夢に楽土を求めたり 14
「アイダンさま。いえ、お義父上さま。もう一度、ここで改めて言わせてください。フィズどのを妻に迎えたいのです。結婚をお許しいただけますでしょうか?」
……父の頬が一瞬緩んだのを、私は見逃さなかった。
お父さま、やっぱり、喜んでらっしゃるわ……。
それだけで、鼻がつーんとしてきて、涙がこみ上げてきた。
鼻をすすったら、父が私を見て……そして、尋ねた。
「シェナミさまがそう仰ってくださっているが、お前は、どう思う?……ちゃんと考えたかね?」
ここに来る前、シェナミさまとの縁談を「考えとく」と言って出てきたんだっけ?
……いつものように、さくっと断るつもりが……お父さまの熱意が私に断らせなかったのよね……。
で、めんどくさくて、「考えとく」と逃げ出した。
でも今は……心から思う。
断らなくてよかった……。
私は、去来する想いを胸に、父と、それからシェナミさまを見つめて言った。
「考える前に身体が動いてました。浅はかな私を、正しくお導きくださった神に感謝いたします。お父さまのお心遣いに感謝いたします。シェナミさまの真心に感謝いたします。……どうか、良きように……お取り計らいくださいませ。」
しおらしくそう言ったら、父もシェナミさまも、ちょっと変な顔になった。
……キャラじゃなかったかしら……。
「……良い心がけだな……。親の制止を振り切って飛び出した娘が……シェナミさまのおかげですかな……。」
父の苦々しい言葉に、シェナミさまは困った顔をされた。
「私にそのような影響力があるとは思えません。……お義父上さまには申し上げにくいですが……フィズどのは、いつも私の想像を超えた行動をなさいます。……頼もしくもあり……振り回されておりますよ。」
「え!?嘘!それはないです!私が、シェナミさまに振り回されているのですわ。今回だって、養殖場の視察にお連れくださると御約束してくださったのに、独りで行ってしまわれるし……」
慌てて反論したけれど、シェナミさまはにっこりと微笑んで仰った。
「不慮の事態に駆け付けたまでのこと。……あなたとの御約束はもちろん覚えておりますが、まだ予定の日までありますし、改めてご一緒に来るつもりでしたよ。……いえ、もちろん、うれしかったですけどね。」
父が白い目で私を見ている。
……いたたまれない……。
「……たいそう……ふつつかな娘ですが、よろしくお願いします。」
父に合わせて、私も頭を下げてみた。




