噂のエル・ドラド 15
宰相は気にならないのか、私に少年を紹介してくださった。
「フィズどの。甥のジランです。このたび軍の幼年学校に入ることになりまして、シーシアさまにご挨拶に参りました。」
ジランくんは、すっくと立ちあがり、私に深々と頭を下げた。
「まあ。ご丁寧にありがとうございます。ジランさま。……軍の規律は、神宮院より厳しいとうかがっています。がんばってくださいまし。」
そう言ったら、ジランくんは私を見て、ちょっと笑った。
「……確かに軍の教練は厳しいですが、生活の規律は神宮院のほうが雁字搦めとうかがっています。」
「あら……。」
ふふっと、2人でほほ笑みあった。
……なんか……この子、いいなあ。
赤味の強い褐色の髪を後ろで無造作に束ね、きらきらと輝くまっすぐな金の瞳。
ちゃんと周囲に愛されて、でも甘やかされることなく、しっかりと育てられたんだろうなあ……。
不意に、大公さまにお預けした息子のリョーシャのことを思い出した。
叶うことなら、こんな風に……初対面の人にも臆することなく礼儀正しく接することのできる子になってほしい……。
……な~んて……手放してしまった私が望むことも恐れ多いわね。
こみあげてきた涙をまばたきで散らして、シーシアさまにお伺いした。
「あの……それで、ご用件は……」
「ええ。そうでしたね。……フィズが市井の私塾で勉強したいというお話ですが、……ティガ?」
「はい。私が師と仰ぐかたの私塾をご紹介するつもりだったのですが、折悪く、学問以外の所業がお忙しくなられてしまい、このところずっと私塾を弟子に任せていらっしゃる状態でして……。」
宰相は申し訳なさそうにそう説明された。
……てか!
宰相の先生をご紹介くださるつもりだったの?
それはさすがに……私には、もったいないんじゃないだろうか。
「あの……その弟子のかたの講義でも、充分かと……」
思わずそう言ったら、宰相が苦笑された。
「まあ、彼も非常に優秀ではありますが……このジランより2つ年上の学生ですので、フィズどのが師事するのは、いささか不適当かと存じます。」
「それは……ものすごく優秀なお弟子さんですのね。」
そう言ったら、ジランくんがにこにこ笑った。
……仲良しなのかな?
宰相はジランくんの肩をぽんぽんと軽く叩いてからおっしゃった。
「ええ。彼の影響でジランも、体を鍛えるだけでは立派な将軍にはなれないと理解して、学習にも力を入れてくれるようになりました。ジランにとって得難き師です。……彼の師もまた、私にとってかけがえのない存在なのですが……その……つい、頼りすぎてしまいまして……」




