも思えないものと自分が、というか少なくとも父親が同じだとは。背中をまた冷たい汗が流れた。


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