ユートピアからの放逐 16
「もし、不安になったら、書状を送りなさい。タルゴーヴィにだってうちの出店はあるし、お前の兄家族も常駐しているんだ。すぐに駆け付けて、力になってくれるだろう。……半日かかるが、私も、いつでも行くから。」
父の言葉に、私の涙腺が緩んだ。
「……うん。ありがとう。」
涙声に気づいたらしく、父は私の肩をぽんぽんと軽く叩いた。
優しい温かい手に、胸がいっぱいになった。
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休憩1回を挟んで、馬車でゆっくり移動すること5時間。
タルゴーヴィの町が近づくにつれて、賑やかになってきた。
「もしかして、カピトーリより、栄えてるの?」
驚いてそう尋ねたら、父は笑顔を見せた。
「そりゃあ、ここは商人の街だからね。活気があるだろ?……私も、タルゴーヴィに来ると元気になるよ。」
それは父の商人としての矜持だった。
「私も、元気に、がんばるね。」
そう言ったら、父の目が潤んだ。
大丈夫。
縁もゆかりもない、身分違いも甚だしい大公家だけど、向こうから望まれて行くんだもん。
何も卑屈になることはない。
私は私らしく。
強くならなきゃ。
待ってろ!
タルゴーヴィ大公とその息子!
私は絶対、賢妻、賢母になるからね!
絶対!負けない!




