アルカディアの誘い 9
★部分を削除改定しました。
完全ver.はムーンライトにて。
誇張ではなく、朝から晩までべったりとくっついて来られる。
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規則正しい生活を送れるはずもなく……次第にリズムは乱れた。
ただでさえ、2つの異なる大きさと周期をもつ太陽は、体に変調をきたしやすい。
何年か前に、国民の健康を憂慮したカピトーリの宰相ティガさまが、標準時計をお定めになったものの、日の沈まぬ日もあれば、1日に2度夕暮れのある日もある。
時計と暦と、時を告げる鐘で、何とか規則正しい生活を送りたいのに……ジョージオさまには、時間も太陽も関係ないらしい。
ジョージオさまと暮らしていると、私自身の心のバランスが崩れてゆくことに気づいたが、どうしようもなかった。
既にジョージオさまとの自堕落な生活に蝕まれてしまっていた。
……そして、次第にジョージオさまの病的な支配が狂気じみてゆくことに、疑問を抱かなくなった。
ジョージオさまの愛情に嘘はなかったから。
全てを受け入れるのが愛だと、信じて疑わなかった。
***
半年が過ぎた頃、ジョージオさまが思いも寄らぬことを言い出した。
「今日から、お名前をキトリと改めてください。」
「……は?」
一瞬、何を言われているのかわからなかった。
ぼんやりポカーンとしている私に、ジョージオさまは笑顔でおっしゃった。
「再び私たちに御子が授かるよう、有名な占い師に相談していただいたのですよ。すると今のままではいけないということでした。お名前は、予言者にも見ていただいて決めました。」
……どうやら、冗談ではないらしい。
つまり、これは、提案ではなく、決定事項なのか……。
「フィズという名前は、お嫌いですか?」
一応そう尋ねてみた。
ジョージオさまは慌てて全力で否定なさった。
「とんでもありません!あなたらしい、かわいい名前です。大好きです。……でもフィズのままでは、御子は授からないというのです。」
……何だ、それ……。
かなり呆れた。
でも、ジョージオさまは真剣そのものだ。
私には拒否権はないのだろう。
「……わかりました。良いようにいたしてください。」
「ありがとう。では、キトリ。……キトリ。私の、キトリ。……ふふ。いらっしゃい、キトリ。」
ジョージオさまは、ものすごーくご機嫌さんで、にこにこしながら私を抱き上げた。
……まあ……こんなに喜んでくださるのなら……呼び名ぐらい……いいかしら?
そう思おうとしたけれど、心の中からモヤモヤが消えることはなかった。
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