5. 人徳
「なぁんだぁ~?????」僕は自分の髪の毛を両手でくしゃくしゃかき混ぜながらそう言うと宮子は僕のいるベッドの上まで膝で上がってきて、
「お兄ちゃんと一緒に行く!絶対一緒がいいって!私も行く!」と言った。
「絶対の絶対の絶対?」僕は呆れながらそう問う。
「うん」宮子はこくりと頷く。
「わかった、葉子に電話して妹も一緒に行っていいかって聞いとくよ。だけどな宮子」
「うんうん」
「葉子がダメだって行ったら一緒に行けないからな、OK?」
「わかったよ、お兄ちゃん。お兄ちゃんの彼女の葉子さんがOKって言えばいいんだね」
「じゃあ、今から電話するからベッドから出て行け」僕がそう言うと宮子はベッドから立ち上がって僕の勉強机の椅子に腰を下ろした。
枕元に置いてあるスマートフォンを手に取り葉子に電話をかける。
「ああ、葉子か?おはよう、早くにすまんな」
「おはよう雅。今起きたところでしょ?声が寝ぼけまくってるわよ」
「そうなんだけど、今日のデートの話なんだ」
「いけなくなったとか?」
「行けるんだけど、もう一人足していいか?僕の妹なんだけど」
「お兄ちゃん替わって」と言って宮子が僕のスマートフォンを奪う。「おい!」
「波止雅の妹の宮子です」
「妹さんの宮子ちゃんね。お兄ちゃんのこと好きなの?」
「・・・好きっちゃ好きだけど・・・」なんだか宮子は顔が赤くなっている。「大好きなんで私もお兄ちゃんの彼女さんが見たいんです!今日一緒にデートに連れて行って下さい!」
「いいわよ」
「やったー!いいって!はいお兄ちゃん電話返すね」
「ああ、葉子ごめんな。絶対行くって聞かなくってさ」と電話を受け取った僕が葉子にそう言う。
「いいのよ。まだホヤホヤのカップルだから誰かに見てもらってたほうが何かと楽かもしれないじゃない?会話なんかも三人のほうが切れないだろうし」と葉子は薄くクスクスと笑いながら言う。「じゃあまたデートの待ち合わせ場所でね。電話切るわ」そう言って葉子は電話を切った。
「はぁー、葉子が来てもいいって言ってるからお前も来ていいみたいだな」
「ふふっ。私の人徳よ」と宮子は言って、「可愛いお洋服に着替えてくる!」
「今もパジャマじゃないじゃないか」
「もっととっておきのがあるのよ!」どうやら女の子には僕の知らない事実が隠されているようであった。