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GOGOパワーレベリング~少年魔導士は犬耳・尻尾つき。でもモフられるのは苦手です~  作者: 於田縫紀
第5話 ゴブリン討伐の訓練

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15 本日の課題

「今日はゴブリンを狙うわよ。目標は1人1匹!」

 ミリアのそんな台詞にモリさんがうっという顔をする。

「大丈夫かな」


「ゴブリンより魔獣を狙った方が稼げるんじゃない?」

 稼ぐだけならアンジェの言う通りではある。

 ゴブリンはスライムと同じく素材にならないから討伐しても報奨金だけ。

 他の魔獣や魔物なら報奨金の他に毛や肉等が売れる分、儲かりやすい。

 一般の冒険者もスライムとゴブリンより儲かりやすい別の魔獣や魔物を狙うのが一般的だ。


 だがここでゴブリンを狙う理由がないわけでもない。

 何故かと言うと……

「基本はゴブリンよ。D級になるにはゴブリン3匹の相手を出来る事が目安なんだから。D級にならないと単独で外に出ることは出来ないわ。だから初心者はまずゴブリン相手に何度も実戦を繰り返して対処に慣れる事が必要なのよ」


 ミリアの言う通りだ。

 なお彼女の説明はまだ続く。


「そうは言ってもいきなり3体相手は危険だからね。今日はまず1対1で仕留めることを練習するわ。間引くのは私とハンスでやるから。あとあまり強そうな個体は選ばないから安心して」

 勝手に俺がやることが決められている。

 もっとも特に異存は無い。

 ミリアの言っている事の正しさは俺も理解できる。


「でも俺達まだ武器を買えてないぞ」

「ハンスと私で武器を貸すわ。どうせハンス、剣も持っているんでしょ」

「ああ」

 ミリア、勝手に貸す事にするなと言いたいが仕方ない。

 そうしないと練習にもならないからだ。

 ただ問題がない訳でもない。


「俺は両手剣しか持っていないがいいか」

 俺が持っているのは刀と両手剣だけ。

 刀は慣れない者は使いにくいから両手剣を貸すことになる。

 でも初心者は本当は片手剣が無難だ。

 左手で盾を持って相手の攻撃を防げるから。


「1対1なら問題無いわよ。ならその両手剣はライバーに使って貰うわ。ハンス、ライバーに一式渡して。モリさんには私のを使ってもらうわ」

 はいはい。

 鞘を固定するベルトごとライバーに渡す。


「思ったより重いな」

「重い方が実戦では有利よ。1対1だと特にね。その辺も今日理解してもらうわ」

 そう言いながらミリアは自在袋から鞘入りの長物を取り出す。


「モリさんはこれよ。重さと間合いを含めてモリさんには槍の方があっているわ」

 短めの十文字槍だ。

 穂の柄に近い部分に十文字になるよう鎌がついたものだ。

 つまり振り回しても突いても使えるタイプ。


 十文字槍には初心者用としてもうひとつ利点がある。

 真っ正面から思い切り突いても突き抜けたり深く刺さりすぎない。

 それでいて殺傷力は充分。

 その辺もわかった上でミリアもこれを用意したのだろう。


「アンジェは魔法で攻撃して貰うわ。杖は練習用じゃ不安だからこれを使って。収束率向上の加護がついちゃっているけれど今日のところはお試しだから」

「何か申し訳ないです。同じ分け前なのにこんなに面倒見てもらって」

「顔見知りが死んだりしたら夢見が悪いからね。それだけよ」

 この台詞は単なるツンデレという奴だと、もう全員が知っている。


 実際ミリアは面倒見が無茶苦茶いい。

 入寮してから今日まで毎日こいつらと付き合って討伐だの採取だのしているし。

 しかも俺と違う点はちゃんと必要な時にそれなりの説明もする事だ。

 ツンデレ口調でだけれども。 


「あと今日の戦闘ではモリさんとライバーは基本的に突きだけで戦って貰うわ。振りかぶるのは無しの方向で。

 あとアンジェは火属性魔法を気にせず使って。火事になりそうな時はハンスがなんとかするわ」

「いいんですか」

 仕方ない。


「問題無い。水魔法は得意だ」

 そう言っておく。


 今日の訓練はゴブリンを倒す訓練と言うよりも、ゴブリンという魔物を倒すという経験を積ませる事。

 そう俺は理解した。


 実戦形式なら通常の討伐では火属性魔法は限定的にしか使えない。

 森が延焼する危険があるからだ。

 また剣や槍も突きで刺してしまった場合、次の敵に反応しにくくなる。


 だが1対1なら特に初心者なら斬るより突く方が相手に与えるダメージが大きい。

 魔法も初心者なら火属性が最も威力が高く発動も簡単だ。

 つまりは1対1に限定して対戦させ、倒すという経験をさせる事。

 倒す事が出来るという自信をつけさせるという事。

 それがミリアの今日の狙いなのだろう。

 それは理解できるし方針としても正しいと思う。


「今日はゴブリンが目的だからちょっと遠くなる分、さっさと歩いてね。あと先頭はハンスお願い」

「わかった」

 毎度おなじみの隊列で歩き始める。

 本日向かうのは西門方向だ。

 西は山岳地帯へ続く方向でエデタニアでは一番魔物が出やすい方向。

 本来は初心者よりもう少し上のレベルの方が好ましい。


 だが日中の午後はゴブリンが出にくい時間帯。

 だからこっち側でないとゴブリンは出てこないだろう。

 そう事務室のいつもの女性が言っていたのだ。


 こちらも外壁から200腕(400m)程度が刈り払われて草地になっており、その先は森になっている。

 そして明らかに魔素マナが濃い。


 人が多いと魔素マナもその分生まれ、魔素マナが濃くなる。

 しかし街は魔方陣等で抑止しているから魔物が生じない。

 しかしその分まわりの魔素マナは必然的に濃くなる。

 そういった場所では必然的に魔物の発生も多くなる訳だ。

 そうおれはメディアさんから聞いていた。


 ただ大きな街ならそれなりに冒険者も衛兵も多い。

 だから発生した魔物は毎日狩られて増えることはあまりない。

 しかも街を囲む街壁も頑丈だから魔物に襲われる事は少ない。


 ただし街の外に出れば魔物に出会う危険性があるので農作等にはむかない。

 だから農作や酪農等は魔素マナが薄く魔物が少ない、大きな街から離れた田舎でやるそうだ。


 一方で郊外の森などは人は少ないが狩る人がいない。

 だから風向や地形で魔素マナの吹きだまりが出来ると魔物が狩られないまま増えてしまう。

 更に放っておくと魔物が集まりだんだん強力になっていく。

 魔物は人と同じく自らも魔素マナを発生させる。

 そういった結果、俺が以前いた魔の森のような場所が出来てしまうらしい。


 そんな事を考えながら街道をまずは歩いて行く。

 地形は基本的にゆるい上りで、所々崖や岩が露出した場所がある明るい森だ。

 昼間、それも午後のせいか索敵にかかる魔物がいない。

 やはりある程度森に入っていかないと駄目なようだ。

 初心者のお試し狩りにちょうど良さそうな太い獣道を探す。

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