表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

43/143

アルカディアの誘い 9

★部分を削除改定しました。

完全ver.はムーンライトにて。

誇張ではなく、朝から晩までべったりとくっついて来られる。



規則正しい生活を送れるはずもなく……次第にリズムは乱れた。


ただでさえ、2つの異なる大きさと周期をもつ太陽は、体に変調をきたしやすい。

何年か前に、国民の健康を憂慮したカピトーリの宰相ティガさまが、標準時計をお定めになったものの、日の沈まぬ日もあれば、1日に2度夕暮れのある日もある。


時計と暦と、時を告げる鐘で、何とか規則正しい生活を送りたいのに……ジョージオさまには、時間も太陽も関係ないらしい。

ジョージオさまと暮らしていると、私自身の心のバランスが崩れてゆくことに気づいたが、どうしようもなかった。

既にジョージオさまとの自堕落な生活に蝕まれてしまっていた。


……そして、次第にジョージオさまの病的な支配が狂気じみてゆくことに、疑問を抱かなくなった。

ジョージオさまの愛情に嘘はなかったから。

全てを受け入れるのが愛だと、信じて疑わなかった。



***


半年が過ぎた頃、ジョージオさまが思いも寄らぬことを言い出した。


「今日から、お名前をキトリと改めてください。」

「……は?」


一瞬、何を言われているのかわからなかった。

ぼんやりポカーンとしている私に、ジョージオさまは笑顔でおっしゃった。


「再び私たちに御子が授かるよう、有名な占い師に相談していただいたのですよ。すると今のままではいけないということでした。お名前は、予言者にも見ていただいて決めました。」


……どうやら、冗談ではないらしい。

つまり、これは、提案ではなく、決定事項なのか……。


「フィズという名前は、お嫌いですか?」


一応そう尋ねてみた。

ジョージオさまは慌てて全力で否定なさった。


「とんでもありません!あなたらしい、かわいい名前です。大好きです。……でもフィズのままでは、御子は授からないというのです。」


……何だ、それ……。

かなり呆れた。


でも、ジョージオさまは真剣そのものだ。

私には拒否権はないのだろう。


「……わかりました。良いようにいたしてください。」

「ありがとう。では、キトリ。……キトリ。私の、キトリ。……ふふ。いらっしゃい、キトリ。」


ジョージオさまは、ものすごーくご機嫌さんで、にこにこしながら私を抱き上げた。


……まあ……こんなに喜んでくださるのなら……呼び名ぐらい……いいかしら?



そう思おうとしたけれど、心の中からモヤモヤが消えることはなかった。



***



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ