ユートピアからの放逐 13
その類い希なる天賦の才能は、他の親類が財産を抛ってでも守らなければいけない……らしい。
実際、シェナミさまのお父上さまが亡くなられてから、トミルお姉ちゃんとシェナミさまを抱えたウーノさまは、ご実家の援助でお商売を続けていらっしゃった。
……シェナミさまが娼婦に入れあげて家を傾けても、入獄して家を売り払うことになっても……足りない分は、全て、近しい親戚が順番に大金を出して尻拭いしてきた。
たまたま、我が家の番だったときに、取引先のオーゼラの商家が旱魃の影響で倒産し、同じ年に私が上級の神宮修女になるための寄附金が払えなかった……それだけのことだと父は思っている。
神宮院での修行の中で、我が身の不遇は、神様のお決めになったことなのだと私も思おうとした。
でも、やっぱり、違うでしょ。
100%とは言わないけれど、50%はシェナミさまのせいだ。
どれだけ優秀だと聞いても、現在は社会的に成功なさったと聞いても、その陰でどれだけの人に迷惑をかけたと思っているの。
てか!
成功したなら、お母上のウーノさまに報いるべきだ。
「……シェナミさまは、どうして、ウーノさまとご一緒に住まれないのでしょうか。」
不満を疑問に変えて聞いてみた。
両親が困った顔になった。
「……やはりカナヴィに悪いし……」
「ディーツァさまをお連れするわけには……」
小声でごにょごにょ話す2人の言葉の全てが聞き取れたわけではなかった。
でも、何となく伝わって来た。
シェナミさまは、今、ディーツァという女性と暮らしてらっしゃるんだ。
ウーノさまのもとには、あのカナヴィがいる。
……やっぱり、カナヴィもシェナミさまと関係していたんだわ。
わー!マジ最低!
ほんっと気持ち悪い!あのデブ!
気分悪いわ!
私は、両手でテーブルを叩くように音を立てて立ち上がった。
びっくりしている両親に、すまして言った。
「明日、お友達を訪ねたいの。手土産にお菓子を焼こうと思っています。お店のかたたちにも焼きますが、いくつ必要ですか?」
「……ああ、そうか。ありがとう。そうだな。本店に8人、隣町の出店に6人……タルゴーヴィやジェムチには、無理だな?」
「お兄さま達には、また御目にかかれた時に焼いてさし上げますわ。……では、12個ですね?」
「お店だけじゃなく、家のものにも焼いてちょうだいな。私もいただきたいわ。旦那さまと、私と、使用人が3人。……それに、フィズの分。」
継母はうれしそうにつけ加えた。
うちの分だけで、合計18個。
手土産も同じぐらい準備したらいいかしら?
塾生って何人ぐらいいらっしゃるのか。
……まあ、足りないより、余ったほうがいいわ。
明日に備えて、早く寝よう。
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