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葉子と夏  作者: 結姫普慈子
第一章 開かれたゲート
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3. 不良少年少女

 下駄箱で靴を履き替え昇降口の外に出てしまうとまだ外はうだるような暑さだった。「いやね、この暑さ」葉子はそう言いながらやや大ぶりのショルダーバッグから折りたたみの日傘を取り出した。

 それをカチャカチャと展開していき太陽に向かって差してしまうと葉子は歩き始めた。

 僕はその隣を歩く。学校を下る階段を降りていると校庭では野球部の部員達が練習をしていた。

「中に入る?」と言って葉子は日傘の中に僕を入れる。ちょっと小さな日傘だったが相合い傘の格好になる。外は段々とオレンジ色になり始めていた。

「なあ、葉子。園田真里って女の子は友達なの?」

「そうだけど、その子と話したの?」

「話したんだけど、なんか不思議なことを言われたんだ」

「あら、なんて言われたのかしら」

「それは内緒だな」僕がそう言うと葉子は僕の手の指の間に葉子の指先を入れてきてキュッとワインのコルクを締めるように握ってきた。

「そう、内緒ね。私の手はヌルヌルしてない?」

「いいや、暖かいだけだよ」僕は葉子の手に安心感を覚える。葉子と僕の傘の中は個室のように思えた。そこでヒソヒソと朝の小鳥たちのように会話する、みんなが寝ている間。見上げても傘のせいで陽は見えない。

 学校の門を出てしまうと僕たちはお互い無言になった。真夏の道路を乗用車が走る。その時だけくさい煙の臭いがして同時に風が吹いてくる。

「ねぇ、真夜中まで散歩しようか」不意に葉子は隣でそう言う。

「僕らは不良少年少女なのか?」

「いいでしょ?」

 葉子の顔を歩きながら見ると外の景色はオレンジ色になっていて同時に彼女の放つセピア色のオーラと混ざり合いそれらが一体となって世界には存在していた。なんだか僕にはそれらが輝いて見えた。


 そうして僕は仕方なく葉子と真夜中まで散歩することになった。


7:00

「そろそろご飯食べようか葉子、なに食べたい?」

「そうね、蕎麦屋さんにしない?」


8:00

「歩き疲れたよ。休憩しよう」

「ラヴホテルでも行く?」

「いいや、喫茶店にでも行こう」


9:00

「そろそろ家に帰らないか?」

「真夜中までよ」


10:00

「もう誰も歩いてないよ」

「だって私達だけの場所だもの」


11:00

「喉が乾いたコンビニでジュースを買おう」

「私もコーラが飲みたいわ」


12:00

「はぁ、僕も不良生徒だ・・・」

「たしか高校生は11時からは外出しちゃいけないんじゃなかったけ、ありがとね雅付き合ってくれて」

「じゃあ、帰るか」

「そうね」



 そして僕は葉子の家に念のために送っていく。葉子の家に着くと葉子は今日はありがとうと言って僕の右の耳たぶを齧ってきた。その時葉子の匂いがしてきて僕は意識が朦朧とした。

 葉子の匂いはラベンダーの匂いだった。それから葉子は家の中に入っていった。

 僕も自分の家に帰ることにする。

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