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なんとか立ち直ったクライヴ王子が続ける。
「まだだジャクリーン。貴様には聖女候補傷害の罪を償ってもらうぞ!」
「はて?よく分かりませんので詳細をご教示くださいませ。」
「いいだろう、よく聞け。
まずひとつ目、聖女候補を中庭の噴水に突き落とすよう取り巻きに指示した件。
ふたつ目、聖女候補を体育倉庫に一晩中閉じ込めるよう取り巻きに指示した件。
みっつ目、聖女候補を暴漢に襲わせるよう画策した件。
最後に聖女候補を自ら階段から突き落とした件だ。
どうだ?申し開きをしてみせよ!出来るものならな!」
「中庭の噴水…6月13日午後2時11分頃発生した傷害事件ですね。
昨日、犯人の某男爵家令嬢が警らに自首しております。
その日のうちに逮捕起訴されそのまま裁判。
しかし聖女候補のご両親と示談が成立、和解したことにより解決しました。
この件に私が微塵も関わっていないことは証言として公式に記録されております。
体育倉庫…7月6日午後5時24分から7時14分まで聖女候補を閉じ込めたと。
これも昨日、自首した某子爵家令嬢がおりました。
経過も結果も先程と同様ですので割愛します。
暴漢に襲わせる…9月10日発生の誘拐未遂事件ですね。
この件は残念ながら示談とはならず実刑は免れたとはいえ前科がついてしまったようですね。
あ、これも某男爵家令嬢が自首、私が無関係であることの証明も含めてほぼ同様です。
最後に階段の件ですが、こちらをご覧くださいませ。」
と、講堂の中空に魔法のスクリーンを従者ゴードンが広げると公爵家令嬢が歩いている場面が映しだされた。
「こちらは最新鋭の極小記録魔道具を国軍研究所よりお借りして私の侍女が試験運用していたものです。
国家機密にあたりますので皆さま他言無用でお願いいたします。」
校舎2階おどり場に差しかかったところで数メートル先の黒髪の女生徒がひとりで足をもつれさせ、階段を落下していった様子が映っていた。
公爵家令嬢は一瞥後、そのまま歩みを進めていた。
「クライヴ王子殿下、聖女候補が私を名指して突き落としたと証言なさったのですか?」
「う、え、ど、どーだったかなー?ア、アハハッ」
「笑って誤魔化さないでくださいませ。」