アルカディアの誘い 1
ジョージオさまの館で暮らし始めてわずか1ヶ月後。
私は、あっさり妊娠の診断を受けた。
ジョージオさまは、それはもう、たいそうなお喜びで、私を抱き上げたまま、ぐるぐる回るわ、踊るわ、歌うわ……屋敷の者たちも、みな祝福してくれた。
すぐに、ジョージオさまのご両親に懐妊のご報告に上がった。
大公さまは、とても喜んでくださったけれども……お母さまは微妙な反応だった。
……まあ、初対面の時から、そんな感じだったけどさ。
御家族へのお披露目の席でも、笑顔だったのは大公さまとジョージオさまだけだった。
お母さまも、上のお兄さま御家族も、下のお兄さま御夫婦も……私を見ようともしなかった。
貴族ですらない庶民など、家族として認めないということらしい。
特に、下のお兄さまのお嫁さんは、お母さまの遠縁にあたる皇族と縁続きのお姫さまらしく……かなり気位が高く……ぶっちゃけ意地悪だった。
嫁いで来られてから10年以上たっても懐妊しなかったことに相当負い目があるらしい。
下のお兄さまに、ご自分の眼鏡に適った侍女幾人かを宛がい、ようやく生まれた女の子を実子として育てていらっしゃるそうだ。
……ちなみに、侍女と言っても貴族のお嬢さまなのだが……出産後、多額の持参金を持たせて別のお家に嫁がせたと聞いている。
「フィズがこれだけあっさり懐妊してしまったら、下の嫂は、ますます陰険な嫌がらせをしてきそうですねえ。」
ジョージオさまは冗談のつもりで仰ったのだと思う。
でも、私は笑えなかった。
確信はないけれども、強い悪意を感じていた。
たとえば、私の座る椅子に針が刺さっていたり、誰にも頼んでないのに変な匂いのするお茶が部屋に届けられたり。
「……庶民の血を引く御子が男の子だったら大変ですものね。」
卑屈なようだが、御家族の想いは、そういうことだ。
「父は、あなたの優秀さに期待をかけていますよ。」
ジョージオさまはニコニコそう仰った。
とても有り難いことなのだが、その期待もまた、他の御家族を刺激してしまっている。
上のお兄さまのご子息とご令嬢は、周囲にどっぷり甘やかされているため、ワガママ放題に育っている。
勤勉さも優秀さも微塵も感じられない。
下のお兄さまの娘さんはまだお小さいけれど、どう取り繕っても妾腹だし、……女の子は跡を継ぐことはできない。
大公さまが、ジョージオさまの胤に期待をかけてらっしゃることは誰の目にも明らかで……私は、一身に敵意を受けているようだ。




