表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
葉子と夏  作者: 結姫普慈子
第一章 開かれたゲート
8/23

8. 占い師の若い女性

「例のゲートってあれだろ?」と僕。

「例のゲートってあれですよね??」と宮子

「例のゲートは例のゲートよ」と葉子。

 辺りの客席が僕らを中心に周り始める。くるくるくるくる。「くるくるくるくる」

 ハッとして見上げると喫茶店の中にある鳩時計が午後12時をちょうど指し示し、その機巧でこの国では平和を表す鳩が時計の枠外にぴょこんと木組みのバネで出てきて鳴いていた。

 その鳴き声がなぜか「くるくるくるくる」だった。

「なんだ?この鳴き声は?」と僕が言うと、

「たしかに変わった鳴き声よね」と宮子が言う。そして偶然通りかかった若い女性の店員が言う、

「この時計実は故障していて元の鳴き声は、それはそれは澄んだ『ぽっぽー』っていう鳩の鳴き声だったですけど、丁度、今年の7月13日の金曜日の日から『くるくるくるくる』って鳴くようになちゃって・・・。マスターも不思議がってるんだけど、もしかしたらあなた達が話してるゲートが開いたせいかもって私達は話してるの」

「例のゲートのせいですか・・・」

「そう、ゲート」と若い女性の店員は言って去っていく。

 相も変わらず時計の鳩は「くるくるくるくる」と鳴き、それが終わるとまた時計の中へと入っていった。

「私達もゲートの中に入ってみたくない?」

「私は怖いです・・・」と宮子が言ってうつむく、宮子のオレンジジュースのグラスはもうカラであったがストローで残った氷をするするとすすった。

「雅はどうなの?」と葉子が聞いてくる。

「僕は・・・」僕はどうなのだろうか、願い事もゲートのことも思い浮かばない。

「ねぇ、お兄ちゃんこの時計7月13日の金曜日から『くるくるくるくる』って鳴くようになったって言ってたよね。13日の金曜日って怖いよ」と宮子が若干涙目になって言う。

「宮子ちゃん、私が保護者になってあげるから行ってみない?きもだめし、だと思ってさ」と葉子が母が子供をなだめるように言うと宮子は顔を上げてコクリと頷く。

「しゃあねぇなあ、行ってみるか」


 こうして僕らは例のゲートに向かうことになった。

 喫茶店から出る時、カウンターで先程の若い女性の店員から名刺をもらった。そこには笹宮葛葉ささみやくずはと書かれていて、職業のところに淡いピンク色で占い師と書かれていた。

「よろしくね、雅くん。葛葉って呼んでね。あなた達には何か感じるのよ」と言って僕の耳元まで来てから、「特にあのゴスロリの女の子には」と小声で言うとまた店の仕事に戻っていった。

 僕はその名刺を財布に入れると喫茶店から外に出た。外では女子二人が待っていた。僕の恋人と妹。

 なんちゅー組み合わせなんだ・・・。

 外はお昼の頂点で雲がわずかに散らばっている青い空に僕はくらくらと目眩がするようであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ