アルカディアの誘い 22
ん?
今の、どういう意味?
……ジョージオさまは、今、幸せじゃないってことよね?
怪訝そうな私に、ジョージオさまは苦笑した。
「……あの魚をあなたに手渡したご老人と、並んで座って、笑い合って……ずいぶん楽しそうでしたね。」
あー……。
なるほど。
ヘイー先生とシーシアさまのお目覚めを待っていたところを、ジョージオさま、見てらしたのか。
……てかさ。
ご老人って、ヘイー先生のあのずるずるの裾引きの格好と、白髪をご覧になっておっしゃってるのね。
しかし、たぶん老人ではなく中年だと訂正するのは墓穴を掘るに等しいだろう。
私は、当たり障りなく答えた。
「ジョージオさまの悪戯を大笑いされてましたわ。……私がしたと勘違いされていました。恥ずかしかったですわ。このお魚たち、川の雑魚なのに、海水でも生きながらえるかを実験しに来られたのですって。かわいいと言ったら、くださいました。交配でいろんな色の子が生まれるらしいので、楽しみです。」
ジョージオさまは無表情で聞いてらした。
……心が遠い……。
どうしてかしら。
私の声が聞こえているはずなのに、届いてないみたい。
悲しいけれど、それ以上は私も何も申し上げられなかった。
お魚を見て、ヘイー先生はもうカピトーリに帰られたのだろうか……と、ぼんやり考えた。
あんなに晴天続きだったのに、まるで嵐のような雨風のなかを出発されたのだろうか。
お気の毒だなあ。
あのかわいい女の子と、ブンザくんも、元気かなあ。
カピトーリに……戻りたいなあ……。




