アルカディアの誘い 21
★部分を削除改定しました。
完全ver.はムーンライトにて。
「……頭が痛い。」
宮殿に戻ると、ジョージオさまがつらそうな顔で待っていて、私に不調を訴えられた。
「気が合いますね。急にお天気が変わったからでしょう。」
シーシアさまは淡々とそうおっしゃった。
「シーシアさまも?おつらいのですか?大変。お薬を……」
「よくってよ。眠れば治りますから。……ジョージオ。ごめんなさいね。」
それだけ言って、シーシアさまはご自分のお部屋に戻ってしまわれた。
「……なんで、シーシアが謝るんだろう。」
不思議そうなジョージオさまに何も申し上げることができず、私はそばにいた執事さんにお薬をお願いした。
ジョージオさまは、お薬を飲んだ後も、何だか不機嫌だった。
「……キトリはさ、いつも私よりシーシアを優先しますね。」
あからさまに拗ねられて、ほとほと困った。
「それは……シーシアさまは神の花嫁ですし……昨年までは、神宮でお仕えしていましたし……」
「そうですね。でも今のキトリは私の妻ですよね?」
ネチネチと苛まれた。
★
数日にわたる荒天の間中、私はジョージオさまの思うがまま。
★
***
ようやくお天気が回復した。
心身共に元気になったジョージオさまは、身体を起こすことすらできない私に言った。
「シーシア、カピトーリに帰るって。私たちも、館に帰りましょうか。もう充分、夏を満喫しましたよね?キトリ。」
「え……」
思考を諦めていた頭に号令をかける。
あれから、何日たったの?
えーと……。
「予定の日数の半分ぐらいしかたっていないのではありませんか?」
「そうでしたか?……では、このままガヴィアディナに行きましょうか。とてもいい温泉があるのですよ。山間なのでこの宮殿よりは手狭ですが、のんびり過ごせますよ。」
ジョージオさまの誘いは、なかなか魅力的だった。
……温泉にゆっくり浸かったら、身体を癒やせるかしら。
いずれにしても、タルゴーヴィの館では御子を授からないと、シーシアさまもおっしゃっていた。
私自身、ガヴィアディナには行ったことがないので、興味が湧いた。
しかし、続くジョージオさまの言葉に毒を感じた。
「私はかつて破談になるたびにガヴィアディナの温泉地宮殿に滞在して心を癒やしました。今度こそ、キトリ、あなたをお迎えして、幸せになるのだと、何度も何度も願いました。……あなたさえ私のそばにいてくれたら、私は幸せになれると思っていました。」




