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騒動もひと段落したある日の昼下がり、あの日の朝のように完璧な所作でお茶を嗜みつつ、ジャクリーンは侍女に問う。
「クロエ、あの時の紳士はどなたかしら?」
「アーチャー子爵家三男、ティモシー様でございます。
貴族学園2年、成績は中の上といったところですが商工業に関する科目に限り突出しております。
おそらくは将来を商人として見定めているのかと。
同学年の子爵家令嬢とのお付き合いがございますが爵位のないままの婚姻は難しいでしょう。
まだ諦めてはいないようですがお相手に将来を約束出来ない状況かと。
自領での商いで少し財を得たようですが自らの学費に費やしてしまわれたようで。」
「ありがとう。短い間によく調べたわね。
商人ね。決断も早くブレない、行動力も人一倍と。
なかなか誠実そうな人。
クロエも少し私情が混じるほどに絆されたようだし。」
「恐縮にございます。」
「会ってみたいわね。」
「セッティングいたしますか?」
「もう少し調べてからね。お願い出来るかしら?」
「お任せください。」
「ただ会うわけにはいかないものね。
会うとなれば婚姻前提でしょう。
貧乏子爵家の三男なんて理想的じゃない。
形だけか本当の夫たり得るのかは別にして…ね?」
氷が溶ける日は近い。




