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夢に楽土を求めたり 13

★部分を削除改定しました。

完全ver.はムーンライトにて。

「私も。……夢のようです。こんなに穏やかに……静かに……幸せって思えるなんて……。」


自分でも何を言ってるのかよくわからない。

でも、この想いは、ちゃんと伝わってる自信があった。

シェナミさまは、目を細めた。


「……私たちは、とてもよい夫婦になれると、思いませんか?」


その言葉だけで充分だった。

えも言われぬ幸福感で満たされて、私は何度も頷いた。

シェナミさまもまた、確信に満ちて頷いてくださった。

心と心が繋がっていると強く感じることができて、幸せの涙は止まらなかった。


「フィズが、こんなに泣き虫だとは知りませんでした。」

「……私も知りませんでした。……シェナミさまのお気持ちと、お言葉が、うれしくて……」


そう言ったら、シェナミさまは、楽しそうに笑った。


「おや。ようやく気づかれましたか?……それとも、宰相閣下からお聞きになったのですか?」

「う。……はい。あの……明日、私の父がこちらに来るそうです。……私ではなく、シェナミさまの御身を心配して、駆け付けるそうです。」


気恥ずかしくて、話の方向を逸らそうとした。

シェナミさまは驚かれたようだ。


「アイダンさまが、わざわざここまで来られるのですか?なんと。申し訳ない。」

「……シェナミさまのお身体は心配みたいですが……父は、喜び勇んで飛んで来ると思います……私たちのこと……。」


言葉にすると、やっぱり恥ずかしかった。

シェナミさまは、両腕を私のほうに伸ばした。


「……いらっしゃい。」


吸い込まれるように、シェナミさまの身体に抱きついた。

傷に障らないか心配だったけれど、薄い胸にかかえられる安心感には敵わなかった。



当たり前のように慈しみ合い、そのまま眠った。


……今度こそ絶対安静と言われたのに……。



***


翌朝、執事さんのお声掛けで、大慌てで起き、身支度を調えた。

医師がシェナミさまの包帯を取り替えているところに、父が到着した。

父は、包帯まみれのシェナミさまのお姿に顔色(がんしょく)を失ってしまった。


「アイダンさま。はるばる遠くまで……まことにご心配をおかけいたしまして、申し訳ありません。……たいそうななりをしていますが、浅い傷ばかりですので。大丈夫です。」


シェナミさまはにこやかにそうおっしゃった。

父は、不安そうに私に視線を移した。

目が合うと、ついつい、へらっと笑ってしまった。


「……お前……」


言葉を失って呆れているらしい父に、シェナミさまがおっしゃった。


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