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その15 対面

 北端の体育館から渡り廊下で一直線につながっている南端の校舎、教養塔。

 ほとんど不良に近い式持たちが占拠していたのに、「教養」という言葉ついているあたり滑稽だが、桜子によると、元々ここを校舎として使っていた学校がそう呼んでいたので、別段意識せずに教養塔という名をそのまま使うことにしたらしい。

 ソフィアと敵対していた番長派、つまり稲田の仲間たちは、本郷家が北東の校舎を制圧した際、物凄い速度で逃げて来た稲田を目撃して、その日のうちにほとんどが校舎から逃走、もしくは本郷家に保護され、「強制帰宅」させられたらしい。

 現在では教養塔以外の校舎全てを制圧した本郷家は、四月から白妙純心学園を創立させるべく、今現在も校舎の改修を進めている。

 教養塔のすぐ北隣にある校舎内でも、本郷家の改修班が動き回っている。屋上からロープを吊って、外壁を補習している作業員の姿もあった。

 教養塔に留まることしかできなくなった番長派の残党も、敗北を悟ったのかこの数日間で少しずつ姿を消し、今残っているのはカラスと稲田だけのようだ。

 その教養塔と渡り廊下が接する位置に今、優作たちは立っていた。

 ソフィアが心配なのだろう、桜子はとりわけ不安そうな表情をしていた。

 麻琴と綾乃も難しい顔をしていたが、優作、麻琴、桜子の服装に限っては緊張感がなかった。

 いや、逆に言えば正装と言えなくもないのだが、麻琴が「優作、あれを着よう! お嬢様と執事のやつ!」と言い出し、あの執事風戦闘服を着る羽目になった。桜子は元々メイド服だった。

 言われた直後こそ断固拒否したが、そもそもこの服装は麻琴のものも含め「戦闘服」なので、戦闘になった場合は学ランよりこちらの方が動きやすい。それに、片眼鏡もこの服装の方が違和感がない。

 ダメ押しで麻琴に「優作とつながりが欲しいんだ!」とまで言われてしまったら、もう拒否できなくなってしまった。

「そんな程度のつながりでいいのかお前は……」とは言わないでおいた。

 腕時計に目をやると、時刻は十五時二十五分だった。

「五分前だ」

 服装はともかく、その場に居た全員の緊張が最高まで高まった気がしたが。

「優作、そこは懐中時計の方が執事っぽいぞ」

 麻琴だけは緊張感がなかった。

 せっかくお嬢様ルックなのだから、言葉遣いもお嬢様にすればいいものを。まあ、実際お嬢様には違いないのだが。

「あっはっはっはっは! なんや! さっきはメイドだけかと思ったら、今度はお嬢様と執事まで登場しとる! いや、さすが本郷家の皆さんや」

 指をさし、爆笑しながらゆらゆらと現れたカラスの笑い声も麻琴以上に緊張感が皆無だったが、カラスを目にした瞬間、こちらは全員が身構えた。

「いややな、まだ何もせえへんて。ほんじゃ、一名様ご案内や。他の人は悪いけどここで待っててな。何かトラブルでも起こらん限り、こっち来たらあかんよ?」

 まるで「トラブルが起こりますよ」とでも言っているかのような口調だった。

 優作は教養塔の二階をカラスに続いて、歩く。

 その後ろ姿。

 麻琴が言った通り、確かにカラスの右腕は、左手よりも長かった。

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