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シャングリラはそこに 23

「入浴中?ですね?……お邪魔いたしました。」


ぺこりと頭を下げたら、腰に布を巻いただけの格好のまま、ヘイー先生が頭を掻いた。


「いや、驚きました。……私に、逢いに来てくださったんですか?」


飄々としてらっしゃるようだけど、頬が赤くなられたのは、湯あたりされたわけではなさそうだ。

私は、素直に頷いた。


「はい。色々お話を伺いたくて、来ちゃいました。ご迷惑じゃなかったですか?」


ヘイー先生は、ゆっくり頭を振った。


「いいえ。うれしいです。私も、フィズどのにお会いしたかった。……本当は、今日、あなたに直接お目にかかって、お話をしたいと思っていました。しかし、湖の水温が上昇して、せっかく育てている魚や貝が死んでいると報告をうけましたもので、来ざるを得ませんでした。」

「まあ。……お魚たちは……?」

「……そうですね……無事とは申しませんが、全滅ではありませんでした。……くしゅっ」


ヘイー先生は、小さなくしゃみをされた。

大変。


「その格好では、お風邪をめしてしまわれますわ。私、外で待ってますので、温まり直して、お着替えください。」

「すみません。ここのお湯はなかなかよい温泉なのですが……さすがに、ご一緒にいかがですか?……とは、まだ、誘えませんね。」


まだ、という言葉に、ヘイー先生の想いを感じることができた。


「素敵ですね。では、いつか、ご一緒に……。」


そう言って、小屋を出た。

恥ずかしさに悶絶しそうだけれど……幸せな気持ちに心が満たされた。


……あら?

暗くてよく見えないけれど……人影が3つ、近づいて来た。

騎士さまが、館のかたたちとご一緒に、私を探してらっしゃるのかしら。

ヒトのとこは言えないけれど、こんなに暗いんだから、灯りを持ってくればいいのに……。


ぼんやりそう思ってたんだけど、近くまでやってきた3人の顔は見知らぬものだった。

大人数で探してくださったのかしら。


「ご心配をおかけいたしました。この建物のなかにヘイー先生はいらっしゃいましたわ。」


そう言ったら、3人の男たちの顔色が変わった。

緊迫した雰囲気に、私も、何かがおかしいと気づいた。


男たちは無言で私を取り囲むと、私を獲物のようにやすやすと捕獲した。

突然両腕をがっちりと左右から捉えられ、私は悲鳴をあげた。


「いやーっ!放してっ!!!ヘイー先生!!助けてっ!」


しかし男の腕力にかなうわけもなく、私はヘイー先生のいらっしゃる小屋から引き剥がされ、連行される……。


その時だった。


ガシャーン!


大きな音を立てて、窓ガラスが割れた。


白い煙とともに現れたヘイー先生は……やはり裸だった……。


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