傷つけ合い、寄り添い合う
初めまして、黒影 時です。
この本は、神秘なものを書きたいという僕の想像から織りなしました。
この本を手に取ってくれた方々、本当にありがとうございます。
「ちょっとずつ、お前を嫌いになるから」
そう言ったあいつの顔は、泣く寸前だった。
薄暗い用具保管庫の中で、あいつの声だけが滲んでいた。
私は、何も思わなかった。
これが当然、とばかりに黙っていた。
それが、なおもあいつのプライドを傷つけたかは定かではないが、それ以来あいつは私を見つけても見て見ぬふりをした。
あいつと私は、別々に個々の人生を成長していった。
私はあの時以来、あいつを見ることもあいつの噂を聞くことだって無かった。
卒業式も、あいつの名前は呼ばれなかった。
私は、最後だからとあいつとの思い出を周った。
放課後、いつもあいつと1on1をした体育館。
バスケットボールの音が、いつの間にか2つに分かれたり戻ったり。
自分の夢を語っていた、存在しないはずの空き教室。
存在しないから先公に怒られることも無く、授業をさぼることが出来た。
初めて、あいつの暖かさを知った美術室。
あいつの青空みたいな瞳に恋をした。
そして、
最後に話した用具保管庫。
あいつは、もうここにはいない。
そして、
私も
ここからいなくなる。