ヲタッキーズ92 夏コミのゴミ箱
ある日、聖都アキバに発生した"リアルの裂け目"!
異次元人、時空海賊、科学ギャングの侵略が始まる!
秋葉原の危機に立ち上がる美アラサーのスーパーヒロイン。
ヲタクの聖地、秋葉原を逝くスーパーヒロイン達の叙事詩。
ヲトナのジュブナイル第92話「夏コミのゴミ箱R」。さて、今回は夏コミを舞台に希少な同人誌を狙う強盗事件が発生!
"薄くて高い本"の巨匠、新進気鋭の作家、塀の中の同人誌ヲタ…それぞれの想いが交錯する夏コミ会場で一体何が?
お楽しみいただければ幸いです。
第1章 アッシュカンは満杯
コロナ第7波の真っ只中、100thコミケ開催!
「そこのヲヴァンゲリオン、どいて!危ない!」
「え。もう完売だ?ウソでしょ?」
「うわぁアリーナの天井に熱気で雲が出来た…」
ヲタクが万人規模で全員ハイになる熱狂イベント夏コミw
"薄くて高い本"の売り手&買い手&レイヤーが大集結!
「コレより、マイラ・スクラが世界1レアな"薄くて高い本"を披露します。展示ブース145aの前を開けてください!」
アニメキャラの等身大ポップや垂れ幕、コスプレしたヲタク達かき分けスーツ女子が颯爽と登場、左右を固める警備員。
「みなさん!コレが、長らく失われていた"美少女太陽発電ソーラームーン"の唯一無二のオリジナルです!どーぞ御覧ください!」
スーツ女子は、アタッシュから取り出したアクリルケース入りの"薄くて高い本"を掲げる。ドヨメキと大拍手が湧く。
「すげぇ伝説のお宝本だ!初めて見た!」
「実在したんだw」
「月に代わって…お葬式ょ!」
"薄くて高い本"をチャンピオンベルトのように掲げたスーツ女子は、大騒ぎを満足げに見下ろし、専用台に本を飾る。
直ちに左右に控えた警備員が、硬化テクタイト製のショーケースを被せて、正面の電子ロックに複雑な数値を打ち込む。
「コレにより"薄くて高い本"に関する、私の世界的なコレクションは完結致しました!」
スーツ女子は、会場の大喝采を浴びて得意満面だ…その時!
「全員、床に伏せろ!」
音波銃特有のカン高い銃声がして…ソーラームーンが登場?
「キャー!」
「何?ソーラームーンのキャラクターショーなの?」
「モノホンの強盗だ!ショーケースを開けろ!」
"KKK"かと思ったら"太陽の塔コスプレ"の2人組だw
「解錠コードを入力して!」
「わ、わかった。わかったから撃つな!」
「幻のゴミ箱はソーラームーンがいただくわ!」
警備員が悔しそうに解錠スルやアクリルケースを鷲掴みし、強盗は天井へ音波銃を発射、悲鳴と混乱の中で逃走を図るw
「ズラかるわょ!」
「逃すか!」
「ヤメなさい!」
警備員が腰の拳銃に手を伸ばすが、一瞬早く強盗が音波銃を発射…殺人音波を満身に浴び、崩れるように倒れる警備員w
「キャー!死んだ!彼は死んじゃったわ!」
「私も殺される!助けてぇ!」
「あ、太陽の塔のコスプレを脱ぎ捨てた!」
算を乱し逃げ出すヲタクに紛れ強盗はマンマと逃走に成功←
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「推しとドルヲタの関係にゲーム理論を適用してみて。推しの最終的な目標は何?別にビジネスするワケじゃない。つまりソンな間柄においても、情報のヤリトリは生じるの」
「あ。ルイナ先生、私のスマホがハッキングされてる!」
「私じゃナイわ。相棒のハッカーのスピアが勝手にサボり学生を…情報。ヲタクに個人情報を渡す時、悪用しない/されないコトが条件ね。だからこそ、次々と情報を共有するコトが出来る。コレを"対象情報"と呼ぶわ。推しとドルヲタ、国や会社、恋人や友人同士に存在するパートナーシップの基盤ね。まぁ!貴女は人気者ね。未読スルーが17件?」
途端にルイナのリモート講義に"いいね"が殺到。何でだ?
「来週は第15章やります。講義タイトルは"ゲーム理論と経済行動"。それじゃまたね!」
リモート講義は終了だが"質問"サインが明滅してる。
「誰かしら?」
「センセ。雑誌"バニティフェア"の特集担当でランラと申します。センセは、何にでもゲーム理論に当てハメて考えルンですか?」
「え。取材なの?アキバ工科大学の広報を通して…応用数学ょね。電子出版した本の人気で受講生が増えちゃって」
「私もセンセのヲタ友とお話がしたいわ」
「そうなの?何でw」
「センセの本はベストセラーです。今や悩めるヲタクのカリスマ友人カウンセラー。ぜひセンセの交友関係を知りたいの」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
夏コミ会場のアリーナ搬出口にパトカー&救急車が集結←
ストレッチャーに載った遺体搬出を無数のスマホが追うw
「被害者は、民間のガードマンでした」
「非番警官のアルバイトかしら?」
「いいえ。高校女子野球のコーチです。離婚した妻の子供4人の養育費稼ぎで夜間は警備員のバイトを。強盗は、彼を音波銃で撃ち、群衆を威嚇しながら逃走」
現場入りした万世橋警察署のラギィ警部は頭をヒネる。
「"薄くて高い本"のために強盗?ってか、ヲタク絡みだからって何でもかんでもウチにフルのヤメて欲しいわw」
「でも、激レアなんです。マイラ・スクラは、そうした非売品コレクターでは、世界的に名の通った収集家の1人です」
「非売品コレクター?」
ヲタッキーズのエアリがスラスラ解説スル。
「今は電子出版全盛ですが、昔は出版社が色見本として刷った最初の1冊とか、本来その場で廃棄されてたモノが、今ではトンでもない値段で取引されてます。ソレらは、その場でゴミ箱に捨てられてしまうモノなのであるコトから通称"アッシュカンもの"と呼ばれてますが…」
「ゴミ箱?」
「YES。今回盗まれたのは、1989年に描かれたピカヲ・ロスムの作品"セーラームーンと機関銃"で、後に国民的ヒロインとなる"美少女太陽発電ソーラームーン"の原作と目されている作品のアッシュカンです。この中では"ソーラームーン"は、未だ"レイン傲慢"の貞淑な妻でした。ピカヲは今に続く"人妻ヒロイン"時代を切り拓く旗手だったのです!」
「え。今って人妻ヒロイン時代だったの?知らなかったわ…しかし、ホントに詳しいのね!」
「実は、地球が冷え固まって以来、ずっと"薄くて高い本"の収集をしてます。私がメイド長をやってる図書館カフェに何千万冊も所蔵していますょ。今から御案内しましょう!」
「no thank you」
エアリは、ヲタッキーズの妖精担当で背中に羽根がアル。
無限に深い地下洞窟に地球上の全文明の書籍を所蔵スル←
あ。羽根は普段は折り畳んでルンだ。メイド服の下にね。
「ヲタッキーズの"薄くて高い本"ヲタク?!」
さらに厄介そうなナース服女子の登場だw
「貴女は…ロマナ・セスマ?モノホンですか?"流線形パンク"の初版本、未開封で持ってマスょ!」
「私もモノホンのヲタッキーズに会えて光栄だわ!今回のアッシュカン強盗は、やはりヲタクなのかしら?」
「ラギィ警部!コチラは、ロマナ・セスマ。新進気鋭の"薄くて高い本"作家にして業界の事情通です!今回の事件、手伝ってもらいましょう!」
ヤタラ前のめりなエアリに圧倒されるラギィ警部←
「え?え?セイラ・マス?アルテイシアだっけ?スチーム…パンク?とりあえず、収集家のマイラ・スクラは御存知かしら?」
「of course。でも大嫌い。"薄くて高い本"業界の面汚しょ!お金の亡者だし」
「でも、自分でも"薄くて高い本"、描いてる作家ナンでしょ?」
思い切り嫌な顔をするロマナ・セスマ。
「確かに、若い頃は前途有望な"薄くて高い本"作家だったけど、アラサー前に"金にならない"とお金儲けに転んだ。以降、下らないキャラクターを量産してTV局や玩具会社に売り込んでは巨万の富を稼ぎ、セレブ入りを果たした輩ょ」
「"薄くて高い本"って、ソンなに儲かるの?じゃ、あの作品は?えっと…」
「"セーラームーンと機関銃"ですか?」
早速ロマナ・セスマから的確アドバイス←
「YES。売ったらおいくら?」
「200万ドラーぐらい?もし、モノホンなら」
「え。フェイクなの?」
ナゼだかガッカリした顔になるラギィ警部。
「実は、未鑑定なんです。ロマナ・セスマが鑑定に応じなかったから」
「何で?ニセモノだから?」
「万一モノホンとなれば、所有権は原作者のピカヲ・ロスムに移ります。彼女は"薄くて高い本"業界では伝説の人物ナンです!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「ピカヲ・ロスム?今じゃ過去の人。三流作家でしょ?彼女が描いてたのは遥か昔。その後、売ったのか、無くしたのかは知らナイけど"セーラームーンと機関銃"のアッシュカンを私が買った。だから、今の所有者は私。高値がついたから返せ、なんて許されないわ。卑怯ょ!」←
「じゃ貴女は"セーラームーンと機関銃"を何処で入手したの?」
「ソレは…」
口ごもるw夏コミ本部の会議室を借り事情聴取中。
「まぁ、実は、偶然なのょ。とあるガレージセールで300冊ぐらい"薄くて高い本"が詰まってた箱をゲットしたんだけど、その中から見つけたの」
「買ったのは投資目的?」
「まぁね。だから、ピカヲが死んで最高額に上がった時を見計らって売るつもり。もう大分弱ってるから、先は、そう長くはナイはずょ」
「さぞかし待ち遠しいでしょうね」←
ラギィの皮肉を聞き流すロマナ。
「あのね、警部。私にとって"薄くて高い本"はビジネス。割り切らなくちゃ」
「"セーラームーンと機関銃"を公開したのは初めて?」
「いつもは、秘密の場所に厳重に施錠して隠してる。フェイクだと噂が出たから、公開スル決心をしたのだけど…軽率だったわ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
捜査の合間?に夏コミ会場をウロつくエアリ。
相棒でロケットガールのマリレに力強く語るw
「"薄くて高い本"は、人類に深い文化的な影響を与えていると思うの!」
「みんな大人になれないのね。見て!ピンクのカツラの子。髪が1本1本光ファイバーのウィッグだわw」
「今やエウリアンは嬢がスッカリ高齢化、場所は末広町に移転して…」
ソコへいつ着替えたのかバニーガールのロマナが飛び込む。
「ヲタッキーズのエアリ!例の"セーラームーンと機関銃"だけど、ダークウェブで5万ドラーの値がついてる!」
「え。もう売りに出てるの?買い手は?」
「未だ決まってナイ。ドンドン競り上がってる!」
フト気づくと目の前のヲタク2人が言い争ってるw
「嘘だろ?そんな…デマだ!」
「確かに聞いたんだ!」
「証明出来るのか?おい!」
ヲタクの勘でピンと来たエアリが詰め寄るw
「ヲタッキーズょ!何を話してるの?」
「え?ヲタッキーズ?ホントにメイドなんだな。ツーチェキいくら?」
「サービスで名入れしちゃう。ネームは?」
「唐揚げタローだ」
なるほど、黒Tシャツに白文字で大きく"唐揚げ"とアルw
「アンタ達、ヲタッキーズ?アッチでヲタクが喧嘩してる!妖精魔法で止めてくれ…あ、マリレならロケット噴射で吹き飛ばしても構わないけど」
「いーから!お前のを見せろ!どーせ偽物に決まってる!」
「お前のこそ!」
ヒゲモジャとモヒカンがつかみ合ってるが、見るとそれぞれアクリルケースに入った"薄くて高い本"を持っているw
「アンタ達!夏の楽しい想い出の場、夏コミでケンカはヤメて。2人を止めて。私のせいで…ちょっと見せて!コレは"セーラームーンと機関銃"のアッシュカン?まさか」
「俺は、ダークウェブの正規ルートで買った。だのにコイツは…」
「ダークウェブに正規も正気もあるか!」
その通り!さっきの唐揚げタローも恐る恐る差し出すのは…
「全部"セーラームーンと機関銃"のアッシュカンじゃないの!コレじゃレアな1点モノが台無しょ!」
第2章 バスタオルを巻いた詐欺師
早速、万世橋に捜査本部が立ち上がる。
「死人まで出てるのに事件で盗まれたフェイクを買う神経が理解impossible。みんな取り憑かれてるの?」
「フェイクホルダーには、全員、事件の3時間後にメールで連絡があったそうです」
「取引の方法は?」
「キャッシュオンリー。価格は5000ドラーから4万ドラー。6時間の間に異なる場所で次々と取引が成立。目撃情報では、ディーラーは20代半ばのコスプレイヤー」
聞き込みを終えた刑事達がテキパキ報告スル。
「フェイクの中にモノホンは混じってない?」
「警部、フェイクには全部古くて似た材質の紙が使われています。でも、そもそも盗まれたスクラのが未鑑定なので、出没中のモノがモノホンか否かは確かめようがナイのです」
「あ、そっか。犯人は人を殺してると言うのに…」
ラギィは唇を噛む。
「確か殺されたのはバイト警備員だったわょね?大した抵抗のナイ相手に発砲したとなると、攻撃性障害の疑いがアル。暴行歴のあるヲタクを調べてくれる?あと、取引の場所の間隔にヤタラとムラがナイのが気になる」
「なるほど。ランダムに見せかけて、実は何か意図が隠されてる可能性もありますね」
ラギィの指示が飛ぶ。
「ルイナに分析を頼んで!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「レプリカは、半径約8キロ圏内の14箇所で売られたのね?なら売り手の本拠地を推定出来るわ。すぐわかるわょ」
ルイナは、史上最年少で首相官邸アドバイザーを務める、国宝級の超天才で、トレードマークは、ゴスロリに車椅子だ。
「フェイクについては、どーかしら」
「あら。私、フェイク分析は大好物なの。描いたのが同一人物製か否かの比較が楽しいの」
「うってつけね。助かったわ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
引き続き、夏コミ会場をスマホ歩き中のエアリを呼ぶ声。
「ヲタッキーズのエアリ…え。スマホ画面に車椅子のゴスロリ?貴女、首相官邸のコンサルタントさんね?」
「そうょ!最近、露出が多いので良く声をかけられるの。リモートだけど。ルイナょ」
「はじめまして!私は"薄くて高い本"作家のロマナ・セスマょ。ルイナ、貴女のコト"ワラッタ・ワールドワイド・メディア"の"アキバ2.0"で見たわ!」
車椅子のルイナは、万事リモートで外出スルのは稀←
今も、会議アプリでコミケ会場のエアリと会議?中w
「そーゆー貴女は"薄くて高い本"の歴史や収集のプロで、オマケに作家ナンでしょ?」
「YES。夏コミ会場のみんなは同業者ばかりょ」
「ホント?」
エアリがスマホを掲げると、兜や戦隊マスクを被ったみんなが手を挙げ陽気に声をかけて来る。全員、作家仲間なのだ。
「"薄くて高い本"のコトなら何でも聞いて」
「OK。"薄くて高い本"の価値は、何で決まるの?」
「ソレはね…」
ロマナの後ろを派手な羽根飾りのコスプレ女子が通るw
何のコスプレだろう?浅草のサンバ・カーニバルかな?
「先ず希少であるコト。次に古いコト。最後はコンディション。だから、収集家の多くは、買ったら直ぐアクリルケースに密封スルの。こうすれば、状態は完璧に保全され、誰にも読まれズ劣化もしナイ」
「つまり、安心して自慢出来るワケね?」
ロマナは、愉快そうに笑う。
「もう誰かに自慢してるの?」
「まさか…この黄色いステッカーの意味は?」
「リペア品。価値は下がるわ。絵の具の色褪せに食用油をスプレーして光らせたりスル。汚れ落としにテープを使って紙が傷んでるとか」
エアリは感心した様子で質問スル。
「貴女自身、フェイクに興味は?」
「巨匠達をマネる実力があれば、自分の作品を描くわ」
「なるほど!良くわかったわ。あと盗まれた"セーラームーンと機関銃"と同年代のピカヲ・ロスムの作品を見たいのだけど、ピカヲとは…」
「実は、お友達!連絡してみるね」
傍らで瞳をキラキラさせる…エアリ←
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「あら!1989年に描いた"薄くて高い本"だわ!"美少女太陽発電ソーラームーン"の2年前に描いたのょ?未だソーラームーンが…」
「レイン傲慢の奥さんだった設定の奴ょね?現代に続く人妻ヒロインブームのパイオニア作品だ!」
「え。今って人妻ヒロインブームなの?」
レジェンドか三流かで意見が分かれた老"薄くて高い本"作家のピカヲ・ロスムは、佐久間町の古いマンション住まい。
「ソレはソレとして、カラダの具合はどう?」
「急いで歩いたりしない限り平気みたい。肺気腫なの。おまけに腎臓もダメ。癌は2年前に克服したけどね。ところで、ロマナ。ソチラのメイドさんは?」
「ヲタッキーズのエアリと申します!お会いできて光栄です!貴女の作品も、たくさん持っています!」
紹介されるのを待たズ、笑顔満開で挨拶するエアリ。
「確か、この後でレイン傲慢は"生きろ生きろ団"の女幹部ガミラと入水自殺するンですょね?あの最終話、感動したわ!」
「実は、急にソーラームーン単独のヒロイン企画にしたいと編集部が言い出して…レイン傲慢には死んでもらったワケ」
「じゃソーラームーンって、実は寝取られ未亡人だったのですか?てっきり、タダのシングルマザーだと思ってました…うーん深いわ」
事情聴取そっちのけで感心/感動してうなるエアリ。
「きっと、ヲタッキーズのメイドさんは、私より作品を持ってるわね。実は私、数年前、蔵書の大半を売ってしまったの。今なら、もっと高く売れたのに惜しいコトをしたわ」
「FIT制度の導入に伴い"美少女太陽発電ソーラームーン"の人気がウナギ登りになるナンて、誰にもわからなかったモノ。仕方ナイわ」
「でもね、ロマナ。タダ同然であげちゃったのもアルのょ。事務所を処分した時とか、丸々1箱置いてきたの。でも、あの中に"セーラームーンと機関銃"のアッシュカンまで入っていたとは思わなかった。アレだけは取り戻したいのだけど」
「何か特別な思い入れでも?」
エアリが尋ねると、老いた作家はベランダの外を指差す。
「夫ょ。すっかりベランダーになっちゃって…デビューしてから、どんな時も支えてくれた。でも、私が描けなくなってウチは金欠。私の死後、昔の作品が高値で売れれば、夫も楽に暮らせると思って」
「…良い話だわ」←
「ピカヲ。きっと戻るわ。この世に正義があるなら"セーラームーンと機関銃"は、必ず貴女の手に戻る」
しかし、ピカヲは煮詰まった珈琲を1口飲んで微笑む。
「正義?バカね。貴女達"薄くて高い本"の読み過ぎょ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
捜査本部。ヲタッキーズのエアリとマリレ。
「マリレ。ルイナの地図分析が上がって来たわ…ところで、
武器犯罪課のイケメンに調査を頼んだ?」
「え、えぇ、まぁ。東秋葉原で有名な贋作者を教えて欲しいって…で、あのイケメンのコト、何か聞いてる?もう他に推しがいるとか」
「彼は、神田山本町の車掌カフェにいる"踊り子1号"のTOだって。マリレ、TOを探してるの?」
相棒に突っ込むエアリ。マリレは嘆く。
「池袋なら探すのも簡単だった。だって、街中がヲタクだったモノ」
「とっても良いヲタクがいるけど」
「じゃ頭が良くてユーモアのワカるヲタクをお願い…って高望み?骨太で変人ヲタクはNGょ。猫20匹飼ってるとか」
エアリは虚乳wの胸を張る。
「大丈夫。任せて」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「結局"薄くて高い本"って現代の春画だょね」
「テリィ様、ヒドい。今、ヲタクの半分を敵に回しましたょね」
「だって、空想科学兵器の"薄くて高い本"とか見たコトないし。出れば絶対買うのに…」
その夜の"潜り酒場"。ミユリさんに絡む僕。
御屋敷のバックヤードをスチームパンク風に改装したら、ヤタラと居心地良くなり、僕以下の常連が沈殿して困ってるw
「でも、テリィ様の大好物のセーラー戦士ナンか"薄くて高い本"の常連だから、全戦士あんなコトやこんなコトとか、もう2回りか3回り、フルコースでヤラされてますけど」
「待て。一方で太平洋の向こう岸の国のヒロインは"本"にならないという事実は見逃せない。やはり、大和撫子の自立性の欠如こそ問題だ」
「そーいえば、確かに戦隊ヒロインとか最初から人質要員ですモノね」
カウンター越しに首を傾げるミユリさん。
「で、テリィ様は…洋モノと大和撫子、どちらがお好き?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
同時刻。万世橋の捜査本部は眠らない。
「警部!神田花籠町に古紙にプリントする印刷所がありました!ソコに先週、1980年代の古紙を使う印刷物の大量オーダーがあったそうです。発注したのはコスプレ女で偽名だったけど人相が判明。現在、ウチの漫画屋が似顔絵描きに急行中!」
「やった!月に代わって、お葬式!」
「警部、何ですかソレ?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
一方、エアリは"独自のルート"で調査を進めるw
「マリレ、レプリカが売られた区域の真ん中に"薄くて高い本"を扱う店があったから聞き込みに行って来た」
「え。ソレって、単なる聖地巡礼…」
「何ですって?!」
「いいえ、何でもナイわ」
エアリは、相棒のマリレの前でコホンコホンと咳払いw
「事件の翌日、2万ドラー相当の買い物をしたコスプレ女がいたそーょ」
「古い紙を買った女と同じコスプレ?」
「うん。偽物を売ってマネーロンダリングをしてた疑いもアルわ…」
ジッと聞き耳を立ててた捜査本部が、一斉に色めき立つw
「常連なら聞き込みで名前がわかるカモ」
「製本の発注とかしてる可能性もありますね」
「警部!電話番号が割れました!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
神田リバー沿いにある西陽の当たるアパート2F。薄い木製ドアの左右にヲタッキーズのマリレとエアリが張り付く。
「中から水の音がスルわ…」
「トントン…こんにちは!ボーナさん!」
「シャワー中ナンだけど」
ノンキな声とは裏腹にガラス窓の割れる音w
「裏から逃げるつもりだわ!」
マリレとエアリが左右に分かれ、裏へ回るとバスタオルを巻いて逃げる女の後ろ姿が…ダッシュで追うヲタッキーズw
「こりゃ絵になるわ。テリィたんのお喜びパターン」
「どっちがタックルする?」
「脚が遅い方」
エアリとマリレは猛然スパート!角を曲がった女の叫び声w
「車のキーを渡して!さもないと…」
ところが、エアリとマリレが追いつくと、女はマッスル女の2人組に羽交締めにされボコボコに殴られている…全裸でw
「ヲタッキーズです。えっと容疑者逮捕にご協力ありがとう。で、彼女を離して」
「え?メイド服?モノホンのヲタッキーズなの?」
「お願い、助けて。殺される…」
女は息も絶え絶えだ。足元のバスタオルを拾うエアリ。
「あらあら。コスプレのマントが落ちたわょ」
第3章 あの夏、コミケにいた
万世橋の取調室。
「シャワー中だったから、てっきり痴漢だと思って逃げただけょ。直ちに釈放して!」
「貴女、古い紙を大量に買ってたそーね。ソレが"薄くて高い本"のフェイクに使われた紙と同じナンだけど」
「事件とは関係ないわ。私、悪いコトは何もしてナイし」
開き直る女。
「ダメ。公然猥褻罪の現行犯ょ」
「はい?」
「全裸で車泥棒を働いたでしょ?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「マーナ・ボーンは、犯罪者にしては大人しい性格だわ。詐欺ならともかく殺人は無理ポ」
「あら。主犯じゃナイの?でも、一味なのは間違いナイ?」
「YES。でも、恐らく殺してない」
取調べを終え、ラギィに報告するヲタッキーズ。
「そもそも、余り業界にも詳しく無さそうょ」
「すると、彼女の仲間は他に最低2人、必要だわ。1人は"薄くて高い本"の作家。そして、もう1人は殺人犯ね」←
「OK。マーナ・ボーンの仲間を調べてみるわ」
ヲタッキーズの2人は飛び出して逝く。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「…でも、ルイナ。ピカヲの"薄くて高い本"を読み返してみたけど、意外にもモノホンとフェイクの判別って難しそうょ」
「ソレは、スタイルやテクニックを見てるから」
「え?じゃ超天才は、何処を見るワケ?」
ロマナとルイナのアプリを介した対話は、既に1時間近いw
「フラクタル推定法ね。基本は、マンデルブロのフラクタル次元ナンだけど」
「…ソレ何?美味しいの?」
「このインクのにじみ具合をフラクタル次元解析を使って分析スルのょ」
ロマナはココでギブアップ、両手を挙げる。
「OK。モノホンの筆跡や絵って、フェイクほどにじみは無いの。例えば、自分の名前を描くでしょ?ペンの動きは非常に速い。早く流れる動きで紙との接触は最小になる。結果として、にじみは少ない。でも、マネしようとスルと、ペンの動きは、不自然になり遅くなる。動きが遅くなると、紙との接触も長くなり、インクの吸収時間も増えて、にじみが出やすくなる。フラクタル次元で、このにじみの比較が出来るわ」
「で、結果は?」
「夏コミ会場に出回っているモノの中にピカヲ・ロスムが描いたモノは無かった」
「やっぱり?」
肩を落とすロマナ。何を期待していたのか?
「でもね。複数の類似点がアルことがわかった」
「つまり?」
「贋作者は同一人物。つまり、1人の作者がフェイクを乱発してる」
その1人が殺人犯の一味なのか。
「解析を進めた結果、贋作者のキャラが浮かび上がった。何人か候補者リストを教えてくれたら、その中から判別出来ると思う」
「マジ?ソレで事件解決じゃない!"薄くて高い本"の作家なら、みんな多かれ少なかれピカヲ・ロスムの影響受けてるけど…目ぼしい作家をリストにしてみるわ」
「thank you」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「マーナ・ボーンは、典型的な詐欺師だ。強盗仲間とは蔵前橋の重刑務所の中で知り合っている」
「塀の中の友情ね」
「ギャリ・ゴドルは、彼女の用心棒だ。強者だぞ。武装強盗と家宅侵入。計画的な暴行や殺人。確認したら、今は2度の面接不履行で令状が出ている」
ヲタッキーズにレクするイケメン刑事。
マリレとエアリは顔と顔を見合わせる。
「OK、良くわかりました!詳しい調査で助かりました」
「何でも聞いてくれ。このファイルも、可愛いメイドさん限定で見てもらって構わない」
「thank you」
回れ右して、捜査本部の廊下でガールズトークw
「捜索は難航しそうね」
「そうね…で、今のイケメンはどう?好み?」
「骨太でしょ!好みは撫で肩w」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
同時刻。夏コミ会場。ミユリさんに熱弁をふるう僕。
「"薄くて高い本"は、秋葉原が萌える前から人気があった。団塊世代が日本をダメにした"失われた20年"の間、みんな将来に不安を抱えてた。"薄くて高い本"は、欲望は正義と言う希望の象徴だった」
「でも、ソレには責任も伴いますね」
「自己犠牲は、ヒロインの鉄板だ」
ツタンカーメン風のコスプレ美女(ヒロイン?)が僕の前を通り過ぎながらウィンクしたが、ミユリさんに睨まれて退散w
「やぁロマナ。例のリスト、出来た?」
「of course。コレが巨匠のマネが出来そうな作家のリストょ。物語の描き方でも選んでアル。私のお友達の絵も何冊かアルわ」
「あれ?ルイナの本?」
ブースの上に1冊積んである。
「そうょ。サインをもらって来てくれる?絶対、将来価値が出ると思うの」
「あ。ルイナも、昔、自分が買ったロマナの本にサインを欲しがってたな」
「ホント?私の"流線形パンク"に?光栄だわ!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
僕は、夏コミ会場からルイナのラボに直行スル。
「とゆーワケで"流線形パンク"にサインをもらえそうだょ」
「やったー!ところで、さっき雑誌記者から連絡があったのょ。きっと本の出版元と広報が差し向けたんだわ。でも、取材は断ろうと思うの」
「え。いいのか?」
何となく、僕は勿体無いと思う。
「だって…記者さんの先入観がヤバそう。車椅子の変人ナンて描かれたくナイし」
「ソレも超天才の宿命だ、とか逝ってみるテスト。で、贋作者の件だけど、経済面からも考えるべきだと思うんだ。強盗とフェイクがもたらした結果って何だろう?」
「何処かの誰かがフェイクで儲け、モノホンの値打ちは下がった?」
「複数のフェイクに1冊のモノホン。フェイクの価値とモノホンが混ざり合うとどうなる?」
「モノホンだけ、価値は逓減」
「じゃモノホンの価値を下げ、エセ収集家マイラ・スクラの不名誉を願う人物は?」
ルイナはヒラめく。
「次の分析候補がわかったわ!ありがとう、テリィたん!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「…とゆーワケで犯人がわかったの!」
「え。誰なの?」
「理論上、ロマナ・セスマで決まり。疑う余地がナイわ」
モニター画面の中でルイナは断言スル。
さしものラギィ警部もタジタジになる。
モニターを見てる全署員を代表し質問w
「じゃ証拠は?」
「ナイわ。理論上の犯人と言ったでしょ」
「うーん」
全署員が一斉に頭を抱えるが、超天才は怯まない。
「全てが一致したの。モノホンの価値を下げるための単純な強盗じゃなかった。ロマナはマイラを嫌ってる。強盗してゲットしたモノホンをフェイクに混ぜれば、合法的、かつマイラにバレずにモノホンをゲットするコトも可能」
「でも、何でロマナはモノホンをゲットしたいの?一儲けを企む動機がナイわ」
「解析上の動機は、ピカヲに返すつもりで盗んだ、と出た」
ラギィは、内心舌を巻く。ピカヲが寡夫のためにモノホンを欲しがってる事実を、ルイナは方程式から導き出しているw
限られた者しか知らない情報なのにw
「ル、ルイナの説は一理あるカモ」
「はい?証拠は皆無で直感に過ぎません。しっかりしてください、警部」
「でも、捜査本部のみなさんも御自分の勘に頼りますょね?
そもそも"萌え"って直感そのモノでは?」
「ぐっ…でも、SATOのパツキン姐さんは、理論派だろ?」
「みなさん。アインシュタインの相対性理論も、先ず直感が先にあった。私もテリィたんと会った時、先ず恋の予感が先にあって…」
どーして話がソッチへ逝くかなw
「ルイナ。プロファイラーとしての私の意見は必要?」
「of course。ラギィ警部」
「先ず、ロマナに犯罪歴がナイわ。そして、新進気鋭の"薄くて高い本"の作家なの。仮に強盗を働いたとして、失うモノの方が大きいけど」
「ソレが優秀な専門家としての御意見?でも、譲れない」←
「OK。貴女は貴女の直感を信じて」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ルイナとのオンラインは切れた後の捜査本部。
「警部!マーナの相棒で用心棒のギャリは、依然として行方不明です」
「蔵前橋重刑務所を出所スル前の、塀の中のお友達を洗って。秋葉原の何処かに潜んでいるハズょ」
「先ほどのルイナの線は?」
ラギィは腕を組んでウナる。
「未だ方程式だけで、裏付ける証拠がナイわ。もう少し様子を見ましょう」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その夜"潜り酒場"に御帰宅スルと先客だw
「はじめまして。"虚ミケ"記者のランラです。超天才ルイナさんの件で。コレ、取材ですけど」
「へぇ"虚ミケ"に科学欄でも新設されるの?」
「いいえ。でも、ルイナさんは、今や友達づくりの第1人者ですから」
何かを焦る記者特有の危ない目付き。身構える僕←
「録音は困るな。発言も全部ヲフレコだから。念のために話しとくけど、ルイナは"ヲタ友本"を描く前から有名だょ?」
「ソレょソレを描きたいの。彼女の交友関係」
「ルイナは、アキバの何処に逝っても人気がアル」
ランラは、ますます油断のならない目付きになるw
「でも、1番人気のセンセなのに、友人は限られる。ココに集まるヲタクやメイドさんだけ」
カウンターの中と外で僕とミユリさんと顔を見合わせるw
「ルイナは、フランクリンの諺を座右の銘にしてる。曰く"全てに礼儀正しくあれ。持つべき友は慎重に"。記者さんはルイナの友達になれナイかもな」←
「ソレは、つまり貴方達は友達というコトですか?私、こう見えても高校ではヲタクで引きこもりだったのに」
こりゃダメだ。時間の無駄カモw
「彼女は世間に関心は強いけど、それを数やパターンで考える人だ。その感性を誰と分かち合えと?」
「学界のヲタク?」
「ルイナは7才で大学に入った。だから、大人になるまで友達はいなかった。なのに貴女よりも、ヲタクに優しくて思いやりがある。なぁコレってスゴいコトなんだょ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「こんにちわ、ピカヲ」
「いらっしゃい、ロマナ。ルイナも来てるのょ」
「え。」
ロマナが大きな紙袋を抱え、ピカヲの古いマンションを訪ねると、テーブルに置かれたスマホスタンドにルイナの画像。
「こんにちわ、ロマナ」
「ルイナ?…ピカヲ。私、ルイナとはお友達なのょ」
「ソレは心強いわ。ルイナは"セーラームーンと機関銃"のアッシュカンを探す協力をしてくれるの」
「微力ですけど」
ルイナは、スマホ画像の中で謙遜←
「ソンなコト無いわ。ところで…ルイナは、何でココに"いる"の?」
「データが足りなくて…というのは表向き。実は"美少女太陽発電ソーラームーン"の伝説の原作者に会いたくて」
「若いヲタク女子が2人がかりで反則ホメ殺しね?全く"薄くて高い本"ナンて、昔は少し稼げれば、それで良かったモノだったのに」
老いたピカヲ・ロスムは、明らかに舞い上がってるw
「ピカヲ。貴女はヲタクに新しい水平線をもたらしたパイオニアなの」
「"薄くて高い本"で?そんな、私は…」
「とにかく、コレを食べて長生きしてください」
ロマナが紙袋から取り出すのは食料品だ。レンチンご飯にインスタント味噌汁、レトルトカレー…コロナ用の援助物資?
「ありがとう。ロマナ、何よりょ!ねぇルイナ、見て!いつも何かと持って来てくれるの!助かるわ」
「コロナになったと申請スルと送られて来ルンです。無症状の人が食べるより、ピカヲが食べる方が有意義ょ」
「ロマナがいなけりゃ、今頃は夫婦揃って飢えて孤独死ょ。色々アルだろうに、いつも尽くしてくれて感謝するわ。ありがとう、ロマナ・セスマ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
同時刻。万世橋の捜査本部。
「警部!女詐欺師マーナ・ボーンの相棒兼用心棒のギャリ・ゴドルの件で、新情報です!」
「実は"薄くて高い本"ヲタクだった、とか?」
「な、なぜソレを?」
若い部下を前に得意顔のラギィ警部w
「蔵前橋の重刑務所にロマナ・セスマのヲタクがいて、彼女の作品に熱心にコメントしてる、との情報が入ったの」
「ソレでつながりました!ギャリは、1年前からロマナに蔵前橋重刑務所からメールを送ってます。ただ、新進気鋭のロマナへのファンレターは、年間1000通もあって…」
「その内、受刑者からのファンレターは?さらに、マーナ・ボーンとの関係者に絞れば?さぁ直ぐに当たって頂戴!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
さらに同時刻。夏コミ会場は一触即発だw
「マイラ・スクラ?ビタミンCの摂り過ぎね。あ、ビタミンCのCは、カオスのCだから!」
ブース前に集まったヲタクを前にロマナが一席ぶつと、ヲタク達から乾いた笑い声が上がる。
正面のブースでファンにサインしていたマイラ・スクラが顔を上げて、思い切り睨みつけるw
「だって、怪しいと思わない?激レア本を持ってると見せびらかしておいて、鑑定には応じナイ。きっとフェイクを掴まされたと知っているのね」
「待って!アレはフェイクじゃない!私だって"薄くて高い本"の作家ょ?見る目はあるわ!」
「そう思うなら、ピカヲに返せば?貴女は、ピカヲへの返却を拒み、彼女が死ぬのを待っている。ヲタクの風上にも置けないわ!」
集まったヲタクから拍手が湧く。同調の声が多数だw
「アンタこそ何ょ!1発屋の"流線形パンク"野郎じゃないの!」
「乙女ょ!野郎じゃナイわ。アンタこそ"宇宙鈍感トマト"って何?冥王星の内部海で沈没?」
「言ったわね?キィー!」
「クソばばあ!」
口喧嘩レベルに落ちた2人を輪になり囃し立てるヲタク達←
「あのね"薄くて高い本"が盗まれて、人が1人死んだの。冗談にもほどがあるわ」
「OK。この場を治める良い案がアルわ」
「何ょ?」
ハマったなとほくそ笑むロマナw
「みんな!夏コミ最終日の明日は恒例のオークションがアルわ。夏コミの最後を飾る重大イベントょ。ねぇ聞いて!"セーラームーンと機関銃"のフェイクを掴まされたヲタクは全員、ソレをオークションに出品しない?フェイクだけど話題の品ょ。コレだけ集まれば価値が出るわ。通常、出品者には審査がアルけど、ソレは私がオークショニアに交渉してナシにしてもらうわ。明日を逃せば、フェイクは全て二束三文。何しろフェイクなんだから。で、収益はフェイクを掴まされた者とピカヲ・ロスムとで分かち合うの。今、リアルではお洒落なZ世代がショッピングに飽きて、アートに投資してる。私達ヲタクも消費から投資へお金を回そ?ココはタダのオークション会場じゃない。投資的なリセール市場ょ。この2022年の夏コミケは"薄くて高い本"の歴史に名を残す。私達は、胸を張って言える。あの夏、私はコミケにいたと。…ねぇ私は買うわ、アートに投資スル。みんなは?」
一斉に拍手が沸き起こる。口笛、歓声。しかし、マイラは…
「待って!私には何の得がアルの?」
「馬鹿野郎、引っ込め!「金の亡者!」「リア充死ね!」
「勘違いしないで!私は被害者…」
マイラの叫びはブーイングの嵐にかき消されるw
第4章 ブラトップと相対性理論
「見事なプレゼンテーションだったわ」
ブースに戻ったロマナにルイナがビデオ通話。
「そぉ?ワザとらしくなかった?」
「そんなコトないわ」
「で、私に何か御用かしら?」
ルイナは一呼吸おく。
「貴女に、贋作者がわかりそうだと知らせに来たの」
「数理解析で割り出せたの?」
「だから、ナビエ・ストークス方程式において…」
珍しくロマナが遮るw
「待って。貴女のは所詮、確率でしょ?確率は物的証拠にはならないわ」
「数理環境が整えば、ソレは確信に変わるの」
「とにかく、仮に誰かが関係してるとしても、証拠がなきゃ犯罪には結びつかない。証明も不可能ょ」
スマホ画面の中でニコリと笑うルイナ。
「確かに貴女の言う通り。ところで、なぜロマナは証拠が無いと思うの?事件に加担しているワケでもないのに」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
同時刻。万世橋の捜査本部。
「警部!強盗が使用したのは9ミリ弾で、特別養護老人ホーム"イスカンダル"にいる退職警官から盗んだ銃から発射されたモノとわかりました」
「だから?」
「警部。"イスカンダル"には、マーナ・ボーンの相棒で用心棒のギャリ・ゴドルの母親が入所してルンです」
ポンと膝を叩くラギィ。
「同じ"特養"なら、母親のお見舞いがてら、銃を盗むコトが出来たりして」
「恐らく、ソレ以外にも"特養"の使い途はアリます。再び悪の道に戻りたがる前科者が、仲間に連絡せズ、名前も使わズに身を寄せられる場所と言えば…」
「母親の"特養"?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
神田山本町にある特別養護老人ホーム"イスカンダル"。
「ギャリ・ゴドルさんのお母さん?」
「アンタは?」
「万世橋警察署です。ご同行を…痛っ!」
車椅子の老婆に優しく声をかけた警官は杖で殴り倒されるw
「ギャリ!おまわりさんだょ!早くお逃げ!」
マスクなのに、ヤタラと通る声で叫ぶ老婆、倒れる警官、ソレを踏み越え、短機関銃を構え"特養"に飛び込む警官隊!
「ゴドルさん!杖を振り回さないで!」
「万世橋警察署!万世橋警察署!」
「ギャリ・ゴドル!御用だっ!」
ギャリは拳銃を抜き"特養"の中を逃げ回る!車椅子や杖をつく老人とすれ違いながら追い詰める警官隊。銃撃の応酬w
「フリーズ!ギャリ・ゴドル!」
「くたばりやがれ!」
「やめろ!」
ギャリは自爆ベストを爆発させるw
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「ラギィ警部!自爆したギャリは、強盗した"セーラームーンと機関銃"のアッシュカンを秘匿してました」
「それで?」
「モノホンではありませんでした。またしてもフェイク」
さしものラギィもウンザリ気味だ。
「全く。いったい誰がこんなにタクサンのフェイクを…」
「同じ人物が乱発してるのでしょうか?」
「結局、マイラ・スクラから盗まれたのはフェイクってコトなのかしら」
ラギィのスマホからルイナがつぶやく。
「または、みんなにそう思わせたいのね、誰かが」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「またルイナのバッシングをしに来た?出禁になるょ?」
「いいえ。私は知りたいだけです。何にでも建前として科学を持ち出し、小難しく問題を解決しようとスル試みの裏側を」
「うーんルイナの科学は、もっと経験的で、決して机上の学問じゃナイと思うょ」
ランラが"潜り酒場"に御帰宅。
ミユリさんは所用で出掛けてるw
「友情とか…人の感情に方程式を立てたがる性癖には違和感を覚えます」
「そこに至るまでが複雑ナンだ。どこから話す?」
「出来れば…全てを」
僕の苦手な、勝ち気な女の挑むような眼差しw
「きっと幼い頃から不器用ナンだ。でも、科学に萌え、科学を信じて育った。友達を作る時に依存スルのも当然だ」
「ソレで?」
「恐らく…全然ダメ。友達は出来なかった」←
勝手な推測だが、ランラにはウケるw
「じゃ何で今頃になって本を出したの?ヘタをすれば、逆の意味で有名になる可能性さえアルのに」
「正直、ソコまで考えてないのさ」
「つまり?」
「ゲーム理論の延長ナンだ。単に、人々の糧になればと願ってる。多分ソレだけだ」
ランラは、少し面食らったようだ。
「つまり…幅広くヲタクのために描きたかったと?」
「いいや。リアルのためにさ」
「リアルのため?」
「"ヲタクは楽しい"ってコトを知らせたかったんだ」←
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「ルイナ、来たわょ。なぁに?」
「あ。ムーンライトセレナーダー。あら?新コスチューム?カワイイ!奇術師の助手みたい」
「うーんイマイチか。やっぱり」
ムーンライトセレナーダーは、僕の推しミユリさんがスーパーヒロインに変身した姿ナンだけど、最近コスプレを変更w
というのも宿敵"アキバキラー"との闘いで、以前のコスプレの弱点が露見、集中攻撃を受けて敗北してしまったのだ。
「とゆーワケでヘソ出しセパレートタイプをヤメたら手品師のアシスタントみたいな、このコスプレに…」
「うーんメイド服にハイレグって…どー見てもテリィたんの願望そのママって感じ」
「待って!テリィ様は…ホラ、男って所詮はビキニが好きだから」←
「へぇ。テリィたんってビキニなのか…」
諸嬢の様々な思惑が交錯スル中、とりあえず、ムーンライトセレナーダーは溜め息1つでアッサリと吹っ切る。
因みに、新しいコスプレはガーリーなメイド服ナンだけど、下半身は黒のハイレグ水着なんだぜ、ブラボー!
「何か発見があったの?」
「うん。普通、贋作者ってフェイクがフェイクだとバレないコトを望むわょね?でも、ロマナは違った」
「ロマナ?"薄くて高い本"の新進気鋭作家"ロマナ・セスマ"のコト?」
「YES。ある時点でモノホンであるコトを暴露したがってる。理由はわからナイけど、方程式を解くとそーなる。で、彼女はフェイクには印をつけた」
「印?」
ルイナはスクリーンに漫画絵を映し出す。
「7ページのソーラームーンが腹パンチされるシーンょ。可変長のこの線が見える?よく見ると、実はコレ表現コードになってる。いわゆるバーコードね。線の長さが文字と数字を表してて解読スルと、コレは"マイラ・スクラ37"」
「なぜマイラの名前を?」
「多分ロマナのタチの悪い冗談ね」
考え込むムーンライトセレナーダー。
「良く調べたわね。で、ロマナはどー出るかしら」
「姉様。もうすぐ夏コミ名物のコスプレオークションが始まるわ。ロマナは、自分がバラ撒いたフェイクが一堂に会するよう、既に仕掛けを終えてる」
「まさか大量のフェイクに混ざってモノホンの取引を?」
ルイナは車椅子をムーンライトセレナーダーの方に引き寄せて…メイド水着にゴスロリ車椅子。少し厨二なアキバ風景←
「オークション理論で言う平衡と対称。他の入札者は知らなくて、ロマナだけが知ってる事実が存在スル」
「モノホンがオークションに出品されるコトね?」
「YES。情報の非対称性は、入札に反映されるわ」
ムーンライトセレナーダーは、頭をヒネる。
「ココまでルイナに疑われていると知れば、ロマナはオークションには、代理のコスプレイヤーを立てるカモしれないわね」
「でね。ロマナの代理にエリスさんが出て来るとの情報がアルの」
「え。とゆーコトは…」
アキバキラーは、ムーンライトセレナーダーが初めて敗北を喫したスーパーヒロインだ。そして…
アキバキラーはミユリさんの前の僕の推し(前推しw)エリスがスーパーヒロインに変身した姿だ←
「そして、恐らくアキバキラーがモノホンを競り落とす。この場合、恐らくジャンプ入札となるわ」
「ジャンプ入札?」
「つまり、必要最小額よりも大きな額での入札が行われる」
「ソレでロマナに何の得がアルの?」
ルイナのレクチャー。
「自転車競技をイメージして。通常、先頭に出るのは不利なの。だから、選手は1群となり、先頭は常に入れ替わるわ。でも、最初から大きく引き離して勝つやり方もアルわ。ジャンプ入札でも、状況を一変させ、早く脱落させたり、気勢を削ぐコトを狙うコトが出来る」
「つまり…エリスさんは高額で入札して来るワケね?で、オークション前に展示されるフェイク群の中から、どーやってモノホンを見分けるワケ?」
「モノホンは、7ページのソーラームーンが腹パンチされるKOシーンに可変長の線がナイのょ姉様」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
夏コミ最終日。恒例のコスプレオークション会場。競売人、出品者、応札者ほか全員がコスプレ参加のオークションだ。
アキバキラーは、次元波動帯からのアキバ全消去を謀る悪のヒロインだが、みんなコスプレだと思い、まるで疑わない。
ムーンライトセレナーダーも然り←
「あら。ミユリさん、ラッツは元気?」
「テリィ様のコトなら、とてもお元気ょ。多分"推し"との関係が極めて良いせいね」
「…貴女、また性懲りも無く、私の腹パンチを受けに来たの?」
ホントは両方ともモノホンなんだが、ムーンライトセレナーダーとアキバキラーが、揃って応札前の値踏みをしているw
「ミユリ、私の依頼人を捕まえにきたの?」
「いいえ。話題の品を落札に来ただけょ。そうそう。ココに並んでるのは大部分フェイクなんだけど、この中にモノホンが紛れてるらしいの。見分け方、知ってる?」
「あら、ナンのコトかしら。全てフェイクらしいわょ。貴女、何をそんなに血眼になってるの?」
「別に」←
言葉とは裏腹に、ズラリ並ぶアクリルケース入りの"セーラームーンと機関銃"のフェイクの中で必死に"探す"2人w
「OK!では、ただ今より夏コミ最終日恒例のコスプレオークションを始めます!今回は、話題の"セーラームーンと機関銃"のアッシュカンが多数出品されています。なお、収益は出品者と原作者のピカヲ・ロスム氏に寄付されます!」
女子アナ浴衣バージョンのコスプレでオークショニアが登場し挨拶をスルと様々なコスプレをした客席から拍手が湧く。
「では、1番"セーラームーンと機関銃"のアッシュカン。恐らく贋作です。開始は5万円から。5万5000円が出ました。6万円が出た。6万5000円は?はい、出ました。越えなければ6万5000円で落札です…はい、落札!続いて商品番号2番…」
ネコミミのアシスタントが1番の"セーラームーンと機関銃"入りのアクリルケースに"sold out"のフダを付ける。
「…では、6万5000円で落札。続いて商品番号5番。5万5000円からのスタートです。7万が出ました。7万5000?落札です…商品番号9番、海外からのリモート応札があり10万円からスタートです…以上なければ落札とします。え?50万?」
拍手、拍手、また拍手が湧く。御祝儀相場は天井知らズw
「…商品番号11番"セーラームーンと機関銃"。恐らくコレも贋作です。スタートは70万円からです。70万5000は?はい、70万5000。80万はないか?」
「200万」
「始まった…」
コスプレ臭いけど実はモノホンのアキバキラーが動く。
見えない依頼人の指し値にオークション会場どよめく。
「205万出た。210万はナイか?」
「300万」
「300万です。310万、ないか?」
ムーンライトセレナーダーが動く。
「500万」
「550万!」
「800万」
春麗コスプレの華僑女子が唇を噛む。
アキバキラーが春麗にトドメを刺す。
「1000万」
「1000万が出ました!1050万は?」
「1500万」
さらに値を上げ勝ち誇るエリス。
ところで、アッサリ涼しい顔で…
「2000万」
ムーンライトセレナーダーのコスプレっぽいけど、実はモノホンのミユリさんがアッサリ引き離す。
アキバキラーは黒のヘソ出しセパレートだけど、ガックリ首を垂れる。今度は唇を噛むのは彼女だw
「2000万です。以上は?では2000万ドラーで、ソチラのムーンライトセレナーダーのコスプレ女子が落札です!ビッグディール!」
会場は、割れんばかりの大拍手+大歓声だ。口笛!
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
オークション会場の外でヲタ芸の練習しながらサイリウムを振り回してたら、人混みに紛れロマナ・セスマが出て来る。
「テリィたん」
「ロマナ。ルイナが話がアルって」
「ルイナが?」
僕は、ルイナが画像に出たるスマホを出す。
「ルイナ…貴女は知ってたのね。数理解析の勝利か」
「マイラ・スクラが手に入れた"セーラームーンと機関銃"はモノホンだった。ソレを貴女は蔵前橋重刑務所にいた貴女のファンに盗ませた」
「だって…あの"セーラームーンと機関銃"は、ピカヲ・ロスムのモノだから。私のモノでもナイ。ましてや、マイラ・スクラなどもっての外だわ」
会場の搬出口から、音波銃の護送兵に守られ、スーパーヒロイン用拘束具を付けられたアキバキラーが連行されて逝く。
「でもね、ロマナ。今回は犠牲者が出てしまったの」
「気の毒だけど仕方ないわ。全てピカヲ・ロスムを助けるためだモノ。ねぇお願い。あのムーンライトセレナーダーのコスプレ女子に"セーラームーンと機関銃"のアッシュカンをピカヲに渡すよう伝えて」
「ソレは出来ないわ。ソレに、あのコスプレイヤーはモノホンょ。貴女は、もっとモノホンを見分ける目を持って」
がっくりと首を垂れるロマナ。
その背後からラギィが近づく。
「ロマナ・セスマ。聞きたいコトがアルの。手を後ろに」
手錠をかける。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
翌日。捜査本部の取調室。ロマナを取り調べるラギィ。
「マーナ・ボーンとギャリ・ゴドルの2人は、私のヲタクです。獄中で作品を読んでくれてたそうです。何回かメールをもらいました」
「オークションには、どうやって"セーラームーンと機関銃"のモノホンを紛れ込ませたの?」
「私は、ピカヲ・ロスムの専門家です。あの一連の"薄くて高い本"のフェイク鑑定を全員から頼まれてた。その作業中に、モノホンを紛れ込ませるコトは容易かった」
もはや全落ちだw
「ソレから?」
「最後は、ピカヲに返そうと思ってました。だから、半年位したらモノホンだと分かったコトにしようと思いました。そのために作品に印をつけました」
「貴女ともう少しお話ししたいって」
ラギィは、スマホを取り出してロマナに向ける。
「あら。ルイナ、今度は私を逃してくれるの?」
「いいえ」
「やっぱり無理ょね」
ロマナは、寂しげに笑う。
「モノホンがマイラの手に戻ったのは聞いた?」
「ふーん思った通りだわ」
「そして、彼女はピカヲに返却した」
ソレは初耳で、ロマナは驚く。
「え。何で?」
「確かに1部からは叩かれてた」
「でも、彼女はヘッチャラでしょ?」
ロマナは、身を乗り出してくる。
「確かに。でも、ピカヲに返却するコトで彼女は名声を得た。気を良くしてる。まぁ宣伝を兼ねての売名行為だと言う人もいるけど…」
「新作?彼女が新作を描いたの?」
「YES。"宇宙鈍感トマト2 愛の戦死"」
「…ソレでこそスクラだわ」
ロマナは、ふふふと笑う。
「ふーん。でも、返したんだ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その夜の"潜り酒場"。
「ねぇ今宵、アフターしょ?タマにはゴハンしましょ?」
カウンター越しにミユリさんが誘ってる。
相手はヲタッキーズのエアリとマリレだ。
「ほら。最近はお仕事ばかりだったから」
「姉様、最近は、ですか?」
「ソレ初耳ですょ」
突っ込まれるミユリさん。ヲタッキーズは、ミユリさん率いるスーパーヒロイン集団。エアリとマリレはいわば部下だw
「あ。でも、マリレには、もうすぐお客様が…」
エアリがヒヤかすと背の高い白人男性が出現w
「フランス人だけどヲタク。去年のJapan EXPOで知り合って、冗談で声かけたらホントに来日しちゃった。英語に訛りはアルけど学位もアリ、ソルボンヌでは体操選手。今はアクロバットをしているの」
「プロの?まさか、ストリッパー?」
「失礼ね。シルクドソレイユ」
答えも聞かズ、ウキウキ話しかけに逝くマリレ。
呆気に取られ、ミユリさんはキョトンとしてるw
「あらあら。エアリ、どーやら2人だけになりそうょ」
「私ならOKですょ姉様」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
結局、マリレにも逃げられw週末も"潜り酒場"に御帰宅←
「正直"薄くて高い本"って余り縁が無いンだけど、描くのを見るのは初めだな!」
「こーゆー流れは楽しいわ。昭和バブルの頃を思い出す。あの頃マグナ・スティの名前で描いてた」
「同じポーズ、同じ顔で立つのに疲れました!」
僕はミユリさん、じゃなかった、ムーンライトセレナーダーの新コスプレバージョンと背中合わせに立ってポージングw
「もうちょっと。鉛筆画の下書きだから!」
「音波銃を持ってる方がカッコ良くないか?サイリウム持ってポーズって何かヲタ活臭いンですけど」
「お似合いょ…あら?テリィたんの顎って特徴あったのね」
スケッチするのは"薄くて高い本"の巨匠ピカヲ・ロスムw
「巨匠!待ってくれ。コレって発表されナイょね?」
「え。何で?ヒッピー時代の私を見てるよーだわ。宿命を背負うスーパーヒロインと腰巾着のヲタク。あぁインスピレーションが止まらないわ!」
「止まれ!そのインスピレーション、STOP!」
その時、うまい言い訳を思いつく。天才だょ僕←
「思い出した。ルイナ、聞いてる?ランラの出版社から何か来てたぞ。"虚ミケ"のゲラ刷りだ」
「見たくないわ。どうせ変人扱いでしょ?」
「ソンなコトないさ。読むょ…"ヲタクのテリィたんは語る。ルイナと僕は、今でこそ仲は良いが、彼女がアキバに来たての頃は違った…"」
「あら。ずいぶん控え目なのね」
「"…血の絆より強いモノは、仲間となったヲタ友の絆だ。ルイナはアキバのヲタ友なのだ"」
御屋敷がドヨメく。みんなが顔を見合わせ、うなずき合う。
「テリィ様。いつの間にこんなお話しを?」
「僕だって雑誌に載りたいょ」←
「確かに」
大笑いになる。巨匠ピカヲが口を挟む。
「本は忘れられ、文字は変わり、やがて、消え逝く。その点"薄くて高い本"に描かれた"絵"は永遠ょ。さぁデッサンを続けましょう。ムーンライトセレナーダー、テリィたん。さっきのポーズをとって」
僕は、こっそりサイリウムを音波銃に持ち替える。
ムーンライトセレナーダーと背中合わせでポーズ。
「エリスを捕まえる時は、腹パンチでお返ししたの?」
「いいえ。ストマッククローで仕留めました」
「え。ソレって女子的に屈辱技?」
恐ろしい話だ。僕は、音波銃を握りしめる。
で、その時、チラッと見えてしまったんだ。
ルイナがゴスロリのビキニで車椅子型のロケットで宇宙を飛んでるデッサン画w
こりゃあり得ないょな。だってブラトップにはE=MC2って描いてあるンだぜ?
おしまい
今回は、海外ドラマによく登場する"コミケ"をテーマに"薄くて高い本"の新進気鋭の作家、過去に生きる巨匠、お金儲けに転んだ同人誌コレクター、塀の中の同人誌ヲタクとその用心棒、ヲタ友の本質に迫る記者、盗まれたアッシュカンを追う超天才やヲタッキーズ、敏腕警部などが登場しました。
さらに、ヒロインの前カノへのリベンジ、リアルと違うヲタ友の本質などもサイドストーリー的に描いてみました。
海外ドラマでよく舞台となるニューヨークの街並みを、第7波コロナの最中、夏コミを迎える秋葉原に当てはめて展開してみました。
秋葉原を訪れる全ての人類が幸せになりますように。




