桃源郷への道 6
でも、こんな真っ昼間から!
しかも、ジョージオさまのお館じゃなく、大公さまのお屋敷でそんな……。
オタオタしている私を見て、ジョージオさまはくすくすと笑った。
もしかして、私、からかわれているのかしら。
「……ふふ……青白かった頬が赤くなりましたね。」
そう言われて、思わず両手で頬を押さえた。
「お戯れは、おやめください。」
やっとそれだけ言ったけれど、ジョージオさまは初心な私の反応をいたく気に入ったらしい。
わざわざ立ち上がり、すぐそばにやってくると、私の膝のすぐ前で跪いた。
「ジョージオさま……」
「……指まで赤くなりましたね。かわいいな。……ねえ、フィズ?私は、あなたと仲睦まじい夫婦になりたいと思っています。どうか、私を、受け入れてくれませんか?」
ジョージオさまは、私の左手を、大切そうに両手で包み込み、押し頂いて……そっと口づけた!
びびびび、びっくりした!
てか!
こんな近くから見ても、やっぱりめっちゃ綺麗!かっこいい!美しい!
すごーい!マジ美形バンザーイ!
変なテンションになり、頬も口元も緩んでしまった私をじっと見つめて……ジョージオさまは私が受け入れたと思われたのだろう。
「……同衾、しますか?」
私は、とても返事できなかった。
ただ黙って、ふるふると震えて……あまりの恥ずかしさに、うつむいた。
ジョージオさまは、私が肯定して頷いたと、決めつけてしまわれたらしい。
「フィズ。かわいいですよ。……いらっしゃい。」
満足げに立ち上がると、ジョージオさまは私の手を取った。
……とても、拒否できる状況ではなかった……。
こうして、いわゆる初夜は、明るい昼日中に営まれることとなってしまった。
成り行きとは言え、どうせ、今夜か明日の夜にはこうなるはずだったし……まあ、いいか……。
昨日はじめてお会いしたばかりとは言え、縁談だし、結婚するために子供を作るのが目標なんだし……。
……一生懸命自分に対して言い訳していることに気づいて、おかしくなった。
ジョージオさまの足が止まり、振り返って私をご覧になった。
緊張でガチガチのはずの新妻が、笑っていることに気づいたらしい。
「ほんとうに、かわいらしいかたですね。」
そう言って、ジョージオさまは私をぎゅっと抱きしめた。
小間使いの使用人が通りかかっても、執事らしき男性が私達を見て踵を返しても……ジョージオさまは一向に気にならないらしい。
「あの……ジョージオさま。……恥ずかしいです。お屋敷のひとたちが見てます。」




