桃源郷への道 13
「私も、ジョージオさまを、信じます。愛します。……いえ、たぶんもう……」
ジョージオさまの腕がとてもたくましくて、心地よくて……。
勲章が頬に当たって、ちょっと痛いけれど。
「私はね、本当は、ずいぶんと前から、フィズ、あなたが欲しかったのですよ。」
ジョージオさまの言葉に驚いて、顔を上げた。
にこっ……と、ジョージオさまは、かわいい笑顔をくれた。
「……私を、ご存じだったのですか?」
どこで、見初められたのだろう。
知らなかった……。
ジョージオさまは、ゆっくりうなずいた。
「ええ。知っていました。カピトーリの神宮で、何度もお見かけしていました。式典や儀式のたびに、あなたは率先してお仕えしてらっしゃいました。」
「……神宮に、お越しだったのですか?……存じませんでした……」
こんな美形が来てたとは、知らなかった。
……いや、まあ、誰が来ようと、気づく自信ないけどさ。
「ええ。あなたは、シーシアしか見ていなかった。」
くすっと笑ったジョージオさまを、慌てて窘めた。
「シーシアさま、ですよ。……では、ジョージオさまは、シーシアさまの……ご親戚にあたるのですか?」
「ええ。そうですよ。」
……そうか。
そういや、お二人とも皇族だったわ。
「いつから……私のことを……」
「そうですね。フィズが神宮院に入られた歳には、もう存じ上げていました。とても好ましく、……憧れていたと言っても過言ではないでしょう。本当は、すぐに、花嫁としてお迎えしたかったのですが……、当時、私には7人目の婚約者がいました。」
……え……。
7人目?
えーと……私が神宮院に入ったのは、3年前の15歳の時。
ジョージオさまは私より8つ年上とお伺いしているから……23歳の時に7人目の婚約者……。
目を白黒させている私に、ジョージオさまは静かにおっしゃった。
「私には、生まれる前からの婚約者がいました。15才の時に彼女を家に迎えましたが、2年後に離縁することになりました。それから、何度も婚約者を迎えました。長くて3年、最短でお輿入れの翌日……12人の婚約者が私のもとから去って行きました。その度に、私の心は傷つき、血を流し、死にました。……こんな抜け殻のような男ですが……フィズ、私が自分の意志で心から欲した女性は、あなたが初めてなのです。どうか、信じてください。私を。」
……はあ……。
毒気を抜かれてしまった。
えーと……てことは、私は……13人目?
うわぁ……。
想像以上の人数に、絶句してしまった。
……。
あー。
とりあえず、気持ちを落ち着けよう。
冷静になろう。
3年前に、7人目。
3年間で、さらに5人。
で、私が13人目。
……なんとまあ……。




