表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

11/143

ユートピアからの放逐 10

……はあ?

何て言った?

継母の言葉を反芻して、私は眉をひそめた。


「つまり……正式な結婚は、子供を出産してから?……それは、縁談とは言わないのではありませんか?」


まるで後宮に入るようなものじゃないか。

……いや、もちろん、宗教と法律で、皇帝以外の何人も後宮を持つことは許されていないことは、よくよくわかっている。

しかし、富裕層の多くが、おおやけにしないだけで、妻以外の愛妾を持ったり、使用人に手をつけたり、あるいは他家のご夫人や未亡人とのアバンチュールを楽しんでいたり……残念ながら、実情はそんなものだ。

大公のご子息がそんな条件を出すからには、後宮ばりに複数の女性がいて、誰が一番早く出産するかを競っているのだろうか。

こわっ。

ふるると震えた私を継母が気遣った。


「大丈夫?寒いの?……何か羽織るものを……」

「いえ、寒くないです。ちょっと身震いしただけです。……私は、大公さまのご子息の寵愛を、他の女性と争わなければいけないのでしょうか?」


思い切って、聞いてみた。

継母の顔がキョトンとした。


……違うの?


父が、慌てて否定した。


「まさか!そんなことはない!絶対ない!フィズが行っている間はフィズだけだ。」

「……そうですか。」


少し、安堵した。


「では、花嫁候補として大公さまのご子息のもとへ行き、子供ができたら、結婚式を挙げるということですね?……期限は?」


何だか結婚ではなく、試験を受けるような気がしてきた。

私が意外と前向きらしいと思ったらしく、両親の顔が、あきらかにホッとしている。

おそらく、私が嫌がったところで、断ることのできない話なのだろう。


「とりあえず1年、最長3年ですって。もちろん、帰りたくなったら、いつでも帰って来ていいのよ。」

「1年か3年……。」


それだけあれば、子供を授かることは可能な気がする。


「……わかりました。」


私の承諾に、両親はようやく頬を緩めた。



***********


翌日、父がタルゴーヴィ大公府へ返事に上がると、話はトントン拍子に進み出した。

日を置くことなく、大公府長官が、契約書と仕度金を持って我が家に来た。

花嫁道具も服も何も持って来なくていい、全て大公家で準備している……とのことだが、それでも継母は私の衣類や身の回りのお道具を求めてカピトーリ中を奔走した。


私はと言えば、3日後のお輿入れまで特にやることもないので、久しぶりにトミルお姉ちゃんのお母さまのウーノさまを訪ねた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ