コント 「一番一番一番一番」
ボケ(以下ボ)は、待ち合わせ場所にツッコミ(以下ツ)のもとに飛び跳ねながら来る。
ボ「一番一番一番一番、二番二番二番二番」
ツ(腕組みして不審そう)「なに、それ」
ボ「足の順番を覚えているところだよ。ソレ、一番一番一番一番、二番二番二番二番」
ツ「だから、なに、それ」
ボ(足を下ろしてお手本を示す)「バレエの足の番だよ、一番、かかとをつける、二番、かかとを離す」
ツ「お前、バレエをしてたっけ?」
ボ「きのうから始めたばっかりや。だから踊りを覚えているところ。見てろよ。一番一番一番一番、二番二番二番二番」
ツ「ふん。一と二、しかないのか」
ボ「いや、四番と五番があるが難しいんや」
ツ「三番はどした」
ボ「三番はない」
ツ「三番はないのか」
ボ「ない」
ツ「ほんまかなあ」
ボ「ほんまや、そのかわり六番ならある」
ツ「ようわからん」
ボ「まあ、そういうなや。結構楽しいよ。これが四番、ほんでこれが五番」
ツ「同じに見えるが」
ボ「それはまだぼくが下手やから。でも、五番だけでも飛び跳ねることができるよ」
ツ「やってみい」
ボ「五番五番五番五番」
ツ「見れば見るほどようわからん。一体それがバレエの何の役に立つねん」
ボ「どんな偉いバレエダンサーでもこれがちゃんとできないと踊れないらしい。基礎の基礎だよ。ソレ、五番五番五番五番、はあはあ、ちょっとしんどなってきた」
ツ「三番がなくて一番二番四番五番って踊れるか」
ボ「いや、まだそこまでしてない」
ツ「ちなみに六番の足ってどんな」
ボ「これだよ」
ツ「なんや、気を付けっ、の足じゃないか」
ボ「そういや、そうだな」
ツ「六番六番六番六番って踊るのか」
ボ「そういうのはないみたいだ」
ツ「じゃ、七番七番七番七番は?」
ボ「存在しないと思う」
ツ「お前が知らないだけじゃね? 実は百番まであるとかでさ」
ボ「うーん」
ツ「アラベスクっちゅうやつは」(みようみまねで、アラベスクのポーズを取る)
ボ「そこまでまだ足があがらんへんねん。ぼく、身体がめっちゃ、堅いねん」
ツ「そうか」
ボ「だからせめて高く飛び跳ねる練習で一番一番一番一番っちゅうのをやっている」
ツ「ま、そのうち、天井まで飛び跳ねられるようになるんやろ。ははは」
ボ「がんばる。ほんでかわいらしい女の子と一緒に踊るんや」
ツ「えっそんなことできるんか」
ボ「上手になればな、パドドゥいうてな、一緒に踊れるんや。女の子が王女様とか妖精とか白鳥になってな」
ツ「じゃ、女の子と踊れるんやったらオレもしようかな」
ボ「先生は、ぼくにこう言うた。千里の道も一歩からってな。だからまじめにこうして」
ツ、ボ(一緒に飛び跳ねる)「一番一番一番一番」
ツ「はあ、これ結構きついな」
ボ(ツの姿勢を正す)「あのな、背中もまっすぐにせなあかんで。ここをこうしてな」
ツ「くすぐったいがな、さわるなや」
ボ「そんなことでは、ぼくといっしょに踊られへんで」
ツ「アホ言うな。お前とはパドドゥせんで」
ボ(なぜかショボーンとする)「とりあえず基礎やで。これで体力と基礎とつける。一番一番一番一番」
ツ「二番二番二番二番」
ボ「お、やる気になったか」
ツ「なんか知らんけど、くせになるな」
ボ「せやろ。これがちゃんとできて、体も柔らかくしたら上手になるて」
ツ(跳びながら)「はあはあ、体を柔らかくって、柔軟体操みたいなのか」
ボ(跳びながら)「はあはあ、柔軟体操は今はストレッチって言うねん。それが一番大事やと先生が言うテたわ」
ツ「バレエってびょーんと足があがったりするな、ストレッチのたまものやろ。でも、ぼくらがそこまでいくのはしんどいな」
ボ「はあはあ、うん、しんどいけど、やるんや。さっきも言うたやろ。千里の道も一歩から、てな。でもちょっと休もか」
ツ「はあはあ、うん休も」
ボ「それでな、ボクな、バレエの発表会にはまだ出られへんけどな」
ツ「そら、昨日はじめたとこだと、当たり前や」
ボ「毎回トイレとか行くたびにな、一番一番一番一番ってやっているうちにな」
ツ「うんうん」
ボ「だんだんとな」
ツ「うんうん」
ボ「足が広がれるようになってな」
ボ、一番ではなく、二番の脚をどんどん広げていく。ツ思わず拍手する。
ツ「おっ、おっ、すごいやんけ」
ボ(誇らしげ)「な、すごいやろ」
ツ(我に返ったように)「それもバレエか」
ボ(いきなり跳ぶのをやめて)「いや、違うと思う」
ツ(憮然とする)「お前の求めているのは一体なんや」
ボ「わからんけど、面白いんや」
ツ「もっかい、一番一番一番一番からまじめにやれ」
ボ「せやな」
ツとボ、笑顔で一緒に一番一番一番一番と飛びながら頭を下げ、次に観客に背を向けずに、五番五番五番五番と足を組み替えながら後ろ跳びに舞台を去る。
ツとボ(観客に手を振って)「ほな、またなぁ~」
おしまい