38 それぞれの剣術試験
諸般の事情で次話からは1日おき更新となります。
(厳密には毎月31日以外の奇数日朝5時更新。31日は奇数日だけれどもお休みというスケジュールの予定です)
申し訳ありませんがよろしくお願いいたします。
俺自身は後は発表を待つだけだ。
個人的にはモリさん達がどうなったかを知りたい。
多分D級は問題無いとは思うけれど。
だが発表があるまでこの場を離れるわけにはいかない。
仕方なくこの場で他の受験生が試験終了するまで待つ。
ミリアは選択が補助魔法だから近くにいない。
他の1年ではルドルフがやはり補助魔法選択で2組のシーラは無手格闘術選択。
ただ2組のオルソンと3組のラーダは俺と同じく攻撃魔法と剣術選択。
ちょうど俺の後に続いてやるのでついでに見ておこう。
オルソンの剣術試験が始まる。
俺や他の連中とはかなり違う戦い方だ。
俺は基本的に前に出て仕掛ける戦い方。
だがオルソンのはむしろ引いて仕掛けるというのだろうか。
相手に攻めさせて隙を作らせる。
それに特化した戦い方だ。
確か後の先とか言うんだけっけかな。
無論相手がガリウス教官でそれなりの腕があるという事はある。
相手が強いからこそその戦法をとっているのかもしれない。
だが相手の攻撃を見切る術、そしてカウンターで仕掛けていく技術は見事だ。
俺が本気で戦ってもかなり手こずりそうだな。
剣技だけで戦うと五分五分というところだろうか。
結局ガリウス教官の攻撃もオルソンの攻撃もどちらも当たらないまま終了。
でもこれは合格だろうと思う。
少なくとも剣術の実技は。
さて、1年生最後はラーダだ。
奴はあまり評判は良くない。
別の意味で評判の良くない某先輩に言わせると、『彼は謙虚さというものを忘れてきたようだね』との事だ。
「どうも彼は今までお山の大将としてやってきて、自分より強い相手が大勢いるという事がわかっていないようだ。という訳でハンス君、良ければ彼とちょっと戦って更正してやってくれないかい。一戦するまでのお膳立てはこちらでするからさ」
上級魔法の練習の後、そんなとんでもない話を持ちかけられた事がある。
勿論その件は丁重にお断りさせていただいた。
そんなの同格の生徒である俺の仕事ではない。
それにしてもアルストム先輩、一体何でそんな事をやらせようとしたのだろうか。
生徒会とか前に言っていたのを聞いた覚えがあるけれどその関係だろうか。
その後同じ組のモリさんに聞いた処、『クラス内では取り巻きに囲まれているけれどなあ、取り巻き含めてどうも好きになれないタイプだなあ』という事である。
なおライバーには聞いていない。
脳筋だからな、奴は。
さて、ラーダの剣術試験がはじまった。
ああ駄目だ、見てすぐ思う。
大剣をあの勢いでふり下ろす腕力と足の踏み出しの速さは悪くない。
だがそれだけだ。
剣筋も動きも単純すぎる。
案の定ガリウス教官はあっさり右へとさばく。
さばいた後に剣をすっと振ってラーダの背後に当てて止めたのは警告だ。
今の攻撃はこうやって返されて終わりだと。
審判をしているシャミー教官の視線がガリウス教官の視線とあう。
ガリウス教官が小さく首を横に振ったのは試験終了にせずもう一度という事なのだろう。
ラーダが体勢を整える。
一度別方向を見た後、もう一度ガリウス教官に襲いかかった。
ガリウス教官が何かを避けるように横方向へ飛ぶ。
「それまでです」
シャミー教官の制止がかかった。
「今のは反則です。剣術試験は身体強化以外の魔法は禁止と説明した筈です」
「俺はやっていない」
ラーダはそう言うが俺の目にも見えている。
風属性の初級魔法、目潰し魔法だ。
確かにラーダはかけていない。
見学している男子生徒の1人が隠れて起動させた。
だがその前に視線で合図をしたのを俺は見ている。
「いいだろう。試験を続けよう」
そう言ったのはガリウス教官だった。
シャミー教官の視線に彼は頷く。
ガリウス教官は目を瞑った。
剣をこれまでと違い中段正面に構える。
「さあ、来るがいい」
ラーダも構えるが今度は打ちかかれない。
教官は目を瞑っている。
だが隙が見えない。
今までの構えや対応が試験用、それもC級程度の試験用だった事がよくわかる。
目を瞑っているのに打ちかかることが出来ない。
俺ならどう攻めるか。
試験でなければ魔法を使う。
だがこの試験という場ならあえて正面から打ち込むべきだろう。
これは試験なのだから自分の実力を全力で見せるべきだ。
たとえ剣先が届こうと届くまいと。
だがラーダは俺とは別の判断をしたようだ。
また魔法の気配がした。
今度は気配隠匿の魔法だ。
例によって奴本人ではなく別の生徒がかけている。
ガリウス教官は軽く首を横に振る。
シャミー教官に止めるなと言っているかのようだ。
そしてラーダは静かにゆっくり教官の右横方向へと動く。
斜め後ろまでゆっくり移動し音がしないよう剣をゆっくり振り上げて、そして……
教官めがけてふり下ろした。
同時にガリウス教官がすっと自分の剣を斜めに振りかぶる。
ラーダのふり下ろした剣を自分の大剣で巻くように受け止めはじき落とした。
「ここまでだな」
ガリウス教官は目を開く。
回りから自然に漏れる歓声の中、俺はガリウス教官と同じ状態の場合、同じ事を出来るかどうかを考えていた。
気配隠匿魔法といっても今のは雑だった。
目を瞑って集中すれば何処に移動してどんな動作をしたかはわからなくもない。
だが俺の剣だと重さが足りずはじき返されてしまうだろう。
だから動かずにさばくのは多分無理だ。
「何考えているの」
背後からお馴染みの声がした。
「ミリア、もう終わったのか」
「補助魔法はすぐ終わったわ。だからここで見ていたの。それでハンスは何を考えていたの」
どうやら俺が何かを考えていたのはわかるらしい。
そんなに俺の様子というのはわかりやすいのだろうか。
「今のガリウス教官と同じ事を出来るかどうか考えていた。俺の剣では軽すぎて動かずにさばくのは無理だ」
ミリアが吹き出す。
「今のでそんな事を考えるのはハンスくらいだと思うわ」
そうだろうか。
強い相手が技を見せたら、それと同じような事が出来るかを考えるのは当然だと思うのだが。
その辺は獣人と普人の違いだろうか。
とりあえずミリアに聞いてみる。
「なら普通はどういう事を考えるんだ?」
「今のはざまあみろ、って思うのが普通だと思うわ。あの人、他にも校内で色々問題を起こしているし」
「なるほど」
そういう風に人間関係で先に考えるものなのか。
「それでは1年の6名は結果が出たからこっちへ」
風魔法担当のレリアス教官が俺達を呼ぶ。
そのまま一番近い第1教室まで引率され、着席。
ラーダがちゃんといるところは正直凄いと思う。
俺にはあの後、他の人の前に顔を出せる面の皮の厚さは無い。
「それでは各自に封筒を渡す。中には試験結果、あと合格者には昇級証明書が入っている。合格者は事務室へ行って昇級証明書と今までの登録証を提出して新しい登録証を作って貰ってくれ。新しい登録証を受領次第C級の仕事を受けられるようになる」
レリアス教官は封筒を風魔法でそれぞれの生徒のところまで飛ばす。
「受け取ったら中を確認してくれ」
どれどれ、中を見てみる。




