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夢に楽土を求めたり 4

★部分を削除改定しました。

完全ver.はムーンライトにて。

騎士様の頬に涙がつたった。

私の目にもまた涙がこみ上げてきた。


「……ありがとうございます。……申し訳、ありませんでした。」


心からのお礼と謝罪をした。



***


その夜、一通りヘイー先生の手当てを終えた医師が、私にも薬を処方してくれた。

外傷はないが、とにかく心と身体を休めるよう指示され、半ば強制的に眠りに就いた。


おかげで翌日、多少の筋肉痛を腕に感じた程度で起きる事が出来た。

そして、お部屋をお訪ねしたヘイー先生は……あちこちに白い包帯をを巻かれて、絶対安静ではあるものの、やはり意識はしっかりしてらっしゃった。


「……また傷痕が増えますね。」


そう言ったら、ヘイー先生は苦笑された。


「大丈夫です。これは、異世界人から教わった、肉を切らせて骨を断つ、という立派な戦法なのですよ。痛みはそのうち取れますし、傷はそのうち塞がります。」

「そんな危険な戦法、もう辞めてください。体がいくつあっても足りないわ。」


呆れてそう言ったら、ヘイー先生は困った顔になられた。


「恥ずかしながら、私は幼少期から学問や芸術方面ばかりで……戦いに参加したくとも、まともに戦う力も技術もなかったのですよ。私にあるのは、卑怯な戦術を咄嗟に思いつく知恵だけ。死んだふりをしたり、敢えて降参して捕虜になるふりをして油断させたり。かっこいい戦いかたはできませんでした。昨日も……あなたを心配させて、すみませんでした。」

「謝るのは私のほうなのに。……ごめんなさい。」


しょんぼりうつむいたら、ヘイー先生の手がそろそろと伸びてきて、少しためらってから、そっと私の頬に触れた。

手首も腕も、包帯だらけだけど、その手はちゃんと温かくて……生きていらっしゃることを実感できた。

涙が溢れてくると、ヘイー先生はそっと指ではらってくださった。


優しい瞳。

……ドキドキする……。


ヘイー先生は、片手で起き上がろうとして……どこか痛んだらしく、そのまま無言で固まり……渋々、ふたたび枕に頭を落とされた。


「……残念。あなたに触れたら、その先も欲しくなりましたが……傷が癒えるまで、お預けのようです。」


露骨にくやしがるヘイー先生がかわいくて……代わりに私が立ち上がり、腰を屈めて覆い被さり、唇を押し付けてみた。

白い無精髭は意外と硬く、チクチクした。



気がついたら、ヘイー先生の手は、いつの間にか私を抱え込んでいた。

そのまま当たり前のように胸に抱き寄せられ、くるりと半転して、ベッドに組み敷かれた。


えーと……この体勢は……あの……。


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