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夢に楽土を求めたり 17

「みんなって……もうみなさま、ご存知ですの?」


驚いた私に、父は隠しきれない笑みを携えて頷いた。

シェナミさまは天を仰いだ。


「……まあ……若い頃、さんざん勝手した報いですね……これも……。」


ご自分で諦めをつけたらしく、シェナミさまはため息をついてから父に言った。


「わかりました。豪奢にするつもりはありませんが、儀典の教科書のような、完璧な婚姻の儀を行いましょう。」


父は喜色満面でうなずいたけれど、ふたたび表情を引き締めた。


「了見くださり、ありがとうございます。それでは、明日にもシェナミさまのところのジランくんが来ますので、看病は彼に任せて、フィズは私と一緒に先にカピトーリに戻ります。」

「え!?なんで?」


びっくりして思わず声をあげてしまった。

だって結婚するんでしょ?

看病は私の役じゃない?


父はじろりと私をねめつけた。


「万が一にも間違いがあってはいけないからね。」

「間違いって……。」


どういう意味?

シェナミさまが苦笑された。


「ずいぶんと厳格ですね。……この身体です。仰る通り、野合(やごう)は控えますので、フィズに看病を頼めませんか?」

「あの、ヤゴウってなんですか?」


思わずそう尋ねてしまった。

父もシェナミさまも押し黙ってしまった。

……私、変なことを聞いちゃったかしら……。

困っていると、シェナミさまが言いにくそうに仰った。


「……なるほど。フィズどのは不道徳な言葉はご存じないのですね。……さすが神宮院育ちと言うべきでしょうか……。……つまり、正式な婚姻関係にない男女が通じ合い関係を結ぶことと申しましょうか……」

「え……それって……」


やっちゃいましたよね?

私たち。

既に2度も……野合(やごう)しちゃいましたよね?

あわあわしている私を、父が憮然と見ていた。

……はは……完全にバレてる……ああああ。

恥ずかしい。


しばらくして、父が早口で言った。


「やはり連れて帰ります。婚姻の準備もありますので。……万が一婚礼の前に娘が妊娠してしまっては大変だ。」

「……ははは。」


シェナミさまは何も言えないらしく、空しく笑っていた。

けど、私は……ちょっとモヤモヤして……


「ええと……もう、遅いかも……です。」

と、つい言ってしまった。


父の眉がぴくりと上がった。


「何と?……シェナミさま……そんなに前から娘と!?」

「ええっ!?」


突然、責められて、シェナミさまも驚いたようだ。

慌てて、私は釈明を試みた。


「誤解です。お父さま。私たちの野合は昨日からですわ。でもちょうど子供を授かりやすい時期なのと、……これは、ただの勘みたいなものですが……既にここに……いるような……」


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