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噂のエル・ドラド 20

なるほど。

職員さんたちも休憩に入るらしい。


「ああ、書物はそのままおいといて大丈夫です。参りましょう。」


ジランくんに導かれ、図書館の外に出た。

今日は(いち)は立っていないけれど、いくつかの出店はあった。


「どこか、決まったところへ行くの?」

「はい。伯父上が手配しています。」


さすが宰相。

抜かりがない。


……すっかり忘れてた……というか、何も考えてなかった自分に苦笑を禁じ得なかった。



***


中央図書館の前の大通りを南に下がり、川を越える。

川沿いに西に入ったところに、かわいいお店があった。

店舗の前に張り出したテラスに並んだかわいいテーブルセットに見とれたけれど、ジランくんは素通りした。


ちょっと残念。

後ろ髪を引かれて振り返ったところをジランくんに見られてしまったらしい。


「……すみません。警備の問題で、今回はあのお店は見合わせました。……やっぱり女性は、ああいった雰囲気のお店がお好きですよね。」

「そんな!ごめんなさい。つい見ちゃった。……イロイロ考えてくださってるのに、……ごめんなさい。」


私のせいで迷惑をかけてるのに、ジランくんに謝らせてしまった。


「フィズさまが謝ることではありませんよ。……落ち着いたら、あんな風に開放的なお店にも参りましょうね。今日のところは、こちらへ、どうぞ。」


ジランくんが笑顔で案内してくれたのは、高い塀にぐるりと囲まれたお屋敷だった。


「……お店……じゃないみたい……。」

「一応お店ですよ。お食事したり宿泊したり。……隠れ家的な?」


……なるほど。

ごく一部の上流階級の人々が内緒の話をすることのできる場所ということらしい。


ジランくんが呼び鈴を鳴らすと、内側から重たそうな門がゆっくりと開いた。


「いらっしゃいませ。」

「こんにちは。先生はもう、いらしてますか?」

「はい。お庭をご覧になってます。」

「では、私たちも、庭に案内していただけますか?」


ジランくんは出迎えた立派な執事然とした大人の男性と、慣れた様子で対応していた。

ほんと、できた子だわ……。

感心して、2人の背中を追った。


……えーと、先生ということは、ジランくんより2つ年上の少年がいるのよね?

宰相の師の弟子……だったっけ。

どんな子かしら。

わくわくして、お庭へと進んだ。


そこは、一足早く、春だった。

小ぶりだけど小さな白い花が満開の木々の下に、素敵な白いテーブルセットが準備されていた。


「素敵……。」


思わず両手を胸の前で組んでいた。


「本当だ。さっきのお店より夢々しいですね。」


ジランくんは苦笑気味だった。


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