エデンは遠くなりにけり 14
ジョージオさまをお慕いしている気持ちに、変りはない。
でも、私の存在が、ジョージオさまを苦しめ追い詰めていることは……認めないわけにはいかない。
もし、ジョージオさまが望むのなら……離婚して、子供はカピトーリの実家で産み育てたい。
いつか私の代わりに、子供がお義父さまのお手伝いをできるように、ちゃんと育てるから、帰らせて欲しい。
言葉にしているうちに、だんだん、自分の気持ちがわかってきた。
……カピトーリに帰りたい。
そして……ジョージオさまに、もはや、何も望んでない……。
お義父さまは、沈痛なお顔で苦慮されて……決断を先送りにすることを提案された。
「いずれにしても、キトリとお腹の子を守るために、カピトーリのご実家で出産してもらおうと思っていた。お里帰りの時期が少し早まったと思って、実家でゆっくり静養なさい。……もしかしたら、その間に、ジョージオの気持ちも納まるかもしれない。……ただ……私はね、キトリ、……ジョージオの貴女への愛情には何の疑いもないのだが……ジョージオ自身の弱さもよくよく知っていてね……あれは、私や、貴女のような勤勉な人間のことを、軽蔑し、妬み、恐れ……ひねくれてしまう傾向があってね……。」
「……わかります。……たとえジョージオさまのお心が一度は落ち着かれたとしても……同じことの繰り返しになるような気がします。」
すっかり諦めてしまっている私に、お義父さまは悲しそうに言った。
「それでも、キトリとお腹の子には、ずっと私の家族でいてほしい。」
「お義父さま……。」
新たな涙が、またボロボロとこぼれた。
「……今回のことは、全てジョージオが悪いし、もっと言えば、ジョージオを甘やかして育てた家内と、それを見て見ぬふりしてきた私の責任だ。……ジョージオを勘当して、貴女と子供は私と本宅で暮すという手段も考えたのだが……他の家族がまた貴女に危害を加えるかもしれないと思うと、それもできない。……どうしたものか……。……やはり、少し時間をくれないか。」
お義父さまの言葉に、私は素直に頷いた。
***
翌朝、お義父さまは、ジョージオさまを無理矢理ひっぱって馬車に押し込め、タルゴーヴィへと帰って行かれた。
私は……お義父さまの手配してくださった産婆さんと小間使いの女性に甲斐甲斐しくお世話をしてもらい……安定期に入るのを待ってカピトーリの実家に帰った。




