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紅葉狩り

作者: 山目 広介

 紅葉の葉が地面を絨毯のように覆い、赤く染めていた。

 山の空は深く、濃く群青に染まっている。

 周りを見れば、深い常緑樹が彩っている。

 その中にある銀杏(イチョウ)の黄色がこれまた綺麗に見えるのだ。

 赤・青・緑に黄色。(いろど)りが素晴らしく、いい画が撮れるに違いない。


 ◇ ◆ ◇


 バッシィーン


 パッチィーン


 乾いた音が鳴り響いていた。

 どうしてこんなことになったのか。それは更に時を巻き戻す必要があった。


 『紅葉狩り』と書かれたものを胸の前に垂らしていた。

 上半身は裸だった。

 それは罰ゲーム。

 その名の通り『紅葉』を集めるゲーム。

 そのため最初に行ったのは駅前でのナンパだった。

 いきなり上手くいき、頬っぺたに綺麗な紅葉を頂く。

 次も上手く事が運ぶ。右の後に左に来たのだ。

 左右の頬に紅葉を浮かべる男。

 滑稽だ。

 だが次が良くなかった。

 小学生の集団に捕まったのだ。

 趣旨を説明すると面白可笑しく引き受けて、背中に小さい紅葉がいくつも舞うことになった。

 罰ゲームは十人で良かったんだが、小学生の集団に囲まれていると興味を引かれた大人も混ざり、列まで作って紅葉が集まっていた。

 小学生が飽きると大人たちも散らばっていった。

 だが、まだこの罰ゲームは終わらない。

 そもそもこれは紅葉狩りイベントの告知用で、山で紅葉狩りの動画を取るまでが一括りだ。


 そして冒頭へと繋がるのだった。


「来ないと、この紅葉吹雪が許さんぞ!」


と、意味不明な叫びを上げて告知用の動画を撮影し終えた。

 電源を切ろうとしたところ、待ったの声が掛かる。

 これからが本番とのこと。それは……


「モミジ! 俺と付き合ってくれっ!」


 いきなり告白されて頭が白くなる。

 頭へ行くはずだった血液は逆流して顔へと送られたのか、その肌を赤く染め上げる。

 その名の通り、赤く染まったモミジの返答の前に話が続く。


「これは皆に協力してもらって行っている」


 胸元に下げていた紙は毛筆で達筆に書かれていた。


「紅葉狩りとはお前、モミジを落とすという目標だ」


 背中を晒し、そこにはもう全体が赤く染まって紅葉の跡は残っていなかった。


「このまま腐れ縁は御免だ! 嫌だったらこのまま紅葉を増やしてくれっ!」


 その顔は赤く染まった頬によって色の変化がよく分かるものだった。

 振られることへの恐怖からか、目を瞑ったその顔は額からその色が青褪めていく。


「ミドリ。紅葉には山の緑が映えると思わないか?」


 ミドリとは告白してきた男の名前だった。

 いつの間にかモミジに回り込まれていて驚いたのか体が跳ねるミドリ。

 恐る恐る目を開くミドリの前に立ったモミジは赤く染まった頬に両手を添える。

 目線が合う。同じくらいの身長だった。

 身長を気にして、プライドが邪魔をして、今までアプローチをして来なかったミドリ。

 モミジの返答は撮影された映像にはミドリの背中で隠れて見えなかった。

 しかし、そのミドリの背中から首筋、耳までが更なる紅葉(こうよう)に染まったことで予想されるのだった。



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