噂のエル・ドラド 19
シーシアさまにとって、異母姉妹ですものね。
ショックはいかばかりだったことか……。
考えると、つらくなった。
シーシアさまに似てらしたのかしら……。
「……綺麗なおかただったのでしょうね……。」
ジランくんの整ったお顔を見たら、そんな言葉が出た。
「元気な人でした。いつも私の剣の稽古につき合ってくれました。」
そう言って、ジランくんは苦笑した。
「私のほうがとっくに強くなってからも、相手をしようとしてくれて……却って大変でしたけどね。」
「まあ。素敵なお母さまでしたのね。」
美醜を尋ねた自分が恥ずかしくなるような答えだった。
いい子だなあ……ほんと。
「さあ、行きましょう!とても読み切れないほどの書物が待ってますよ。」
ジランくんはそう言って、私に手を差し伸べた。
小さくても紳士!
かっこいい!
「……ありがとう。」
笑顔でエスコートされて、図書館へと足を踏み入れた。
***
初めて入った中央図書館は、想像以上に大きくてすばらしかった。
旧カピトーリに伝わって来た書物のみならず、平定してきた国々の書物も運び込んで来たらしい。
「すごい……すごい……すごい……」
見たこともない書物の背表紙が整列した書架を、私はぐるぐると回った。
「書架に並んでる書物は、わりと一般的なものばかりなので、もっと詳しい書物が欲しいときには、こちらの図書カードで探して、番号を職員さんに伝えると、奥の書庫から持ってきてくれますので。……フィズさま?そんなに慌てなくても、書物は逃げませんよ。」
「書物は逃げなくっても、次にいつこちらに来られるかわかりませんもの!」
つい声が大きくなってしまって、慌てて口を押さえた。
ジランくんはキョトンとして、それからくすくすと笑った。
「……ほんとに……かわいらしいかたですね。フィズさま。子供の私より子供みたいですよ。」
……一応大人で、バツイチで、経産婦なんだけどね……はは。
さすがに恥ずかしくなったので、駆けずり回るのはやめて、蔵書カードをひたすら繰った。
私が興味のおもむくままに選んだ書物の番号を、ジランくんが職員さんに伝えて持ってきてもらう。
それ以外にも、宰相オススメの産業関係の書物もあるし……気がついたら、私の席には書物の塔が林立していた。
大変大変。
どこまで読めるかな?
とりあえず、趣味の文学モノは置いといて、産業関係の書物を片っ端から読みふける。
ジランくんもまた、お目当ての書物があったらしく、私たちは隣の席で、それぞれの世界に没頭した。
あっという間に正午のチャイムが鳴った。
「お昼ご飯を食べに行きましょう。」
ジランくんにそう誘われ、キョロキョロした。




